2国間のパーティーという名の戦争
《天海聖暦771年 春月8日 異世界開店日より488日後 (転生後968日)》
ラグールのラーメン店はどこも連日の大盛況だ。海外からの貴賓客もトラキール帝国の戦艦の上でラーメンを食べたことなどすっかり忘れて、食べ歩きを楽しんでいた。
街中の話題は、トラキール帝国の世界一美味しいラーメン宣言は失敗に終わり、グルンジ王国の新しいラーメン発表の場にすり替わったという話で持ちきりだ。
〘グルンジ王城 大貴賓室〙
夕刻、トラキール帝国とグルンジ王国との2国間のパーティーが始まる。いやパーティーというより対戦が始まるような雰囲気だとグルンジ王国側は圧力を感じている。どんな難癖を付けられるのか、ラーメン戦争の〆はこのパーティーになると覚悟した。
参加者は大貴賓室の入り口でウェルカムドリンクを渡されて室内に入り案内を待った。大貴賓室の中央に配置された20ⅿはありそうな長いテーブの上には、グルンジ王国の一流シェフが作った豪華な料理と綺麗で華やかな花飾りが並べてある。ゴウは少し離れた位置から席に案内されている賓客達を見ていた。
テーブル中央席、最初に王宮給仕に案内されたのはもちろんトラキール帝国ベルゴス・ダークリス皇帝だ。シルク製の黒い布に金の装飾が眩しい豪華な服に青髪が似合っている。鷹のような鋭い目で見つめられた。全て見通しているぞと言わんばかりだ。
皇帝に向かって左隣の席にはマリオラ・ダークリス皇妃が案内された。美しい顔と輝くような金髪、真っ白なシルク製のドレスで登場した皇妃にゴウは天使のようだと見とれてしまった。目が合った。吸い込まれそうだ。気持ちを持っていかれそうな危険を察してラーメンを作っている自分の姿を思い浮かべてやり過ごした。
同じく皇妃を見つめていたケイは別の反応を示した。今日のマリオラは恐ろしい。美しい身体から氷の炎が揺らめいて出ているように見える。柔らかい身のこなしだが隙がまったくない。絶対に戦ってはいけない相手だ。剣豪のケイが勝てないと思ったのは初めてだ。以前、マリオラは雪族の姫ではないかと噂になったことがある。それは本当だろうとケイは確信した。
次は、皇女のイサドラ・ダークリスが皇帝の右隣の席に案内された。真っ白いシルクの生地に髪と同じ金色の花刺繍が美しいドレスを着たイサドラをゴウは可愛いと思った。その皇女もゴウを見つめてきた。
どうして3人とも俺を睨むのかとゴウが思ったらイサドラと完全に目が合ってしまった。その刹那、頭の中がイサドラに支配されそうになった。慌てて目を瞑りラーメンのことを考えて誘惑の危険を回避した。
その皇女を一番強い眼差しで見つめていたのはサクラだ。戦闘前のライバルを見つめているような眼差しだ。ゴウに妖のような誘惑の眼光を送っているイサドラに腹が立った。そしてイサドラは剣術も他の武術もかなりの使い手だ。それは艦上で姿を見た時に直ぐに分かった。甘えたそぶりで皇帝の隣にいても隙なく周りを見張っていた。もし戦っても勝てるかどうか分からない強い相手だろう。
それはサクラが自分と同じ年ごろの相手に初めて抱いた不気味な感覚だった。サクラの強い視線に気が付いたイサドラも睨み返した。恋敵が火花を散らしているようにも見える。
皇女の席から右に少し離れた位置には、雪族でスパイ組織シャドー・スパイダー・コヴェンの第一席最高幹部のエース・スパイダーが皇帝の親戚のエース・ダークリスとして紹介され席に着いた。その隣の席には第二席最高幹部のビーラ・シャドウがエースの妻ビーラ・ダークリスとして席に着いた。2人とも真っ黒な衣装で統一している。エースの髪は真っ黒、ビーラの髪は銀色と黒が混ざっている。
2人は皇帝の親戚と紹介されたが皇妃の方の親戚ではないかとゴウは感じた。ベンは直感でこの無表情の2人はSSCの元締めで、SSCは雪族が動かしていたのではないかと思った。
皇妃の席から左に少し離れた位置には、トラキール帝国将軍ドラクダール・バルカルが皇帝の親戚として席に着いた。軍服の上に黒地に銀の刺繍があるジャケットを羽織っている。銀髪と相性が良い組み合わせだ。ゴウには少し元気がなさそうに見えた。
次は、グルンジ王国側が席に着く。
ベルゴス皇帝の正面の席には、グルンジ国家主席ベルナード・ファン・グルム国王が席に着いた。真っ白い服に銀の糸で刺繍がしてある。これも銀髪に合わせたものだ。今日の国王はとても落ち着いて見えた。
マリオラ皇妃の正面には、シャルル・グルム王妃、その隣には娘のキャサリン・グルム王女が席に着いた。2人のドレスは白いシルク生地に金の刺繍、やはり金髪に合わせたものだ。髪色と衣装の色を合わせるのが流行しているらしい。
2人からは優しく温かいオーラが溢れ出していてマリオラの冷気とは好対照で面白いと不謹慎にも思ってしまった。
