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天才ラーメン王、全てを失い異世界で無双する  作者: とみた美味いろは


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ヤマモト・ナギサからのメッセージ

《天海聖暦771年 春月9日 異世界開店日より489日後 (転生後969日)》


「タケオカ・イッシン殿、そなたは救世主として我が国を救ってくれた。感謝する!」


 グルンジ王城謁見の間で、ゴウはベルナード国王から御言葉をいただいている。


「伯爵の地位と報奨金と屋敷も与えよう! 国民には、ゴウは転生してきた救世主タケオカ・イッシン様だったと知らせるつもりだ」


「地位も屋敷も要りません、転生の事実は伏せてゴウのままで暮らしたいです。新たにラーメン研究所を作りたいのでその資金提供をお願いします」


「うーん?」


「ラーメン戦争は終わったのではありません。始まったばかりです。世界にラーメンは自由だと気付かせてしまいました。それからイサドラ様は怖いです。転生してから一番恐ろしいと方だと感じました。対応を間違えたら大変なことになりそうです。これからが本当の戦争、いや競争です」


「研究所のことは分かった。他のことは後で相談しよう。それより長く待たせたな」


 大きく深呼吸をした国王はヤマモト・ナギサのことを話し出した。


「ナギサ殿のことは全て秘密にしていて悪かった。マリーとワシでそうすることが最善と考えたのじゃ。マリーを責めないでくれ」


 国王が手を胸元まで上げると、マリーと金髪の男性が謁見の間に入って来た。ゴウが振り向くと、男性の後に隠れるようにしている女性を見つけた。山本渚だ!


「渚! 渚!」と叫びながらその女性に抱きついた。街で何度か見かけた渚の若い頃にそっくりなあの女性はやはり渚だったのだ。しかし、渚から抱き返してこない。


「すみません! すみません!」としか言わない。あまりの違和感に手を離した。


「すみません、私はナギサではありません。ソフィーと申します。マリーは私の姉です。こちらはジャン・リュック・アントーニ公爵、私達姉妹の父親です」


 さらに追い打ちをかける衝撃の一言。


「私達姉妹の母リーナ・アントーニの転生前の名前はヤマモト・ナギサです。母は3年前に天寿を全うしました」


「……」


 ゴウは頭が混乱してその場に座り込んでしまった。渚はこの世界に転生し既に亡くなっていた。目の前にいる男性は渚の夫で、姉妹はこの男性と渚の子供だと? これは一体どういうことだ。


「ゴウ、本当にごめんなさい! 秘密にしていて」


 駆け寄ったマリーは、小さな木箱を抱えていた。


「母上から託された手紙が入っています。もしもタケオカ・イッシンという男性が転生してきたら渡してと欲しいと言われていました、ゴウ? ゴウ!」


「……」


「直ぐに客室に運ぶのじゃ! ゴウには休息と考える時間が必要じゃ」


◦◦◦◦◦◦


 春月10日


「眩しい!」


 転生前の強い光の柱の夢を見ていたゴウは、自分の声で目覚めた。


「起きた、良かった目が覚めて。昨日は謁見の間で意識を失ったと思ったら(いびき)をかきはじめたと聞いてて驚きましたよ」


 目の前にサクラの顔があった。今、俺は天蓋付きベッドに寝ている。謁見中に国王の前で寝てしまったのか? 大変な無礼をしてしまった。謁見の間からこの部屋に運ばれてから丸一日寝ていたらしい。その間、マリーとサクラが交代で付き添ってくれていたようだ。  


 身体の疲れが限界に達しているのは自覚していた。それに加えてようやく渚に会える喜びで興奮し眠れずに昨日を迎えた。謁見の間で渚にはもう会えないという非情な宣告をされショックを受けたところまで思い出した。


「そうだ、渚の手紙は?」

「机の上に置いてありますよ。お食事の用意をさせます。読む前に食べてくださいね」


 部屋からサクラが出て行くと、待ちきれずベッドから降りて机に向かった。大きな机が2つある。左側の机上には手紙が入っている小さな木箱、その脇には「シマモト・ヨシオ自叙伝特別版」の中編・後編、「ヨシオ日記」の書き写し版が置いてあった。

