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天才ラーメン王、全てを失い異世界で無双する  作者: とみた美味いろは


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ニャンニャン作戦と冷たいラーメン

《天海聖暦770年 異世界開店日より150日後》


「ゴウおはよう! 迎えに来たよ」


 いつものように元気なサクラがゴウの部屋に入って来た。続いてマリーとケイも入って来た。


「おはよう、ケイとサクラが大活躍だったらしいね」

「それ、あたいは話したくないわ」 

「じゃー、私が全部話しますよ~」


◦◦◦◦◦◦


 これからラーメンの試作に行く店は、猫街(ねこまち)、通称はニャンニャン街と云われている地区にある。昔からこの地区には猫の獣人族(猫人)と人間のハーフやクォーターが多く住んでいた。そこに30年程前に、刺繍などの手芸、縫いぐるみ製作、カツラ制作などのスキルを持つ猫人が海外から多く移住した。移住した彼らはこの地区の住民に自分達のスキルを伝授した。


 今では王族や貴族が旗や衣服などに入れる紋章などは全てこの地区で作られている。カツラも品質が高いので王族や貴族の御用達だ。3大ストリートにある高級店にはお土産用の手芸品から子供用の縫いぐるみなどを卸している。


 それからここの住民の容姿は老若男女問わずとてもカワイイと評判になり、地区の呼ばれ方もいつの間にかニャンニャン街に変わってしまったという。

 

 数日前、この地区にある2つのラーメン店主の子供が行方不明になった。


 しばらくして店に投げ込まれた手紙には、

 〘聞きたいことがある、明日、母親だけ指定場所に来い〙

 〘誰にも話すな。もし話したらどうなるか分かるな〙

 と書かれていた。


 どうやらSSC側に次の試作予定が漏れたらしい。私服の護衛隊員を通して連絡を受けたベンは、ケイとサクラに救出を依頼した。2人は猫人の協力を得て、カツラをかぶり尻尾を付けて猫人の母親に変装した。指示された郊外の場所には近くまで馬車を使い途中から歩いて向かった。


 そこはうらぶれた小さな一軒家だった。入口のドアの前に立つと、ドアが開き、「入れ!」と一言指示され中に入った。室内にはニヤケ顔のリーダーと思われる男と人相が悪い数名の男が立っていた。


「聞きたいことがある、座れ」


 男達に、壁際に置かれた椅子に座らせようと手荒く肩をつかまれた。サクラが震えた声を上げる。大人の猫人はニャとかニャンとは言わないがおちょくってみた。


「痛い! 怖いニャン!」

「こら、手荒くするな!」とニヤケ顔が一喝した。


「子供の無事を確認するまではニャ、あたいは何も話さないニャ」


 ケイの話し方にサクラは吹き出しそうになったが我慢した。


「分かった、地下に来い。声は出すな」


 階段を降りると小さな部屋が見えた。小窓があり覗くと、さらわれた双子の姉妹と1人の男の子が見えた。拘束はされておらず3人で与えられた菓子類を食べていた。ドアは2つの鍵で施錠されていた。子供の無事を確認すると1階の元の場所に戻るように指示され、また椅子に座った。


「あたい達に何を聞きたいニャ?」

「お前らは、これからゴウと何をするのだ」

「あたい達も分からないニャ、大失敗のゴウに何をさせられるか心配ニャ!」

「やはり噂は本当だったか、ゴウには神ラーメンの改変する能力は無いようだな」


「怖い、もういいでしょニャ、早く子供と一緒に帰してくださいニャ」


「バカか、猫人は。このまま帰すことなどありえん。しかし、お前はカワイイな! 俺はカワイイ女が好みだ。こんな好みの母親が来るとはラッキーだ。イイことしようぜ」


「酷いニャ、あたい達はどうなるニャ?」


「ハハハハ、猫人にこんな『ドラ猫母ちゃん』がいたとは。こんな体格のいい女はまったく俺の趣味じゃない。お前らにやるから好きにしろ」


 ずっと我慢していたケイがキレた。ニヤケ顔の顔面にパンチ一発! 反対側の壁まで吹き飛んだ。剣を取り出しケイに斬りかかろうとした手下達は、サクラの隠し持った細い仕込み刀で足を斬られてのたうち回った。そこに外に隠れていた警護隊員が突入して賊全員を縛り上げた。