この王妃と王女にゴウは数日前に会ったのが最初だ。シャルル王妃の実家があるメルガ王国の春祭りで、驚いた数頭の馬の暴走事故に巻き込まれて両親と兄嫁が大怪我を負った。兄から看病とリハビリ、屋敷の給仕達の管理を兄嫁の代わりにして欲しいと頼まれた。国王は娘のキャサリンを王族に嫁ぐ為の修行名目で王妃と同行させていた。2人とも2年ぶりの帰国だ。
イサドラの正面には、銀髪の第一王子アーサー・グルムと第二王子アンリ・グルム、金銀混合髪の第三王子カール・グルムが席に着いた。3人の服装は白い生地で襟の部分のみがシルバーグレイのシンプルで上品なものだ。王子達はイサドラの美しさと可愛さに目を奪われているが、イサドラは王子達には全く興味が無いように感じる。
最後は、ゴウを中心としたラーメン戦争の実行隊が紹介されて席に着く番だ。ゴウは皇族や王族と一緒のテーブルに着くことを固辞したが、ベルゴス皇帝の強い希望でこうなった。紹介され席に案内されている仲間達を見ていると、長いようで短かったこの2年間の数々の出来事を思い出し涙が出そうになったが堪えた。
キャサリン王女から少し離れた位置に、銀髪のカルロ・マルタン公爵が美食評論家で『ラーメン戦争時代のラーメン批評500』の著者として紹介され席に着いた。
その隣には青髪のエンリケ・ロベールがレストラン・ガイド本『ジャポ』編集長で『グルンジ・ラーメン・ガイド・マップ』の著者として紹介されて席に着いた。
どちらも服装には無頓着なようだ。しかしかなり緊張しているのが分かる。特にカルロが緊張で氷の微笑を繰り出さないか心配だ。
その隣の席には茶髪のベン・マイヤーとその妻の赤髪のケイ・マイヤーが紹介されて席に着いた。2人は薄紫に茶と赤の模様が入ったお揃いの衣装だ。体格の良い夫婦が着ると綺麗というよりは迫力があり豪華だ。ベンはマイヤー公爵家の三男として生まれたが騎士道を極めたいと家を出た。剣豪になりグルンジ王国近衛兵団長まで昇り詰め、同じく貴族の家から飛び出し近衛兵副団長となった剣豪のケイと結婚した。
最初にお世話になったのがこの豪快で気の良い仲良し夫婦だったのは幸運だった。二人には感謝しかない。
ケイの隣には、金髪のマリアンヌ・アントーニがアントーニ公爵家の令嬢として紹介されて席に着いた。オレンジ色の生地に金の刺繍が綺麗なドレスを纏った姿に見とれてしまった。マリーの正式な名前はマリアンヌだと初めて知らされたが、美しい姿の方に夢中になってしまった。
またその隣には、黒髪のサクラ・バートリッチ・アントーニが、アントーニ公爵家の令嬢として紹介され席に着いた。桜色の生地に細い黒と金の模様の中に、桜の花が刺繍され胸元が大きく開いたドレスには驚いた。日頃のメイドスタイルのサクラからは想像出来なくて別の女性ではないか思わせる変身ぶりだ。ゴウの方を向いて「エヘッ」と舌を少し出した。ああ、やっぱりサクラだ…
王子の席からかなり離れた位置に、ゴウの腕利きスタッフとして茶髪のルーシーとカミラが席に着いた。彼女達の衣装は第三王子のカールが腕利きの職人に依頼して急ぎ仕立て上げさせてプレゼントしたものだ。白地に薄茶色とオレンジの模様が入ったドレスと、黒地に同じ模様が入ったドレスだ。大人の雰囲気が漂っている。
ゴウはこの2人をアシスタント・スタッフとしてお願いしたが、アシスタントどころではない。天才だと思った。完璧な調理技術と見聞きしたことは忘れない記憶力。指示されたことは完璧にこなし、気になった点は指摘してくれる。店主や調理人への指導の仕方も上手だ。短期間で数多くのラーメン店を応援出来たのは彼女達の存在なしでは考えられなかった。
ここで、第三王子のカールがラーメン戦争の実行隊の王族側のまとめ役としてもう一度紹介された。カールは本当に勉強熱心だった。ほとんどのラーメン試作会や講習会に参加してメモを取っていた。最近のカールは誰からの評判も良い。国王からゴウのお陰で一皮むけたとお礼を言われたこともあった。
最後に、そのカールの隣に、天才ラーメン王ゴウ・マイヤーとして紹介されて席に着いた。この日のゴウの衣装は白衣だった。それはこの世界に転生した時の唯一の持ち物だった木製アタッシュケースの一番下に入っていたものだった。
転生前、日本のゴウ(竹岡一進)の店に富多康明師匠が忘れた白衣で、クリーニングに出して戻って来たのでお返ししようとケースに入れていたものだ。長さは膝下まである病院のドクターが着ているタイプと似ている。胸元には、Noodle Producer TOMITAYASUAKIと刺繍してある。師匠はこの白衣を戦闘服と言って着ると気合が入ると笑っていた。国王に許可を取って白衣を羽織ってパーティーに参加した。
ベルナード国王より歓迎の挨拶、ベルゴス皇帝より御礼の挨拶が済み、対決の時間だ。
「ゴウを中心とした我が国のラーメン戦争の実行隊メンバーと全てのラーメン店と店主や料理人、関連する仕事と人材、食材を守れるように《新文化交流ビエンナーレ》の事務局にリストの申請を済ませた」
