開戦日間近
《天海聖暦770年 冬月60日 異世界開店日より420日後 (ゴウ転生後900日)》
トラキール帝国、大城皇帝会議室
「ドラクダール、良くやった。改造した戦艦の仕上がりは見事だった」
世界一大きい戦艦の改修改造工事が竣工した。ベルゴス皇帝の要望は、威厳と威圧感があり、豪華で格式があるようにせよだった。皇女イサドラの助言がなければ下品な雰囲気になってしまったと思っているのは、ドラクダール将軍や工事担当職人達だけではない。皇帝自身もそう思っている。威厳と品位が保たれた黒と金のコントラストは見事だった。
「ありがとうございます。あれはイサドラ様のセンスの良さです」
「そうだな、娘には敵わん」
「ところで、今日呼んだのは招待状の件だ」
「世界中の王族や貴族にもう届いていると思います」
「ゴウという青年に会ってみたい。世界一美味しいラーメン宣言の舞台にゴウとその関係スタッフを一緒に出席させる手筈はどうなっている」
「グルンジ国家主席ベルナード・ファン・グルム国王宛ての招待状に、皇帝のご意向を記した親書も加えて送ってあります」
SSCを使った様々な工作をことごとく跳ね返したゴウとその仲間達に興味を持った。しかしそのゴウでも神ラーメンの改変に失敗続きだと情報が入っている。当日、神ラーメンの改変はこうやるのだと示して驚かせてやる。皇帝はニヤリと微笑んだ。
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グルンジ王城 特別室
「ついにラーメン大戦争じゃ、決戦日が決まった」
ゴウ、ベン、ケイ、マリー、サクラといつもの面々の他に、カルロ公爵とエンリケ編集長も呼び出された。
アーサー第一王子が、トラキール帝国ベルゴス・ダークリス皇帝からグルンジ王国ベルナード・ファン・グルム国王宛てに届いた招待状と親書を読み上げた。
『要約した招待状の内容』
◦来年春月1日に、貴国、王都ラグール港の外海に停泊させた船上にて
「世界一美味しいラーメンの宣言」をする
◦船上でラーメンの試食とパーティーを開催する
◦世界中の王族や貴族にも招待状を同時に送った
◦この船上での宣言イベントとパーティーへのご出席を賜りたい
◦宣言はもう一つあるがそれは当日のお楽しみだ
『要約した親書の内容
◦3大国をはじめ世界中の要人が集まる
◦その護衛として会場となる巨大船の他に、我が国が誇る黒の巨大戦艦2艦と
複数の中型と小型の20の戦艦を帯同させることを理解してほしい
◦春月1日~8日までラグールの高級ホテルの全ての貴賓客室を
予約して押さえてある
◦それは招待者に我々のラーメンとラグールのラーメンとの比較や
他のグルメを楽しんでもらう為だ
ここまではみんなが予測していたが…
◦田舎から出てきて今までと違った味のラーメンを作って少し話題になった店を
出したゴウという名の青年に神ラーメンの神レシピの改変を指示したとの噂
を聞いた
◦神レシピの改変に難航しているとの情報もある
◦ゴウ殿が船上でラーメンを試食すれば、これぞ神ラーメンを改変した至高の
ラーメンだと勉強になるだろう
◦ラーメン発祥の貴国も今後の参考にすればよい
◦その為にもゴウとその仲間やスタップを船上の席に招待する
◦必ず出席するようにしてほしい
「なんですかこれは、招待状や親書の類ではない。脅しと命令ですよ」
「冷静になるのじゃ、カール。珍しく熱くなっておるな」
「父上、これはカールの言う通りです。黒の巨大戦艦で脅して、邪魔をするなと」
「アーサー王子の言うとおりです。あの悪魔の黒い戦艦の魔石投擲兵器から爆発魔石が飛んで来たら、たった1発でラグールの街は焼け野原になり我が国は滅びます」
ベンもいつもと違ったこわばった表情だ。
「ゴウはどう思うのじゃ?」
「いいじゃないですか」
「ん? 詳しく話すのじゃ」
自分達が神ラーメンの改変に取り組んでいるが、ことごとく失敗していると思わせる作戦が成功している証拠だ。油断させておくのが一番だ。やれることは全部やった。達成感がある。
もう自分の手を離れた。後は店主達の頑張り次第と思うが順調に進んでいる手ごたえがある。怖いのは決戦日まであと60日、これからの情報漏洩だけは注意が必要だ。これがゴウの率直な感想だ。
「ふむ、分かった。カルロとエンリケの仕事はどうだ」
「地下のラーメン基地に我々の作業室を用意していただいてから一気に作業が進みました」
カルロが話したのは、カールが発案したものだ。情報が漏れやすい作業なので秘密の空間なら快適で安心だと作らせた。エンリケは精鋭を集めて地下空間にしばらく篭っていた。自分の仕事にこんなに手ごたえを感じたのは初めてだ。
「過去最高の仕事です。楽しみにしてください」
「ふむ、楽しみにしておる」
ケイが手を挙げた。
「王様、あたいに戦艦の対策があります。あんな怖いもの来ない方がいいですわ」
3大国の1つのガーレル帝国は世界一の軍事力を誇り、世界中から軍事訓練・指導の要請がある。ケイは新人兵士時代に、ガーレル帝国に派遣され軍の新人訓練に参加した。その時の同期だったエイミーとは今も交流が続いている。世界一の軍には最高司令官の他に5人の副司令官が配属されている。彼女はその1人で次期司令官の候補者と言われている実力者だ。
〘 ガーレル帝国司令部に相談した結果、来賓の護衛に魔石投擲兵器を配備した戦艦は必要ないとのアドバイスをいただいた。王国民の混乱を避ける為にも護衛は中・小の戦艦のみにして欲しい 〙と書いた親書をトラキール帝国に送る作戦を示した。