 急いでサクラ達は階下の子供達が閉じ込められている部屋の鍵を壊し中に入った。3人の猫人の子供は同時にケイの胸に飛びついた。


「ニャーン、怖かった」


 しばらくケイに抱かれて泣いた。本当の母親と再会するまでずっと離れようとしなかった。よほど怖かったのだろう。


◦◦◦◦◦◦


「それでニャンニャン作戦は成功したわけです!」


「相変わらずケイもサクラも凄いね。俺、2人が猫人に変装した姿を見たかったなぁ~」


 ケイが顔を真っ赤にして怒った。


「あたいは、ゴウに裸体を見せても、ニャンニャン姿は絶対!絶対!見せない!」


 よほどドラ猫母ちゃんと言われたのがショックだったようだ。ここでマリーが話しを変えてくれた。


「それにしても子供の誘拐とはSSCの奴らは何を考えているのか理解不能です」

「あたいには、SSCやトラキール帝国の犯行とは思えない」


 極悪非道なSSCや非情な采配をするトラキール帝国は、これまで様々な批判をされてきたが子供に関しての悪行の話は1度も聞いたことがない。この異世界では成人の年齢(16歳)に達していない15歳までの子供に対して誘拐や虐待などの卑劣な行為は、最低最悪の卑怯な犯罪として最も蔑まされる。


 その行為に組織や国が関わったのが発覚したら、世界中からの圧力で組織も国も崩壊してしまう。そんなリスクを冒すはずがない。それにトラキール帝国のベルゴス皇帝はプライドが高いことで有名だ。SSCに子供の誘拐など指示する可能性はゼロだ。この事件を公表し、真実はどうあれSSCに批判が集まってくれればそれで良い。奴らが動きづらくなる。これはケイがベンと話し合った結論だ。

 

「さあ、着替えるよ」

「えっ 俺も?」


 袋からケイが取り出したのは、猫人への変装用具一式だ。マリーとサクラは自分達の分を持って別室で着替えに行った。ゴウはケイに服を脱がされて猫人に変身させられた。


「うわー! やっぱり似合う、ゴウはカワイイ!」


「ジャーン! 見てみて、どう?」


 着替えが終わったマリーとサクラが入って来た。これは可愛すぎる反則だ。ゴウは口を開けたまま呆然とした。


「ゴウは可愛さに見とれて言葉も出ないようだな、ハハハ」


 様子を見にベンもやって来た。3人とも良く似合っていると囃し立てられた。


「後は、ケイのニャンニャン姿を見られたら最高だったな! 猫の女神様を」


 キィッとした目つきでケイに睨まれたベンは逃げるように部屋を出て行った。


「この猫人の変装、本当に必要? 俺遊ばれている?」

「エヘッ」

「やっぱり、犯人はサクラか」


 猫人の変装をしたゴウとマリーを見てみたいと言ったサクラの提案にケイが乗ったのだった。安全の為に変装した姿で行くと言ってあるので、このままの姿で猫街に入ることになった。


 猫街へ入る手前の路地に私服の警備兵が立っていた。猫街内の治安はどうかと尋ねると、「誘拐事件が明るみになってから、ウロウロしていた怪しそうな輩が1人も見当たらなくなった」との返答だ。少し緊張が緩んだ。猫街に入ると大勢のカワイイ猫人に目を奪われた。噂は本当だった。大人も子供も男女問わずみんなカワイイ! 