グルンジ王国の食文化を守る宣言を採択させた事務局に、このリストを送ったことは、もう手を出すなというベルナード国王の先制パンチだ。
「貴国の食文化を守る宣言に我が帝国も批准しよう」
「なんと、それはありがたい」
「その上で言う。ゴウとその仲間を我が帝国に譲渡しろ」
「そんな事はできない! 何を言うのだ」
「貴国は過去に我が帝国にひどい仕打ちをしたのだ。その代償として認めろ」
「何のことか分からぬ? 言いがかりはよせ」
「言いがかりではない。歴史が知っている」
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歴史好きのベルゴス皇帝は、グルンジ王国の歴史書や救世主の自叙伝など集めて細かく研究した。そこである発見をしたのだ。
昔のトラキール帝国では、4人の大魔導士が皇帝に次ぐ地位と名誉を誇っていた。それは天の恵みをもたらしたからだ。ある時、漁師達は不漁が長く続き生活に困窮し魔導士に救済願いを出した。そこで4人の魔導士が海の中に魔道装置を設置した。
貴重な魔導書の手順通り起動させると、その魔導書の中にぼんやりと風景が映し出された。覗くと海の中から光の柱が出て海底から陸まで大きな揺れの地震が起き、海が荒れて街が破壊されているように見えた。しばらくするとトラキール帝国の漁港周辺の海に大量の魚が出現した。4人は帝国民を救ったとして大魔導士としての地位を得た。
事件が起きたのは今から90年前だ。十数年ぶりに大不漁が続き再び4人の大魔導士が魔道装置を海中に設置して発動させた。魔道書に映る風景を覗くと、何者かの仕業によって陸からも光の柱が上がり海の柱と天空で衝突した。その瞬間、トラキール帝国の上空で爆発音がした。それは2つの大きな港街が消滅した瞬間であった。
瓦礫の山に埋もれても4人の大魔導士は魔道防御室の中にいて無事だった。生き残ったのはこの4人のみの凄惨な事故だった。怒った皇帝は4人を全く陽の当たらない地下洞窟に投獄した。魔導書は焼き払った。投獄された大魔導士達の手記が沢山残っている。
◦あの事件は我々以外の何物かよって意図的に起こされたものだ
◦無知な者があの貴重な魔導書を手に入れて間違った使い方をした
◦魔道装置を陸に設置するなど危険すぎる行為だ …
グルンジ王国で大魔導士ガブリエル・モーガンが禁忌の実験を行ったのは、同じ90年前の同日同時刻だった。間違いなくグルンジ王国の行いでトラキール帝国の港街が破壊されたのだ。一方、グルンジ王国には異世界から救世主が現れて潰れる寸前の王国を救ったのだ。
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「貴国の行いで何万人もの帝国民が犠牲になった。一方、貴国は大きく発展した。罪滅ぼしにゴウを譲るくらい簡単だろう!」
魔道装置の話にゴウは驚いた。転生前に東日本の太平洋沿岸で度々発生した大地震はトラキール帝国の大魔導士が人工的に発生させたものだったとは。その地震や津波で多くの市民が被害に遭い苦しめられたことを思い無性に腹が立った。
「それでもゴウは譲れぬ」
突然、マリオラ皇妃が立ち上がった。ゆっくりとみんなの顔を見つめた。場の雰囲気が一変した。天井から雪が舞い降りて光っているようだ。
「それでは私から申し上げますわ。発言してもよろしいですわね、王様?」
魔法にかかったようになったベルナード国王の様子が変だ。
「ど、どうぞ」
「ゴウ殿を譲れとは失礼でしたわ。ゴウ殿を娘イサドラのお婿様として、婚姻後はトラキール帝国の皇子としてお迎えしたいわ! 王様、良い話でしょう」
これには、会場の誰もが驚いた。ゴウはもう直ぐ婚約者の山本渚に会えるところまで来たのだ。渚が時々私を陰から眺めていたのは知っていた。私と会えないのは、私がラーメン戦争に勝つまで会わないと国王に約束させられているのだと勝手に推測していた。「私には、婚約者がいます」と言おうとしても声が出ない。国王を見ると様子がおかしい。大変だ、このままではイサドラと結婚させられる。
今にも承諾しそうな国王にシャルル王妃が近づき「あなた、しっかりしなさい」と耳元に囁き、太ももを強くつねった。「痛い!」と叫び、ベルナード国王は立ち上がり正気に戻った。この「痛い!」の叫びでみんなが正気に戻った。
「素晴らしい申し出じゃが、既にゴウには婚約者がいる」
マリーとサクラを指した。
「第一婚約者はマリアンヌ・アントーニ、第二婚約者はサクラ・バートリッチ・アントーニじゃ、近々に婚姻の時期を取り決めるところであったのじゃ」
またまたゴウは焦った。何故、婚約者が渚ではないのか? 転生者の渚はまだ隠しておきたいのか? それに、出まかせとはいえ、婚約者が何故2人なのか?