 さらにその隣にはマユミ・キョウカとナカムラ・シュンイチの救世主伝記や資料が重なって置いてあった。右側の机上にはヤマモト・ナギサに関する大量の資料が整理されて置いてあった。


  椅子に腰かけ、手紙が入っている小箱を開けようとした。


「お食事が先ですよ! 体調が良くなるハーブ入りのお茶です。最初に飲んでね」


 お茶を運んで来た給仕人と一緒にサクラが入って来た。テーブルには、お茶と一緒に呼び(りん)が置かれた。続いてパンとスープとサラダという軽食が運ばれて来た。


「しばらくこの部屋にはお給仕人以外は誰も来ません。何かあれば呼び鈴を鳴らしてね」

 

 食事を済ませたゴウは、山本渚の手紙と向き合う。転生してからずっと渚と会うために頑張ってきた結果、得たモノは箱の中の手紙だけだ。


 複雑な感情を抑えて小箱を開けた。封筒に入った手紙が5通あった。5通とも封筒に日本語で竹岡一進へと書いてあり封がしてある。渚の手紙は2通あり、’最初に読んでください’と書かれた封筒を開けた。


〚’最初に読んでください’ 竹岡一進様へ … 山本渚より〛

▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫

 竹岡一進さま

 お久しうございます。この手紙を読まれているということは転生されたのですね。私が天寿を全うしたと聞いて混乱されているのではと心配しております。


 最初に、私が何故手紙をしたためたのかを説明します。私の余命が後数十日に迫ったある日、一進さん、あなたが間もなく転生してくると確信してしまったのです。後世に何か伝えることがないかを考える為に、私より先に転生した先生方の自叙伝や伝記、そして日記など読んで気付きました。

 建物が地盤ごと崩落した研究所に残っていた5人のうち4人がこの世界に転生しました。その4人の転生した順番の完璧さは神業を凌ぐほどだと罰当たりな感想を持ってしまいました。


 3人の先生方は《狩る・獲る》から、《作る・守る・育てる》に変え、食糧の枯渇を無くした功績はまさしく救世主で、ご逝去された10年後に救世神として称えられるのに相応しいご活躍でした。私自身はそこまでの活躍は出来たとは思っておりません。

 先生方の貢献で生まれた素晴らしい食材と日本での料理知識と調理技術を生かして沢山の新しい料理をグルンジ王国内の料理人に提案していきました。その結果、「美食の国グルンジ」の名声を高めることに貢献することができました。


 次に庶民向けの料理としてラーメンを提案しました。それは家庭向けの料理本用にあなたに書いてもらったレシピをそっくり利用したものです。これが思いのほか評判が良く、国内どころか海外からの観光客にも評判になり、ラーメン店がどんどん増え続ける状況になりました。ラーメンがこの国には欠かせない料理の一つになりました。


 そんな中で事件が起きました。人通りが多い街中で知人と話している私に向って怪しげな輩が近寄ってきて何かを盗もうと手を出してきました。咄嗟に投げ飛ばしてしまいました。あなたはご存じだと思いますが、私の祖父は合気道の達人で小さいころから護身の為にと指導を受けておりました。小手返しの技を使ってしまいました。


 これを目撃した街人が声を上げました。「神様だ!」「神技だ!」「アントーニ公爵夫人は神様だった!」「やはり救世主様は神様だった!」「ほとんど触れてないのに大男は転がった!」


 この噂が王国中に広まってしまいました。その影響で、私が伝えたラーメンのレシピは神のレシピと言われるようになり、改良することは改悪だというのが常識化してしまいました。私が何度否定してもダメでした。

 さらに提案した他の料理まで神レシピとなり、改良改善をしてはいけないとの風潮になってしまいました。このままでは、料理人の思考が硬直化して美食の国が崩壊してしまうと危惧しました。


 そう! これを変えるのはあなたです。その為にあなたは必ず転生してくると確信しました。「ラーメンは自由だ!」あなたの師匠の富多さんから受け継いだ考えで、神レシピの呪縛を解いてください。


 3人の先生方から、あなたへの手紙を託されました。救世主としてはプライベートな内容で恥ずかしいので、あなたしか読めないように日本語で書いたそうです。私もそうしました。私が書いた手紙は最後にお読みください。