 目的の店は緩い坂道が2つに分かれる場所にある。ラーメンと飯の店『ミミ』だ。この店は猫街区域では一番大きな店で、厨房の隣に空き室がある。そこに猫街でラーメンを提供している10軒の飲食店主を集めて試作会を開く。地区の店主は全て女性で子供がいる母親だ。事前にルーシーとカミラを派遣して準備をさせてある。


 店主の名前は、ミミ・オール。誘拐された双子の姉妹の母親だ。ミミのご主人は天才肌の刺繍職人で、『ミミ』の隣に刺繍品の販売店と工房を構えている。ゴウ達が店に入ると家族で出迎えてくれた。サクラに向かってオール夫婦は深々と頭を下げた。


「娘を救出していただき本当にありがとうございました」

「感謝しきれません」


 双子の姉妹はサクラの太ももに抱きついた。


「猫の女神様は来ないのニャ?」

「ごめんね、今日は来られないの」


 救出に来たケイを見た姉妹は女神様が現れたと思った。ケイほど肉感的な体格の猫人を見たことがないので絵本に描いてあった猫の女神様が来てくれたと抱きついたらしい。


 ミミに案内されて試食場所の空き室に行くと、飲食店の店主達に混ざって猫人に扮したカール王子が椅子に座っていた。カールを見た瞬間、ゴウ達3人は吹き出してしまった。


「フフフ」「ぷっ!」「うふふ」


 我慢したが声を出してしまった。どう見てもマヌケ顔だ。


「こら! お前たち笑ったな。これはサクラの仕業だな」

「選んだカツラが悪いのですよ、付け方も酷いですよ。それにしても…くくく…」


 急いで着替えを済ませたゴウは、両手で頬を叩いて気合を入れた。


「みなさん、これから猫街に相応しいラーメンを提案します。よろしくお願いします」


 店主のミミ・オールのアンケートには、〔神レシピに基づいて作っているが、猫舌で熱々のラーメンの美味しさが分からない ・ 猫街地区は猫舌の住民が多いのでラーメンはあまり人気がない〕と書いてあった。


「最初のラーメンは、猫街ラーメンです」


 運ばれて来たものは、見た目は醤油ラーメンと同じだがスープも麺も冷たい。転生前に山形で何度か食べた〔冷やしラーメン〕を参考にアレンジしたものだ。店主達は熱いという先入観から恐る恐るスープを口にした。


「うっ スープが冷たい! とっても美味しいわ」

「麺も冷たい! ツルツルしてコシがある。麺ってこんなに美味しかったんだ」


 想定していたよりも集まった店主達に評判が良かった。ミミのご主人と双子の娘も飛び跳ねて喜んでいた。


「次のラーメンは冷や汁ラーメンです」


 これは富多師匠が関わったお店の”ねこまんま味噌ラーメン”を冷たいバージョンにアレンジしたものだ。どんぶりのスープの底にスープの旨味が染み込んだご飯が沈んでいる。その上に茹で上げて冷水でしめた麺が泳いでいる。そこにナカムラ先生が好物だったと聞いた半生節を削ってトッピングした。


「これは面白い! 同じスープで麺と米を味わえるわ」

「ラーメンって何でもありですね。神レシピから解放された気分ですわ」

 

「次にいきますよ」


 麺にこだわった冷たい混ぜそばを出した。転生前、富多師匠が設計し海外のメーカーに発注して作らせた麺機の部品を使って造った「ビャン(ワン)麺」という名前の麺に衝撃を受けて新店舗で導入予定だった。その麺は転生時に唯一持っていた木製アタッシュケースの中入っていた麺の1つだ。それを品質劣化が無い魔石箱に大事に保管しておいた。


 同じ形状にするために麺を1個ずつ転写するように特殊な魔石を使って造るので手間がかかる。少し高い麺になるが、麺の付加価値でラーメンの価格を上げられるので問題ない。麺の名前はワンからニャンに変えた。