国王は腹をくくって言ったのだ。相手にここまでしてゴウを欲しいと言われると、逆に絶対にゴウを手放してはいけなと思ってしまう。どの転生者も救世主としてこの国を救ってくれた。転生者を手放したら罰が当たる。
咄嗟に婚約者と言った2人とはゴウと仲が良くどちらかと結婚しそうな雰囲気だったからだ。それと婚約者が2人いると言えば、ゴウはかなりの女たらしと思われ、イサドラ嬢が嫌がると期待したからだ。しかし…
「ゴウ殿は豪傑なのですね、良いですわ。娘が正妻なら、婚約者のお2人が第二夫人、第三夫人としてトラキール帝国に来られても歓迎しますわ。イサドラも異存ないわね」
「もちろん、異存ありませんわ」
この世界では、複数の妻や側室を持つことは品位に欠けるとして正式に公表されることはない。それを無視して、俺を無視して、交渉している。ゴウは溜め息をついた。
「待ってくれ、それは無理じゃ」
マリオラ皇妃のペースに嵌ってはいけない。国王は反撃に出た。
「ゴウとは天に誓った絶対に破れぬ誓約がある。個人的なことには一切口を出さぬと」
静かにイサドラが立ち上がって国王の眼を見つめた。
「王様、大変失礼いたします。ここで私からお話してもよろしいでしょうか?」
「良いぞ」
「ありがとうございます。個人的なこと…それならゴウさまと私の2人だけで少しお話しをさせていただけますか? 王様!」
国王はイサドラの眼で調略されたようだ。
「分かった、個人的なことはゴウに決めさせる」
◦◦◦◦◦◦
皆が呆気にとられるなか、国王からの指示で談話室に2人は案内されて来た。光沢のある赤いベルベット生地のソファに座ったゴウは、正面に座るイサドラの眼を見ないように視線を落としている。居心地が悪い。
「視線をお上げください。ゴウさまとお話しをしたくて王様にインチキをしました。ゴウさまにはしませんわ」
「はい」
恐る恐るゆっくり視線を上げてイサドラの顔を初めてまじまじと見た。美人で可愛くて透き通るような肌だ。おまけにスタイル抜群。視線を下げて自分がずっと見つめていたのは胸のあたりだったと気が付いて恥ずかしくなった。
「ここでの話は2人だけの秘密にしましょう。決して口外しないと天に誓いますわ」
「私も天に誓います」
「それでは本音で話しましょう!」
「ラーメンの為に田舎者の私と不本意な婚姻をするなんてやめませんか」
「婚姻の話は、私からお願いしたのよ」
長くなるが聞いて欲しいとイサドラが話し出した。
私の母は雪族の姫で、世界一凄い人だと思っている。私には母にはない特殊な能力がある。それは見つめた相手が何を考えているか薄っすらと頭に浮かぶ能力だ。ゴウが私を雪族だと考えていたのが分かったから話した。
父は母との結婚と同時に若くしてトラキール帝国の皇帝の座についた。そして今の帝国は、世界の3大国以上の武力と金力を持ち、従える属国や協力国が増え続け、世界の勢力図を塗り替えている。これまで多くの国とその民に迷惑をかけてきた。帝国は世界中から嫌われ恐れられる存在になってしまった。
最近の父はラーメンに出会うまではずっと退屈していた。一度も負けたことがない両親が完敗したのは新鮮だった。勝ったゴウと結婚するのも親孝行と思った。自分の結婚をきっかけにして悪行は止めて、これからの帝国の道筋を平和なものに代えてもらいたいと思った。それには母も賛成してくれた。
そして、一番の理由はこれ。
「ゴウさまは、異世界からの転生者ですね」
結婚したら異世界の話を毎日聞くことが出来る。考えただけでワクワクする。ゴウの住んでいた世界はどんなものか全く想像もつかない。それがイイ! 母とはゴウは転生者だろうと意見が一致していた。結婚したいと話したら、母が父を誘惑の眼光で落としたようにやりなさいと言われた。母ほどの眼光力はなくあっさりゴウにかわされ失敗した。
「本当の婚約者はナギサ様という方なのね」
「降参です! イサドラ様には敵いません、全て見通されていたのですね」
「ナギサ様に再会出来るといいですわね」
「それをご存じなら婚姻の話は白紙でお願いします」
「いえ、ナギサ様を含め王様から紹介があった2人の婚約者を含めた3人と一緒にトラキール帝国にお越しください。私がゴウ様の正妻になれるのなら、夫人が何人いても平気ですわ」
「愛のない結婚は止めませんか。それに婚約者にされた2人にも迷惑です」
