ラーメン戦争、準備開始
《天海聖暦770年 異世界開店日より40日後》
□グルンジ王城 特別室□
ベルナード国王と約束したラーメン戦争に勝つ戦略を提示する日が来た。1年前に謁見した時と同じ顔触れで会議が始まった。
「ベルナード国王陛下、大変お待たせいたしました。戦略が固まりました」
「おー! どんな戦略じゃ、ゴウ、早く聞きたい」
「店ごとに戦略を変える作戦です」
基本的に同じレシピで同じ味の500の店舗に、店舗ごとに違う500通りの戦略を持たせ、500種類の味のラーメンを誕生させることを考えた。日本の場合は好みのラーメンが皆それぞれ違っていて、食べる側にも個性がある。マスコミでランキングが発表されても指標の一つに過ぎない。この異世界の住民も好みがそれぞれ違うのも確認済だ。世界一美味しいラーメンが500種類あるという発想だ。
「トラキール帝国側が世界一美味しいと言っても、どのラーメンと比較するのか。そこを突きます」
「500の戦略、500の味のラーメンじゃと、短期間にそんな事が可能なのか?」
「さすがにこれから1年で500は無理ですが、100は可能です」
「100でも凄いぞ、具体的にどうするのじゃ」
1年かけてグルンジ王国中の食材を調べた。正直こんなに素晴らしいとは思わなかった。野菜の持つ大地の力というべき旨味と香り、その大地の草で飼育した獣類の肉の圧倒的な旨味とコク、緑水で養殖した魚介類の個性的な旨味、3人の先人転生者の先生が開発した絶品の調味料類。これらがあれば、どんなタイプのラーメンでも作れる自信がある。
「お願いがあります。一等地から離れた庶民が経営しているラーメン店から至急アンケートを取って下さい。最高の立地で営業されている王族・貴族の皆様が経営しているお店は後回しで構いません 内容はコレです」
「父上、口を出してもよろしいでしょうか」
「かまわんぞ、アーサー」
「私はずっと神レシピ堅固派だった。500もの新しいラーメンなど想像すら出来ない。アンケートなど取って一体何になる?」
「アンケートがそれぞれのお店の戦略作りのヒントになります。私を信じて下さい」
「信じている。お忍びでゴウラーメンを食べて驚いた。美味しくて身体が震えた」
「ありがとうございます」
「アンケートは極秘扱いとし、各ラーメン店舗に届け、至急回収させる」
「そのアンケートを見て、今年、新ラーメンに取り組んでいただく店主を選定します」
☆アンケートの内容
1. 何のためにラーメン店をやっているのか…
2. 経営者…オーナー店主か雇われ店主か
3. 家族構成(親戚を含む)…
4. 働き人…家族 使用人 他
5. 店舗の立地…
6. 店の規模…テーブル席数 カンター席数 厨房の広さ その他
7. 売上目標…成功とは?
7. 経営の収支…
8. 親戚知人…農業、牧場、養殖等の関係者の有無
9. 好みの食べ物…
10. その他、悩み、問題点
※ このアンケートの内容は極秘扱いとする
アンケートに回答した事も極秘である
※ 店の助けとなる対策を立てる為のものである
嘘偽りはご法度である
☆グルンジ王国 アーサー・グルム第一王子
「ゴウ、アンケートの件は早急に手配する。アーサー、3日で回収させろ」
「はい」
「次はワシからの報告じゃ」
キンブタというラーメン店でサクラが捕らえた賊の自白から、違法に移住民として入国し潜伏先が掴めなかったSSCのメンバーを芋ずる式に捕らえる事が出来た。その人数はすでに150人を超えている。20ヶ所程のアジトも潰した。最近捕まえた賊の中に、トラキール帝国軍所属のラーメン実行部隊長が混じっていた。
その実行部隊長から聞き出した情報によると、「世界一美味しいラーメン宣言」を前倒しするらしい。ニュー・エル・ドラード計画地の街が出来るまで数年かかるが、宣言だけは先行させる。理由は、逮捕者からグルンジ王国側に情報が漏れた可能性があると考えているからだ。
「奴ら、1年以内に世界一美味しいラーメン宣言をするらしいのじゃ」
「2,3年後と思っていましたが、早くなりましたね」
「あたいもベンと同じくまだ時間があると思っておりました」