「ビャン(ニャン)麺の冷たい混ぜそばです」


 この麺の形状には絶対驚くはずだ。麺の左右は舞踏会のドレスのようにヒラヒラと舞い踊り、中央には溝が麺と同じ長さに続いている。表現を変えると昆布のような形状だ。大きな皿に数種類の生野菜を細かくカットして敷いた。そこに色々なスパイスを加えた濃厚な醤油だれと香味油をかけた。その上に茹でた麺を冷水で洗い水を切りのせた。さらに細かく刻んだ肉などの具材と10種類のナッツを砕いてのせ、最後に香り葱をトッピングして完成させた。辛味と酸味は好みでかけてもらうように別の器で提供した。


「わー ひらひら!」

「見たことがないわ、凄いインパクト!」


 予想通り食べる前に歓声が上がった。


「良く混ぜて食べてください」


 みんな面白そうに麺と具材とタレを混ぜている。最初に麺を食べた店主は直ぐに椅子から立ち上がって声を上げた。


「何、この麺の食感は! 面白い、美味しい、楽しい」


 他の店主達も続いた。


「そう、 美味しいだけでなく楽しいわ」

「このラーメンを私達の店で出せるのね。感激です!」


 大成功の試食会になった。とてもカワイイ猫人の店主達に囲まれ、美味しい!楽しい!と喜んでもらえた。これはゴウにとっても楽しい体験となった。


「私から提案がある。ゴウいいか?」

「もちろんです、カール王子どうぞ」


 つい口を滑らせてしまった。


「えっ えっー 第三王子殿下のカール様だったの」

「ご無礼でした。大変失礼しました」

「止めてくれ、ここではただのカールでいたい。カールで頼む」

「カール様失礼します、カツラを直させてください」


 2人の店主がカツラを付け直した。マヌケな猫顔だったカールの顔がカワイイ猫顔に変わった。


「それでは提案する。この猫街地区をブランド化する」


 カールはこの地区の工芸品に以前から注目していた。技術の高い職人が多く素晴らしい品を作っているが、王族・貴族の特別注文、高級店への卸や下請けの仕事ばかりで、素晴らしい商品でも猫街の職人の技だと知られていない。有名なのはカワイイ猫人が暮らしている街、ニャンニャン街という呼び方だけだ。


 これではブランド化には弱いと思っていた。しかし、今日試食したラーメンを話題にして観光客を呼び込み、工芸品や街の魅力をアピール出来ると感じた。この街の職人の技をアピールすると共に、猫街職人ブランドのマークを作る。具体的には猫街区の区長が開く役員会議で検討することに決まった。


「ゴウ、私も提案があります!」

「珍しいな、サクラが提案とは」

「お店に来たお客様に挨拶する言葉にニャーを付けるのです」

「こら、サクラ、ここで冗談はダメよ」

「いや、ありかも知れない」


 猫街に入った瞬間、この街独特の雰囲気に気持ちが安らぐ。言葉でうまく表現出来ないが温かく優しい感じだ。街を行き交うカワイイ猫人は、おはよう! こんにちは! こんばんは! と優しく声をかけてくれる。子供の猫人の語尾にニャがつく挨拶も可愛くて微笑ましい。クドクならない程度、方言のように使うと、観光客にいかにも猫街に来たという雰囲気を味わってもらえるかも知れない。


「それに加えて、いらっしゃいませの挨拶を止めるのはどうでしょうか?」


 転生前に有名なテーマパークの挨拶の言葉、そのコンセプトの話を聞いたことがあった。それはお客様(ゲスト)を自宅に招くイメージだと。そこに「いらっしゃい」は他人行儀で野暮だと。お店で使うとすると、例えば、「こんにちは! 今日は暑かったニャ、こちらの席にどうぞ」など。猫街に合った言葉使いになると面白いが…


「すみません、思いつきで話してしまいました。これは気にしないでください」


「猫街会議に使うサンプル、出来ました!」


 ミミの夫が猫街のシンボルマークの原案を刺繍に仕上げて持ってきた。カール王子の話を聞いてデザインが頭に浮かび隣の工房で仕上げた。カワイイだけではなく気品あふれる白い毛の猫人顔だ。短い時間にこれを作ったのは凄い早業だ。