「先ほど、お2人はゴウ様に付いて行く覚悟をしていましたわよ」
「ええー!」
「それに失礼ですわ、私は艦上でゴウさまに一目惚れでした。愛はこれから育みます」
「それでも結婚できません。申し訳ありません」
ソファから立ち上がり深々と頭を下げたゴウを見て、イサドラは結果を予想していたような笑顔を見せた。
「もう分かりましたわ… それではこれからのお話とお願いがあります」
◦◦◦◦◦◦
ゴウとイサドラが部屋から出て行った大貴賓室では、ゴウの仲間がベルゴス皇帝の質問攻めに遭っていた。今は本の著者達が質問を受けている。
「本を面白くする為に、店の序列を付けたり取り上げ方の差別をしなかったのは何故だ?」
皇帝はグルメに目覚めてから世界中のレストラン・ガイド本を読み漁った。売れている本はレストランの格付けや、ランキングを付けたものが多かった。上位の店は大きく取り上げられ、読者も上位の店に食べに行きたくなる紙面づくりになっていた。
「序列を付けない、それはゴウ殿からの指示でしたが…」
答えたのは、ラーメン批評500の著者カルロ公爵だ。初めはラーメン戦争に勝つには自分が食べて美味しいと思った店を大きく取り上げ、その店とトラキール帝国のラーメンと比較させるのが良いと考えていた。けれど、ゴウの協力で出来あがったラーメンを食べ続けたら考えが大きく変わった。
どちらが美味しいかの比較基準があいまいになった。それぞれのラーメンにそれぞれ違った良さがある。違った良さを比較して優劣を付けることに疑問を持ってしまった。そして今回は、店主達それぞれの熱い思いを知ってしまった。これだけ深堀りできたのは初めての経験だ。この本は自分の最高傑作だ。今なら分かる、ゴウにとってこのラーメン戦争とは何なのかと…
「世界一美味しいラーメンという考え方を否定する為です!」
まずい、喋り過ぎた。特に最後の一言は余計だった。カルロは皇帝に対してかなり無礼だったと後悔したがもう手遅れだ。
「ほー 言ってくれたな」
「すみません! 申し訳ありません!」
「謝るな! 本音が聞けた。その方が良かった」
今度は第三王子のカールに質問が飛んだ。
「そなたがゴウから国政を学んで立派になられたという噂があるが本当か?」
「学んだのは本当ですが、ゴウから国政について直接学んだ訳ではありません」
仕事中に発するゴウの考え方や姿勢がカールにとって新しい気づきとなっていた。ゴウの仕事現場に通いつめ何気ない一言も聞き逃すまいとメモを取り続けた。
「よく分からん、具体的に話してくれ」
しばらく考えてカールは話し出した。
「ラーメンとギョーザの話をします」
この国のギョーザは転生者が広めたものだ。シマモト・ヨシオが作ったのは野菜主体の具材が入ったあっさり味で通称シマモトギョーザと呼ばれている。マユミ・キョウカが作ったのは豚肉がたっぷり入った濃厚でコクと旨味が強く通称マユミギョーザと呼ばれている。
ラグールの裏路地の一角にギョーザ街がある。ラーメンとギョーザに焼き飯やライスをセットにしたメニューを主力とした店が並んでいる。ゴウがこの中の一軒の店を貸し切りにしてこの地区の新しいラーメンの試作会をした。試作会が終わり満足した店主達が店を出て行ったが、1人の店主が深刻な顔で相談があると店に残った。
その店主の焼きギョーザはマユミギョーザだ。大量の豚挽肉を詰めた最高品質のギョーザだと自慢している。しかし、この地区のどのギョーザと比較しても美味しさで負けないのに売り上げが悪いという。
他店では、昼はラーメンとギョーザに半チャーハンや半ライスのセットが飛ぶように売れ、夜はギョーザやその他のつまみを食べながら酒を飲み、仕上げに〆の一杯としてラーメンを食べるのが一般的だ。みんな汁物が大好きだ。
それに対して相談者の店は、昼はセットメニューがほとんど売れず、ギョーザの注文も少ない。夜は常連客がギョーザを注文して酒を飲んでいる。客はこの店のギョーザは最高だと褒めたたえるが、他の料理やつまみ類、〆のラーメンの注文は少ない。
相談者はゴウ達に自慢のギョーザの試食をして欲しいと厨房でギョーザを焼いた。これを食べた一同は、「美味しい!」の連発だった。言葉通りの素晴らしいギョーザだ。先ほどまで試作会で食べたギョーザとは別物だった。ゴウはピンときた。これは富多師匠が講演会で話されたギョーザの話と全く一緒だと。
..................
