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天才ラーメン王、全てを失い異世界で無双する  作者: とみた美味いろは


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カール王子が覚醒した?

《天海聖暦770年 異世界開店日より90日後》


「ゴウよ、体調はどうじゃ」

「王様、ご心配おかけいたしました。すっかり良くなりました」


 ゴウはラーメン戦争対策の経過報告の為に登城した。城は何度来ても緊張する。計画は順調に進んでいることを説明して、ベルナード国王にもアーサー第一王子にも納得してもらった。


「サクラ、またムチャをしおって、肝を冷やしたぞ」


 今回の件でトラキール帝国とSSCの本気度がさらに強まったと分かった。敵に隙を見せない為に街中に軍隊を配備する。鎧は付けず、表向きは観光客の安全を守る為の《街中安全見守隊》のバッチを付けた軍人を配置する。それとは別に私服の軍人と女性の諜報員も街中に溶け込むように配置をして監視を続ける。これまでの護衛兵とは規模が違う。そのまとめ役にベンが指名された。


「ベン、悪いな、しばらく魚屋の仕事は出来ないな。おまえしかいないのじゃ」

「はい、お任せください」


「カールよ、最近はゴウの仕事場に入浸りのようだが、何か収穫はあったのか?」


「はは、はい、とても良い勉強になっています。毎日が貴重な経験です」


 マリーとサクラが同時に「しゃべった」と呟いた。

 カールが兄のアーサーの前で言葉を発したのはいつ以来だろうか? アーサーも国王も驚いた。


「これはゴウに感謝じゃ」

 

 アーサーより外国に貿易の研修で留学中のアンリ第二王子からの便りの報告があった。


「アンリから手紙が届きました」


 グルメ観光客が落としていく金が我が王国の収入源の柱である。もう一つの柱になるのが農作物とその加工品だと確信した。魔石を利用した倉庫には何年も品質が劣化しない備蓄農産物が大量に保管されてある。国民も家庭内で緊急時対策用の備蓄をしているので、過去に起きた食糧不足で国民が飢えるような事態が今後起こるとは想像出来ない。

 農産物の輸出を本格的に考えても良い時期だ。留学先で各国から学びに来ているメンバーから得た情報から輸入したい国はかなり多いことが分かった。後はグルンジ王国内でしっかりとした体制作りをするだけだと力強い文章で書いてあった。


「他国の成功例も書いてある、アンリもよく勉強している」


 毎年、有力な貴族を競わせて輸出の権利を与える貴族を決める。基本的には利幅が大きい提案をした方が選ばれる。選ばれた貴族は、農業者、加工業者、卸流通業者、荷造業者、貿易船業者など全てに関わる権利が与えられることで、効率の良い貿易体制を確立している。


「あ、あの~ 意見を言ってもよろしいでしょうか?」

「言ってみよ、カール」

「その方式を採用するのは慎重にされた方が良いと思います」


 先日、カールはブラック・ブックスのダミアンから「世界の経済裏指標」という本を見せてもらった。この本は3年に1度出版される秘密調査隊による専門書だ。しかし今年の出版を最後に廃刊になった。理由は他国に知られたくない国の経済事情を公表されるからだ。各国で秘密調査隊員が情報の不正取得容疑で逮捕され出版が困難になった。


 食糧貿易に興味を持っていたカールは農産物の輸出に成功していた小国のページを見た。3年前には大成功したと書いてあったが、今年は、農産物の品質が落ちたことや農業従事者の離脱や廃業などで生産性が低下したことなどが書いてあり不思議に思っていた。その解答を先日のMS会の試食に参加した経験で得た。


「おそらくそのやり方では失敗すると思います」


 独占権を得る為、関わる業者への締め付け合戦にならないか? 独占権を得た貴族と国だけが儲かるようにならないか? 多くの疲弊する者の上に成り立つ体制は持続しない。救世主シマモト様が作り上げた、市民にも貴族にも王族にも、みんなに優しい農業体制を壊してしまう危険がある。いつの間にかカールは熱く語っていた。


「カール、優秀な弟、お前がそんな発言をするのをずっとずっと待っていた」


「よく言った! 涙が出たぞ。お前がこんなに成長していたとは」


「国政に関わることなどは怖くて、私には父上や兄上のように発言出来ないと思っていました。しかし、ゴウの仕事を見ていて発言する勇気が湧きました」


「ラーメンと国政の話がどう繋がるのか興味深い。ゴウ、どうなっているのじゃ」


「いや~ 私は何も… カール王子が優秀なだけです」


......そうか、思い当たるとすればアレか! 面接の話だ。カールに富多師匠の体験談を話した時だ。......


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 師匠が東京都内の駅のホームで海外の男性とばったり出会った。「富多さんのお陰で日本の一流企業に就職出来ました。本当にありがとうございました」といきなり言われて驚いた。何もしていないと戸惑っていると説明してくれた。師匠が海外のある展示会を見に行った会場内で、日本語を勉強している学生さんが通訳のアルバイトをしていた。展示会の打ち上げをした飲食店にその学生さんも同席していた。その席で、興味があるからと麺やラーメン店の質問を数多く受けた。それに対して丁寧に答えたのは覚えていた。それがこの男性だ。  


 その後、この男性は日本の一流企業の入社試験に挑戦した。試験と一次面接の通過後に最終試験となる二次面接に臨んだ。面接官からの質問はラーメン店経営に関するものだった。富多さんから聞いたことを話して面接は終了した。後に合格採用となり、面接官を担当された方から「今まで面接で同じ質問をしたがあなたのような回答をした人はいなかったので採用した」と言われたそうだ。


 この時は、どうして一流企業が小さなラーメン店の経営の質問をするのかと不思議に思ったが、後で、さすがは大企業と思い直した。大きなプロジェクトや大企業の戦略の話を新人に聞いても本人の能力が分かるだろうか? ラーメン店という小さな会社を想定した質問をした方が個人の資質を判断しやすいのではないか。小さくても商売の本質は変わらないのではないかと。

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 国政のことに意見が言えない、特に優秀な兄の前では縮こまってしまうと悩んでいたカールに、この面接の話をし、あまり気負いせずともいいのではとアドバイスをしていた。


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