それでは次の手紙でまたお会いしましょう。


天海聖暦768年春月

山本 渚

▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫


「ふーっ!」


 溜め息をついたゴウは、カップに残った冷めたお茶を飲み干した。そして次の封筒を開封した。

 

〚竹岡一進殿へ … 島本義男〛

▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫

 竹岡一進殿

 この手紙を、山本渚殿に託しました。

 どうしてもお伝えしたいと思い筆を執りました。


 貴殿は、あの大地震が起きた時、研究所に私達を待機させたことに責任を感じているのではと思っておりました。あの判断は正しかったです。まさか地盤ごと建物が崩落するとは想像出来ません。今では転生した奇跡にとても感謝しています。


 私にとって、この世界に転生したことは大きな喜びになりました。それは私が書いた自叙伝や資料でその理由がご理解できると思います。転生前の知識を利用して取り組んだ多くの研究がすぐ国民に役立つという結果となって表れました。魔道技法や魔石を利用した実験と研究で、転生前は無理と諦めていた問題も解決してしまいました。成功の連続という体験は幸せの連続でもありました。


 まもなく私は天寿を全うすることができます。素晴らしい私の異世界人生万歳!です。


 ここからはプライベートな内容を記します。誰かに知ってもらいたくて、迷惑を承知で貴殿にお伝えします。


 既に自覚していますよね。この世界では、自分の感覚や感情が日本で暮らしていたときと比べて非常に強いことに驚かれたと思います。その感覚を言葉にすると「衝撃」ですね。美味しいものを食べたときの衝撃、美しい花を見たときの衝撃、特に美しい人を見たときの衝撃は凄いですね。数値に表してみると転生前の感覚の10倍ぐらいと推定します。


 日本での私は1人暮らしでした。40歳で最愛の妻を病気で亡くしてから恋愛感情が湧くことがなく、研究が恋人のような生活を63歳まで続けていました。ところが転生したら18歳の美青年の姿になっていて、全ての女性が美しすぎて自分を制御するのが大変でした。

 転生して間もない頃は、色々な女性に会うたびに「綺麗!」「魅力的です!」「可愛い!」と叫びたくなる衝動を抑えるのが大変でした。


 救世主と呼ばれるようになり、この世界での生活にもすっかり慣れた頃、私は恋をしました。研究所の所長に任命したセリラ・カルミンという才能ある若い女性です。セリラの容姿はもちろん、声や仕草にもメロメロでした。セリラが私に好意を持ってくれていたことは気付いていました。ずっと自分を抑えていましたが、ある時一線を超えてしまいました。その時に感じた高揚感、幸福感は忘れられません。


 その後、研究所内に作った住まいでの幸福な同棲生活を始めました。しかし彼女は家庭の事情で私の元を去って行ってしまい、人生最高と思えた幸せな時間は2年で終わりました。この時の寂しさ悲しさは、やはり転生前の10倍、とても落ち込みました。


 しかし、恥ずかしながら…その後、3度の大恋愛を経験しました。3度とも真剣でした。研究バカのこの私が人を愛する幸せを何度も感じることが出来たのは奇跡です。とても素晴らしい人生になりました。


 転生のきっかけを作ってくれた竹岡一進殿に感謝します。

 

 ありがとうございました。

 

天海聖暦748年秋月

島本義男

▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫


 呼び鈴を鳴らし給仕人にお茶を頼んだ。私のために島本先生は「転生した人生は最高だった」と手紙を残してくれた。あの真面目一徹のような先生が恋愛の話を書き残してくれたことには心が温かくなった。そして喉が渇いた。


「お待たせしました。おかわりのお茶をお持ちしました」

「ありがとう! ところでこれは何のお茶ですか?」

「救世神シマモト様が考えた、シマモトブレンド・ハーブティです」


 これはカルロ・マルタン公爵が飲んでいたお茶だとゴウはすぐ分かった。島本先生が転生前の世界にあったセントジョーンズワートと呼ばれるハーブと同じ成分の植物を見つけた。これは天然の抗うつ剤と呼ばれることもあるハーブだ。これと他のハーブとブレンドしたものがシマモトブレンドだ。体質によって副作用もあるので継続使用は避けるようにと注意書きも残してある。