〘富多師匠の講演の記憶…...自信の味〙
店主が美味しいと思う自信の味で成功となればこれは最高です。しかし思うようにいかないケースも沢山あります。こんな例があります。
あるお店ではギョーザが凄く売れています。ラーメンを食べた人の半分近くが注文します。値段も低価格に設定してあります。ラーメンとセットにしたメニューが人気です。
かたや、別のあるお店では、具材、肉の量などにもこだわって、とても質の高いギョーザを低価格とはいきませんが、リーズナブルな価格で提供しています。しかし、こちらはオープン時にはかなり売れていたものが、ジリジリと売れなくなってしまっています。ギョーザが売れなくなったオーナーは、他店のギョーザを食べて「価格が安いから、味のレベルが低くても売れている」と言います。
もちろん、価格が安いというのも要素の一つかもしれませんが、両者には決定的な違いがあります。
売れているギョーザの方は、野菜を中心にした具材であっさりとしていて、それだけ食べるには少し物足りない程度です。でも、メインのラーメンと一緒に食へるには調度良いボリュームで、さらに半ライスや半チャーハンまでセットで注文するお客も多く客単価が上がっています。しかも、お客様は満足感があり美味しいと感じています。
一方、売れなくなったギョーザの方は、肉がたっぷり詰まって、味付もしっかりしていてボリューム満点のこだわりの逸品です。しかし、お客様はというと、ラーメンと一緒に食べると、重くてクドイ感じになり、さらに残すと損をした気持ちになります。一人で行くときは、ラーメンを食べてもギョーザは注文しなくなります。たまたま、家族連れで来店した時に家族でギョーザを一皿か二皿を注文する程度です。
また、夜には常連のお客様がギョーザをつまみにしてビールを飲んでいます。他の料理はあまり頼みません。そして「ここの店のギョーザはこの街で一番だ。安いまずいギョーザを食べている人が多いのは、この地域のレベルが低い証拠だ。分かる人には分かるよ、とても美味いよ」と言われて、売上が減少し続けている現状とは裏腹に、自分のギョーザに対する自信は強まって行くという状況もおこります。
これは、メインのメニューとサイドニューが喧嘩してしまった例です。
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「売り上げが悪いのはこの美味しいギョーザのせいです」
このゴウの言葉に一番驚いたのはカールだったが、説明を聞いて納得した。その後、ゴウは改善案を幾つか提示して選択は店主に任せた。
1.ギョーザの味はそのままにして。1/2~1/3の大きさにする
2.野菜が多いシマモトギョーザにする
3.ギョーザはそのまま、ラグールの街中の大食い・大食漢に向けて宣伝する
何となくゴウに誘導された感があるが、店主が選んだのは、1と3だ。新たに加えた1/3サイズのミニギョーザはセットメニューでかなり売れ出した。今までのギョーザは、宣伝の効果で大食漢が大勢押し寄せ、ラーメンのセットの1皿では足りず2皿、3皿を食べる強者も増え売り上げが伸びた。
「おおー! その店行ったぞ、ワシはラーメンセットでミニギョーザ、大食い部隊員はギョーザを追加しておった。ギョーザという食べ物、美味かった」
「はい、皇帝陛下がその店に行かれたと情報がありましたのでこの話をしました」
「そなた、なかなかの切れ者のようだな」
「ギョーザの話と、行政でうまくいかないことの解決方法が同じだと気付いたのです」
例を上げると、農地開拓事業だ。やせた土地を土壌改良し農地にする作業が遅れていた。農業従事者に報奨金を与え、畑となる土地の土壌改良は進んだが、シマモト式と云われる畑を囲む3方向に1面ずつ違う樹木を植える工事が進まない。造林完了後に支払う報奨金をかなり高額にしたが工事を請負う農林業従事者が現れなかった。