「だからゴウ、よろしく頼むぞ。協力は何でもする、何でも言うのじゃ」
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■トラキール帝国、大城皇帝会議室■
「ハハハハ! 楽しくなってきたぞ、ラーメン戦争だ。もうすぐグルンジ王国へ宣戦布告だ」
トラキール帝国が表立って動き出す時が近づいていた。ベルゴス・ダークリス皇帝が、マリオラ皇妃と娘のイサドラ皇女に、「観光に行ったグルンジ王国の王都ラグールで食べたラーメンが美味しかった」と何度も聞かされ、娘に「自分の国でも食べたい」と言われたことが発端となった。ベルゴス皇帝もお忍びでラグールに滞在し、ラーメンをはじめグルメ三昧を楽しんだ。
…楽しかった・美味しかった、けれど悔しい、腹が立った。我が帝国と比べるとちっぽけな小国に、何故あんなに美味しいものが沢山あるのか。見た目が単純なラーメンでさえ美味しくて世界中から観光客が食べに来ていた。それならグルメ都市の地位を我が奪ってやる! 莫大な資金力と強大な軍事力で何でも他国から奪ってきた。今度も簡単だ…
「報告があります」
悪徳集団と恐れられているSSC(Shadow Spider Coven) の第1席最高幹部エース・スパイダー(通称A)と、第2席最高幹部のビーラ・シャドウ(通称B)が同時に手を挙げた。スパイ組織の為に、組織員の呼び名は記号や数字が使われる。
「どうしたA、話せ」
「最近ラグールの治安部隊に捕まったメンバーの中に、帝国軍のラーメン実行部隊長がいたと報告が届きました。彼からこちらの情報が漏れたと思います」
「どういうことだ! ドラクダール将軍」
トラキール帝国軍最高司令官ドラクダール・バルカル将軍は、全身真っ黒の服装をしたSSCの最高幹部の2人を睨みつけながら…
「皇帝陛下、すみません。あのガースをラーメン実行部隊長にしたのは、剣術の腕前は普通ですが、とにかく逃げること・隠れることは誰よりも優れていて捕まる確率が一番低い兵士と考えたからです」
「でも、捕まっては元も子もないですわね」
「酷いことを言うな。SSCの準幹部で凄腕の剣士と言っていたハンターZも去年簡単に捕まったぞ」
「Zは、トラキール帝国とSSCの関係は一切知らないはずだわ。情報は洩れないわ」
「喧嘩は止せ、ここまで来れば少しぐらい情報が漏れても大丈夫だ。そうだ、Bも報告があったのか?」
「あっ、皇帝陛下、大事な報告がありますわ」
気になる人物を1人見つけた。ゴウという名の男だ。最近開店したお店のラーメンの味がユニークで美味しく、神レシピの味と違うと話題になった。男の素性を調べたら、辺境地から叔父の住むラグールに引っ越して来た。全くの田舎者で都会の事も一般常識も分からない。当然神レシピも知らない。たまたま作ったラーメンが旨かったのだろう。そんな報告が届いた。
「出る釘は打て! そのゴウという男を誘拐しろ。才能が無ければ海に投げ捨てろ。誘拐が難しい場合は監視を続け、我らの邪魔になりそうだと判断したら抹殺しても良い。ただ、いかにも暗殺されたようにはするな。事故を装え、いいな」
「はい、畏まりました」
その男の背後に新しい救世主がいる可能性も考察された。もし救世主を見つけたら、手段を択ばず即抹殺するようにと指示が出された。
「ドラクダール、船の準備は進んでいるか」
船の準備とは、トラキール帝国が所有している中でも一番大きな戦艦の改装の事だ。戦艦の甲板上に「世界一美味しいラーメン」を提供する複数の厨房と客席を設置し、その上部に大屋根を造るという大改装工事が進められている。
改装が完成したら、世界中の王族・貴族に「世界一美味しいラーメンの旅」の招待状を送る。旅の内容は、招待した客を乗せた戦艦をラグール港の沖合に停泊させ、そこで「世界一美味しいラーメン」の誕生宣言をする。合わせて、新グルメ都市「ニュー・エル・ドラード」創建の発表をする。セレモニー後に、ラーメンを振る舞い、船上パーティーに移る。