「強いので、次は同じお茶のおかわりはできません」

「ありがとう、下がっていいです」


 ショックを受けた自分に、精神安定効果のあるお茶が出されたのだ。ゆっくりとお茶を飲み、大きく深呼吸をした。


 覚悟を決めた! もう待てない。 渚の手紙を先に読むことにした。真弓先生と中村先生の手紙は後にする。もう一度深呼吸して、封筒を開けた。


〚竹岡一進様 … 山本渚〛

▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫

♡竹岡一進さま

 愛する一進にこの手紙を残します。


 私がこの世界に転生したのは天海聖暦701年春月のことです。幸いなことは、私より先に島本義男先生が681年、真弓京香先生と中村旬一先生が690年に転生されていたことです。3人の先生はすでに救世主としてご活躍されており、グルンジ国内では誰からも敬愛される存在となっておられました。先生方のご指導のお陰で、私もこの国に貢献できたと思っています。


 転生後はリーナと名乗りました。ヤマモト・ナギサの名前は王家の皆様とごく一部の方以外には知られていません。髪を金色に染めました。この世界で生きる覚悟として名前と容姿を変えるところからスタートさせました。転生時の18歳の容姿・体力は、85歳で天寿を迎えるまで変わらないと知らされ覚悟を決めるしかありませんでした。


 私の引受貴族はアントーニ公爵家です。大きく豪華な邸宅で優しくて素晴らしい皆様との異世界ライフが始まりました。それから「美食の国グルンジ」の名声を高める活動を始めて26年が過ぎた727年に、お世話になっているアントーニ公爵家に待望の長男ジャン・リュック・アントーニが誕生しました。そう、後に彼が私の夫となりました。


 転生してからの私に王家や貴族の素敵な殿方から熱烈な求婚の申し出がありました。でもずっとお断りをしていました。私はあなたのことが何年経っても忘れられず、あなたがこの世界に転生してくることを祈っていました。


 それから時が経ちました。私が転生してから50年後、天海聖暦750年、ジャン・リュックが23歳になった時に彼と結婚しました。彼が18歳になった時からずっと求婚されていました。自分の実年齢や寿命のこと、さらには恋人の竹岡一進が転生してくる淡い期待を持っていると断り続けていました。


 求婚をお受けすることにした理由は、全てを受け入れると言ってくれたことに加えて、何度も子供が欲しいと言ってくれたことです。女性として子供を産んでみたい、母親になってみたい、その気持ちを抑えることが出来ませんでした。王様にご相談したら、救世主の子供が誕生するのを楽しみにしていると応援をされ、決断をしました。


 一進、ごめんなさい!

 愛するあなたを待てずに結婚してしまったことをお許しください


 と書きましたが、本当は「一進、私を褒めなさい!」と思っていますよ。なんせ50年間もあなたを待ち焦がれ、多くのカッコイイ男性の誘惑にもずっと耐えたのですから。この世界の1年は480日ですから、日本では65年分の日数になります。愛するあなたに褒めて欲しいわ!


 結婚した翌年、751年に長女を授かりました。金髪で綺麗な顔立ちでカッコイイ父親にそっくりでした。フランスの民衆を導く自由の女神のイメージでマリアンヌと名付けました。17歳になった娘マリーは、美人で性格も良く魅力的な女性に育った自慢の子です。小さい頃からマリーには、日本での生活のことを沢山話しました。いつも目を輝かして聞いていました。今では、マリーと2人だけの時に、あなたに会ってみたいとマリーが言うのが口癖のようになっています。マリーの性格は私にそっくりです。


 一進、私の娘マリアンヌを崇めたてなさい!

   私は知っていますよ、マリーを一目見たら心を奪われることを


 雑誌の取材の仕事で天才ラーメン王としてのあなたに初めて会った時を思い出すわ。私を見るなり呆然として挨拶もちゃんと出来ない状態で、私に一目惚れしたとバレバレでしたわね。もう一度、あなたの呆然とした顔を見たかったわ!