この現状を知っていたカールは提案書を書いて解決の為に動いた。作業は1面ずつ造林工事を請け負わせた。
つまり1/3の工事量なので早く報奨金が入る。それで請負人が増えた。さらに、農林業従事者以外に広く募集したので他業種から力自慢の人員も多く集まった。
「そなた達の話を聞いていると何故か楽しくなる。国王の命令で全てを動かす国ではないのだな。報奨金を与えても言うことを聞かない。面白い! 今回の神ラーメン改変作業には500店の人員や関わった者の人員数は軽く1,500人を超すだろう。それなのに情報が洩れなかった。恐ろしい罰則を科して漏洩を防いでいると思ったが違ったようだな」
まだまだ聞きたいことがある皇帝だったが、イサドラとゴウが戻って来て質問は止まった。2人は手を繋いで歩いて来た。それを見たマリーとサクラがイサドラを睨みつけたが笑顔を返されてショックを受けた。皇帝と国王が向かい合って座る席まで近づいてから手を離した。
「皆様、大変お待たせいたしました」
「とても良いお話ができましたわ」
「婚姻を決めたのか?」
「父上、慌てないでください」
「2人で話し合いました。後は、皇帝陛下と国王陛下に承認していただくだけです」
この流れだと2人は結婚すると誤解されそうだ。手を繋いだのは頼まれたからだ。茶目っ気たっぷりのイサドラの思惑通りになってしまった。グルンジ側はみな困惑している顔をしている。ゴウは慌てて否定した。
「結婚はしません!」
「ゴウさまは難攻不落でしたわ。結婚しない代わりに条件を出しました。その条件を受け入れてくれるなら、婚姻の話は白紙、過去に受けた大きな被害も不問にしますわ」
「その条件とやらを聞かせてくれ」
どんな難題が条件なのかベルナード国王はとても不安な顔をした。
「何故その条件を出したのか、先に説明させていただきますわ」
ホテルでラーメン本を見た父は完全に出し抜かれたと悟った。トラキール帝国一行は夜中に艦船に戻り、魔石投擲兵器で王都ラグールを焼け野原にするのでは思ったほどの怒りが目の中に見えた。なんとか思い留まった父は、ここ数日ラーメンを食べ歩くうちに怒りが消えて興味に変わり、それが楽しさに変わった。イサドラはそう感じた。その楽しさを継続させる案を考えた。両国の平和の為に…
「条件はゴウさまから話していただけますか」
「それでは私から発表します」
メモ書きを読み上げた。
..................
1. 今回の世界一美味しいラーメンのイベントは、トラキール帝国とグルンジ王国の共同企画だったと世界に発表する ☆その目的は、トラキール帝国側はラーメン産業への参入とニュー・エル・ドラード計画を公表する為、グルンジ王国側は改良に成功した神ラーメンや数々の新しいラーメンのお披露目をする為として企画したことにする
2. 今後も継続的に両国でラーメンのイベントを開催する ☆具体的にはラーメン・ビエンナーレを開催をする ◦ 2年に1度、両国から各20の選抜したラーメン店を集めて開催する ◦ 第1回はグルンジ救世神広場で開催する ◦ 第2回は、イベント専用の建物をラグールに建設して開催する ◦ その建設費用はトラキール帝国が負担する ◦ ただし、ニュー・エル・ドラード計画都市の完成後はその都市とラグールとの交互の開催とする ◦ 選抜店舗数は増やしていく ◦ 他国の参加も認めていく
3. 今後もイサドラ様と私の2人だけの会談の機会を設けること ☆勉強の為に年に何度もイサドラ様がラグールに訪問されるので、その時に必ず設営すること
4. 会談内容の秘密 ☆発表したこと以外は2人が何を話したかを誰も詮索してはならない
これはラーメン戦争にトラキール帝国とベルゴス皇帝が負けたという事実を消す作戦だと誰もが理解した。加えて、ラーメンイベントの継続を通してグルンジ王国側にニュー・エル・ドラード計画への協力を要請したと理解した。
..................