その後は小舟でラグーンの港に入り、 こちらで手配した高級宿に泊まってもらう。ここまでの費用の全てをトラキール帝国が持つ。翌日、ラグール市内のラーメンを食べてもらい、戦艦で食べたラーメンが世界一だと感じさせる戦略だ。
「順調に進んでいますが、戦艦の改装なので時間がかかります。完成まで後400日は必要かと思います」
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□グルンジ王城 特別室□
アーサー第一王子はかなり焦っていた。トラキール帝国が仕掛けて来る恐ろしいラーメン戦争の戦略が明らかになったからだ。少し青ざめた顔で話し出した。
「トラキール帝国の誇る大型戦艦、3艦がラグール港の沖合に来る!」
自白させた内容を聞いた一同の顔も青ざめた。それは敵対国を攻め滅ぼした悪名高き戦艦が来るからだ。艦上で世界一美味しいラーメン宣言をする為のイベントは、ラーメンの名を借りたグルンジ王国への宣戦布告に思えた。
「宣言用の1艦に加えて2艦も来るとは恐ろしい、来ないで欲しい。でも無理ですわ」
「そうじゃなぁ、ケイ、奴らは王族や貴族を招待するので護衛の為だと言い張るだろう」
「父上、続きを話します」
宣言後10日前後は沖合での停泊を続け、グルンジ王国民にも改装した戦艦への乗艦を許可し、艦上のラーメンとラグールの神ラーメンと食べ比べをさせ国民のプライドも奪い取る計画だ。つまり、既に神ラーメンより旨いラーメンを完成させている可能性が高い。
「あたいには、スケールが大きすぎて驚くばかりです。プレッシャーをかけたく無かったけれど… ゴウ、これは責任重大だわ!」
「ゴウ、何か言いたげじゃなぁ? 申せ」
「先ほどのアンケートの方針を変えます。アンケートを王族貴族の店を含め全てのラーメン店から至急集めて下さい」
「それはまたどうしてじゃ? 500もある全店では対策が間に合わんではないか」
海外からの一級の招待客が食べに来るラーメン店は、3大グルメ・ストリートや一等立地の店の可能性が高い。これらの店はグルンジ王国の王族貴族が運営している。その店にも対策を立てないと意味がない。もう時間が足りないとは言わない。
たしか日本で十数年前に起きた大震災の前月頃の富多師匠の仕事ぶりを聞いたことがある。たった14日間で、ラーメン店の新規開店と改装開店、他の外食から参入開店、メニューの全面改変のリニューアル開店など17店舗分を1人で成功させていた。俺もやらなければ...
「やります、間に合わせます。私に考えがあります」
「ふむ、任せたぞ」
「それから、お願いがあります」
「何でも申せ」
「会談の席を設けていただきたい方がおります」
美食評論家のカルロ・マルタン公爵と『ジャポ』編集長のエンリケ・ロベールの2人を指名した。
「分かった、2人は犬猿の仲の食文化堅固協会長と食文化未来研究会長じゃな」
「どちらも食の評論やガイド本の関係者で、お2人に大切な協力依頼をします」
2人には、国王名で〔会談で会う男の要請を全て受けなさい〕と指令書が出されることになった。
「それから、ゴウの安全対策じゃ」
今まで見たことがない国王の真剣な表情に、アーサーも気を引き締めて話し出した。
「これもトラキール帝国ラーメン実行部隊長の自白から得た情報だ」
奴は、すでにゴウの存在を帝国側に報告していた。ゴウの誘拐指令がSSCに出されるのは間違いない。誘拐を阻止しても暗殺される危険があると予想していた。また、帝国側が一番恐れ邪魔な存在の救世主を見つけたら必ず暗殺命令が出る。奴は極秘情報を知って捕まった自分にも暗殺命令が出るので保護してくれと泣きついている。
「ベルゴス皇帝は、冷酷非道の悪名が高い。そしてかなりの切れ者で厄介じゃ」
「父上、トラキール帝国は今や世界一の金持ち国家です。金の保有量では世界3大国家を大きく超えています。さらに、また新たに巨大な金鉱脈が2つ発見されました。金の力で非道を繰り返していて腹が立ちます。なんとしても我々の切り札ゴウを守ります」
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この異世界は、3つの巨大国家によって世界の平和バランスが保たれている。しかし近年、中規模国家のトラキール帝国が台頭して平和バランスが崩れ出した。