「あっ ミミだ!」


 よく見ると可愛く品のある奥様のミミそっくりだ。みんながそっくりと言った。 


「似ていますか?」

「そっくり、でもとても素敵なマーク」

「カール様、夫のミックは刺繍の職人です」

「知っている。王家の紋章の刺繍は御用商人にミックさんの工房を指名してお願いしているから」

「ありがとうございます。大変光栄です」


□□□□□□


 猫人の子供誘拐事件は世界的な大問題に発展した。子供の誘拐事件はここ十数年の間、世界中どこでも起きなかった。それは禁忌の大罪とされているからだ。子供への虐待や誘拐は国を亡ぼすと言われている。戦争中でも、敵の子供でも、守るのがこの世界のルールだ。


 世界3大国家のオーパス共和国・メルガ王国・ガーレル帝国が連名で今回の誘拐事件への対処策を発表した。その内容は〔捕まった犯人を指揮した国や組織が見つかった場合は、我々3か国が共同で罰を与える。該当者は再発防止の見せしめにされると覚悟せよ〕と強い文言だ。


 さらに、《新文化交流ビエンナーレ》参加国の総意により採択されたグルンジ王国の食文化を守る為の宣言[何者かによりこの国の食文化を壊そうとするような不穏な動きが発覚した場合、参加国がその排除に協力する]に批准した国が初めて動き出す事態となった。


□□□□□□


 トラキール帝国、大城皇帝会議室


「最悪だな…」


 誘拐の罪で捕らえられたニヤケ顔の男とその取り巻きの男達は、トラキール帝国から資金と武器の提供を受けている小さな島の王が派遣した軍人だ。ドラクダール将軍の協力要請を受けた形で観光客として入国しラグールで活動していた。


 ガイロ王国連邦は、ジョン・ガーゴ王の島、ローク・イブロ王の島、ブン・ロイダ王の島、この3つの島で構成されていて紛争が絶えない。この中のブン・ロイダ王から連邦の利権を独占する為の工作資金増額の要求が来ていた。それに応えてやった。


「その見返りが、変態クズ野郎の派遣とは酷いな。ドラクダール、全責任を取らせろ」

「大変申し訳ございませんでした。すでにブン王から世界にハヤブサ便を出させました」

 

 その内容は、

〘 我が王国の軍人が休暇を取って観光に行った先で子供3人を誘拐するという禁忌を犯した。国王としての指導力の無さが最悪の事態を招いてしまった。国王として責任をとる。その責任とは、ロイダ王国を廃国とし、島(国土)・王族の財産・王国民を連邦の2つの王国に委ねる 〙

と書いてある。つまり国を潰すと。


「将軍、これで3大国家や宣言の批准国が納得するのか、私は不安ですわ」

「B、今回は謝る。俺が甘かった! ただトラキール帝国やSSCの名前は出ないはずだ」


「うーん、Aはどう考える?」

「皇帝陛下、私もずっと考察しておりました」


 おそらく今回の件は、我々の関与があったかも知れないと大国側も感じているだろう。しかし、プライドの高い我々が子供に対する禁忌を侵すとは考えづらいと思う。もしも我々の関与があったと確定した場合、制裁しようとすると大きな戦いに発展する可能性がある。トラキール帝国と属国を含めた強大な軍事力、莫大な資金力に対して、簡単に動けないだろうと考える。


 そんな中で小さいとはいえ、国を潰して矛先を納める動きは渡りに船のはずだ。上げた拳を降ろしやすい。


「ふむ、ワシも同じ考えだ。しかし、今回の件を口実にしてトラキール帝国を潰そうとする可能性はゼロではない。油断せずにしばらくは緊急事態に備えよ、ドラクダール!」


「はっ! 万全の体制を整えます」


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