「かなり戻りが遅いと思ったが、2人でこんなことを話し合っていたのか」
グルンジ王国にラーメン戦争を仕掛け、勝った気でいたが結果は完敗だった。完璧に叩き潰された。世界中に恥を晒したがその負けが消えるのだ。ゴウを手に入れられなかったのは残念だが、この条件は悪くない。
「ベルナード国王、ワシはその条件で良い。娘のイサドラには敵わん!」
国王は内心ほっとしていた。国の財政が破綻しそうな程の賠償要求があるのではと心配していた。おまけにラーメン・ビエンナーレの建物の建築費用まで出すという。裏に何か別な思惑があったら怖いと考えもしたが、ここは条件を呑もうと決断した。
「その条件を守る。ベルゴス皇帝、イサドラ姫、それで良いな」
ここで条件と合意内容を書いた誓約書を至急作成することになった。
やはり…ゴウはテーブルの豪華な料理をサクラ以外は誰も手を付けていないことに気付いた。計画通りこのラーメン戦争の〆として準備していたラーメンを出そうと決断した。
「誓約書の準備が出来るまで、深海の魚鍋とラーメンをお召し上がりください」
ゴウは海洋研究所の一番深い水深40mの生簀で試験養殖しているアンコウ1匹を今日の為に準備させていた。父親がやっていた高所に吊るし置いて庖丁を入れる「吊るし切り」でアンコウを解体した。
大鍋にキモを潰し入れ味噌も溶き入れた。鍋だけ食べるなら具材から出る水分だけで作る「どぶ汁」が美味いが、今日は出汁をたっぷり加えた。そこに解体したアンコウの七つ道具といわれる、キモ、皮、水袋、ぬの、エラ、ヒレ、白身とたっぷりの野菜を入れた。その大鍋を熱魔石板の上に運ばせた。
完成させると給仕に声をかけ器に取り分けてテーブル席の皆へ提供させた。これは魚スープ好きのベルゴス皇帝用に用意したものだ。
魚スープがそれほど好みではないマリオラ皇妃には、小さな鍋で煮た丸鶏と野菜のスープにあらかじめバターを加えてぺースト状にした鶏レバーを入れて完成させたものを提供した。
最後に、どちらの鍋にも汁を追加し〔茹でこぼし不要に作った生麺〕を直接鍋に入れて茹でた。生麺がスープの旨味をしっかり染み込んだ状態で茹で上がった。器にスープと麺を取り分け薬味をのせてラーメンを完成させて提供した。
「〆のラーメンは如何でしたか?」
もちろん食べている最中の歓声や笑顔でみんな満足していたのは分っていたが…
「不味い!」「マズイ!」「まずいな」
「えっ!」
国王と皇帝を筆頭に、みんながマズイと言い出したので少しだけ驚いた。
「駄目ですよ、そんな笑顔で言っても嘘がバレバレですわ」
イサドラの一言でみんなが笑いだした。
「ゴウがあまりにも自信有り気に聞いてきたので、つい意地悪してしまった、ハハハハ!」
王様の一言で、あー、やってしまったと反省したがもう遅い。大事なラーメン戦争最後の〆の一杯に美味しいを押し売りしたような態度を取ってしまった。
「申し訳ありません。無粋な態度でした」
「ははは 美味かった! ワシの為に作ったラーメンだと直ぐ理解した」
皇帝の言葉で場はさらに和やかになった。緊張感たっぷりだったが温かい鍋とラーメンを食べて冗談を言える雰囲気になったのは良かった。少し安心したゴウは全身に疲労を感じた。
作成された誓約書に両国の国王と皇帝が署名してパーティーが終了した。その後、トラキール帝国の一行は帰国の為、今夜のうちに大型艦船に乗り込み、早朝に出航すると知らされた。
「ベルゴス皇帝陛下のお命を狙って入国した不遜な輩がまだ20名以上捕まっていません。艦船に乗船するまでお供してお守りいたします。手配をするまでお待ちください」
ベンはそう話すと、ドラクダール将軍と警護の打合せをした。
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王城を厳重に警備された馬車で出た一行は、小型客船専用埠頭の先にある桟橋の前に着いた。そこは帝国の小型艦船が停泊している場所だ。桟橋の入り口にはトラキール帝国の隊員が見張りをしている。馬車から降りた皇帝と皇妃の周りを警備隊が囲んで桟橋に進んだ。その後にはフードを被った皇女が続いた。隣には同じフードを被った皇女の護衛役のサクラがいた。その桟橋で事件が起きた。
「賊だ!」
ベンとドラクダールが同時に声を上げた。桟橋の下に隠れていた賊達が両側から一斉に剣や槍を持って出て来た。警備隊が賊に気を取られた瞬間、少し離れた位置からベルゴス皇帝の頭に向ってナイフが飛んで来た。しかし、マリオラが皇帝の前にひらりと出てナイフは逸れた。ケイは続けてナイフを投げようとした賊に向って短剣を投げて倒した。
ケイは見てしまった。あれは皇帝を狙ったナイフが逸れたのではなく、マリオラが飛んで来たナイフを手でつかんで投げ捨てたのだ。
襲撃してきた賊は一瞬で制圧された。その速さと強さにベンは驚いた。ベンやドラクダールが1人倒した時間で皇帝の親戚というエースやビーラを含め帝国の護衛隊は2人倒している。こいつら何者だ? その上を行くのはサクラで3人倒していた。さらに凄かったのは皇女のイサドラが何と5人も倒していた。
娘が剣を振るう姿を初めて見た皇帝は、その強さにやはりマリオラの娘だと苦笑いした。
拘束された賊は24名。その取り調べは帝国側がする。中型戦艦に監禁してトラキール帝国に連行することが決まった。
小型船の甲板から、ベルゴス皇帝が長い階段タラップを登り大型艦船に乗船するのを見届けたベンは重圧から解放され「終わった」と安堵の声を漏らした。
両隣のケイとサクラと自然に手を繋いで喜んだ。