それは、ベルゴス・ダークリス皇帝の悪魔の采配が原因だ。SSCを使い中小規模国家の詳しい国内情報を集めさせた。その情報を元に国内情勢が不安定な国に目を付ける。宗教紛争が起きている皇国、王族と市民改革派の紛争で体制が崩壊しそうな王国、兄弟や親戚で王位争いが絶えない王国、民族紛争が絶えない共和国。このような国の紛争当事者の優勢な方に武器を売り、条件付きで金を渡す。
その当事者は国の統治権を得るが紛争の火種は消えない。それは敵対している当事者にも、同じく武器を売り、条件付きで金を渡しているからだ。国の統治権を得た者がベルゴス皇帝の意にそぐわないと支援のバランスを変えて政権を変えさせる。
これが悪魔の采配である。
この罠に嵌った国家は、政情不安なままトラキール帝国の属国となるか、国家ごと帝国に明け渡す選択をするしか道は無い。こうして属国や乗っ取った国家の数が増え続けている。トラキール帝国の勢力拡大が止まらない。
******
「ゴウ、細心の注意を払うのじゃ。お主が消えたらラーメン戦争は敗北じゃ」
今まで通り、辺境地から来たベンの親戚の田舎者で押し通す。絶対に転生者や救世主だと知られてはいけない。ゴウが会談予定のカルロ公爵とエンリケ編集長には、何にも染められていない天才ラーメン職人で、国王と第一王子のお墨付きであるとして素性は隠し通す。
「それからサクラ、お前の強さはすでにSSCの輩に知れ渡っている。お前がゴウの近くにいれば無闇には襲って来ないだろう」
「しっかりゴウを守ります」
「しかしじゃ、最初に邪魔なお前を襲う可能性もあるから気を付けるのじゃ!」
「はい」
「最後にゴウよ、約束していたヤマモト・ナギサの情報を知らせる準備が出来ているぞ」
「はっはい、ありがとうございます」
「今直ぐでも良いぞ」
…しばらく考えて
「今はグルンジ王国の緊急事態です。情報を聞いて自分の心が乱れるのが心配です。ラーメンの仕事に集中したいので後にしてください」
「うむ、分かった」
今日の会議で一言も話していないのは2人だ。1人はカール第三王子だ。兄のアーサー第一王子と同じ場にいると、極度に緊張して何も話せなくなる。兄には小さい時から助けてもらってばかりだ。尊敬する自慢の兄であったが、成長するにつれ尊敬する気持が強すぎて緊張する相手に変わってしまった。
もう1人はマリーである。ついにこの日が来てしまったと朝から気が重かった。ヤマモト・ナギサの情報を後にするとゴウが言ったとき、テーブルの下でサクラがマリーの手を握って来た。手の温もりにマリーの想いが溢れた。
…この1年間ずっとゴウと行動を共にしてきた。最初から気づいていたが、今ははっきりと自覚している。ゴウが好きだ、どうしようもないほど。その気持ちはサクラも同じだと思う。しかし、あの人を会わせなくてはいけない。おそらくゴウも私やサクラに好意を持ってくれていると思う。でも彼女に会わせてしまったら私の恋は散る。それが少しだけ先に延びたことに安堵した…
「あら、マリー、何泣いているのさ」
「違うわ、ケイ、感動したの。ゴウのラーメンに取り組む覚悟に」
手を握っているサクラの顔を見たら涙ぐんでいた。2人で少し微笑んだ。
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■トラキール帝国、大城皇帝会議室■
「来たか、イサドラ、ここに来い」
「はい、お父様」
「マリオラ、お前もこっちだ」
「会議は終わりましたの」
娘のイサドラ・ダークリス皇女と妃のマリオラ・ダークリスが会議室に入って来た。
「マリオラ様、イサドラ様、相変わらずお綺麗でまたお会いできて光栄でございます」
「エース、いやA、お世辞はいらないわ!」
「今を時めくベルゴス皇帝陛下の唯一の弱点、そのお2人がご登場ですわね」
「相変わらず、B、ビーラは口が悪いわね」
ドラクダール将軍から2人に「世界一美味しいラーメン」の誕生宣言イベントの説明があった。
「イサドラ、感謝しておるぞ」