 マリーが生まれた751年に、なんと島本先生のお孫さんを私がお預かりすることになりました。救世主の孫とは公表せず、私が養女として育てることになりました。黒髪でピンク色の微笑みが可愛い赤ちゃんにサクラと名付けました。マリーと同じく17歳になったサクラは、アニメの世界から飛び出したようなキュートな女性になりました。そして可愛い見た目からは想像がつかないのですが、かなり凄い剣の使い手らしいです。剣術の師匠から天才的だと言われています。


 私はマリーとサクラを娘として姉妹として育てました。2人はとても仲が良く、特にサクラはマリーが大好きで恋人のようです。ある時サクラが、いつも一緒にいたいからとマリー専用のメイド兼護衛になると言い出して、私とマリーを困らせました。さらに屋敷のメイドと同じ服を着ると言われた時はさすがに反対しました。どう対処するか考えた末に閃きました。


 一進、私の娘サクラのファンになりなさい!

   素直になりなさい、私の策略よ、大好きでしょう!


 あなたと行ったライブを思い出すわ。メイドの衣装を着たハードロックバンドよ。サクラの服は、あのバンドの2人のギタリストをイメージして、プチ豪華なメイド服風に私がデザインしたのよ。最高でしょう!


 次女のソフィーが生まれたのは753年です。2人の姉の背中ばかり追いかけていたソフィーも15歳になりました。とても生真面目で温厚な性格は父親譲りです。来年は今通っている王立天海聖真校を卒業します。一般習得科目はもちろん、選択した料理、農業、畜産、水産、それぞれの研究・実践特別科を首席で卒業するのは間違いないと言われています。私より優秀な娘に驚くと思いますが、もっと驚くことがあります…


 一進、私の娘ソフィーに驚きなさい!

   ソフィーは私と瓜二つよ、私を忘れないで!


 私の分身のような容姿のソフィーはどう? 私に2度目の一目惚れをしそうでしょう! 夫のジャン・リュックも私とそっくりの娘が可愛くてメロメロよ。この世界に転生した私は皆に愛されて幸せなの。’私を忘れないで!’と書いたのは嘘よ、訂正するわ。


 一進、私を忘れて生きなさい!

   この素晴らしい世界を自由に生きて、楽しんで!

     自由にラーメンを創って、皆を楽しませるのよ!


 少し失礼な書き方をしてごめんなさい。あなたのショックを和らげるために何度も書き直しました。それに今の私は85歳のおばあちゃんです。あなたに対して母親のような気持ちと少女のような気持ちが入り混じって書いてしまいました。お許しください。


 私の充実した幸せな異世界生活で、思い残すことはあまりありません。もしも贅沢を言わせていただけるとすれば3つの未練があります。

1.もう一度、一目だけでもあなたに会いたかった

2.あなたが私に内緒で特別注文していたダイヤの婚約指輪を見たかった

3.娘達の幸せな花嫁姿を見たかった


 それから、あなたにお願いがあります。私の主人、アントーニ家16代当主のジャン・リュック・アントーニ公爵(41歳)は、とても良い人よ。彼がいなければ娘も授かっていません。あなたのことは全て話してあります。必ずや仲の良い友人なると信じています。親しくしてね。


 3人の娘達は、私がこの世界に残す最高傑作よ! 愛おしくてたまらないわ! あなたが会ってもそう感じることでしょう! 主人は友達になる前に、あなたの義父になるかもしれないわね。娘があなたと結婚、それも良いわ! もちろん他の誰かとあなたが結ばれても祝福するわ。自由に生きて!


 私が天寿を全うできるまであと数日です。もう直ぐあなたがこの世界に転生してくると信じてしたためたこの手紙を娘マリアンヌ・アントーニに託します。転生したあなたにこの手紙をどのタイミングで渡すのが良いかの判断も信頼する娘に任せました。


 お別れです さようなら♡ 


天海聖暦768年春月

山本 渚

▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫▫


 渚の手紙を読み終えたゴウの目から涙がこぼれ落ちた。それは悲しい涙ではない。渚の優しさに泣いた。この異世界で再会出来なかったショックを和らげる為に何度も書き直してくれたのが分かった。途中で出てくる命令調の言い回しの文面は、アニメに登場するお嬢様のようで少し笑えた。落ち込むより前に進めと気合を入れられた。

 

 前へ進もう! もう一度国王に謁見しなければならない。これから本当のラーメン戦争が始まるのだ。やることが山ほどある。その為に俺は転生したのだ。


「天才ラーメン王として無双してやる!」


涙を拭いたゴウは、呼び鈴を鳴らした…


                                


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