ベルゴス皇帝は、近年はずっと退屈していた。部下に「皇帝は悪魔の采配ばかり」と揶揄されているのは知っていた。弱小国を己の策略で貶めて配下に収めてきた。多額の賄賂を積めば平気で自国を裏切る王族・貴族・役人・宗教家・商人などを沢山見て来た。つまらない、つまらない、ワシの隷属国家がいくら増えてもつまらない。
金は湯水が湧くように採れる。世界最高と謳われるオーミスト帝国の歴代刀職人の名刀のコレクションも手に入れた。宝飾類も山のように買った。金で手に入らなければ武力行使も厭わなかった。とにかくもう欲しい物が無くなった。ドラクダール将軍に命じて、ユニークな軍隊を幾つも組織させた。超美人部隊、超美男部隊、異人族・獣人族部隊、筋肉女性部隊、筋肉男性部隊、暗記部隊、大食い部隊…、冗談のつもりだったが、それぞれがスパイ活動に成果を上げたのは皮肉なものだ。
そんな退屈な思いでいる中で、イサドラからラーメンの話を聞き、ラグールにお忍びで食べに行った。それまでグルメに興味も無かった。それは美味しい物を食べたことが無かったからだ。自分の帝国に無いものを見つけたら、最初の悔しさから奪い取る楽しみに変わった。
「今回は、みんなで堂々とラグールに乗り込むぞ」
「お父様、嬉しい! お忍びでは物足りなかったの」
「ラーメン戦争を仕掛けるが、表向きは戦争ではないからな」
「そうですわね、大食い部隊を貸してね」
「マリオラ、大食い部隊を何に使うのだ」
「色々な美味しい物を味見したいので、少し食べたら彼らに全部食べてもらうの。少し食べただけで、食べ残して歩いたら品がないでしょう」
「そうだな、トラキール帝国の皇妃や皇女が嫌がらせをしていると思われるのは心外だからな。以外なところで大食い部隊は役に立つな、ハハハ ハハハ!」
ラーメンを足掛かりに、グルンジ王国のグルメの地位を崩壊させれば、あの綺麗な王都ラグールもトラキール帝国のものになる。その日が来るのが待ち遠しい。ベルゴスは久しぶりに大声で笑った。
「我々SSCの総力を挙げてご協力します」
「成功の暁には…あの約束をお忘れなく。お願いしますわ」
長年の貢献が認められ、ラーメン戦争に勝利したらベルゴス皇帝から褒美が約束されていた。乗っ取りに成功した島国が欲しいとSSC側が希望した。自由に建国させることが決まっている。世界中で潜伏生活をしていた組織員達の自国を持つという夢がついに実現する。
帝国に乗っ取られたその島国には2つの民族が生活している。アイナ族が暮らしている島の東側はアイナ公国。リュウ族が暮らしている西側はリュウ公国だ。どちらも温厚な民族で平和な暮らしをしていた。腕の良い職人も多く、工芸品の輸出も盛んだ。国民の教育レベルもかなり高い。自然も豊で食糧も豊富だ。この平和な島国にSSCのエースとビーラが目を付け、ベルゴス皇帝に乗っ取りを進言し、そして実行した。
SSCのスパイ活動で民族間の感情が最悪になったタイミングで双方に武器を渡し戦争寸前の状態に追い込んだ。そこにヒーローを誕生させた。両民族双方の情報の間違いを指摘して無血で紛争を終結させた。ヒーローと持て囃された勢いに乗って、二つの公国を統一して新たに民主国家として再建する必要性を訴えさせた。理想国家の建国をする為に国民みんなで勉強と努力をしようと力説した。
学校教育も徹底した。考える試験より覚える試験で優劣をつけるカリキュラムを重視させた。ヒーローの他、報道官、広報活動家、選挙管理人、その他すべてトラキール帝国側が陰でコントロールしている。もうそろそろ建国をするタイミングだ。世界の為、国家の為、国民の為、周りの皆の為に尽力出来る理想の国民の為の理想の国家を誕生させる。SSCの理想の乗っ取り国家となる。
どんな上手い話で多額の税金、年貢を納めさせるか、もはや考えるまでもない。何々の為という単純な名目で済みそうだ。納めさせた金をどう搾取しようが平気になるだろう。もはやあの島国の国民をコントロールするのは豚を飼育するより簡単だ。国民はSSCの忠実な集金マシーンとなるだろう。すでに組織員を少しずつ移住させている。決まっていないのは新しい国名だけだ。
「お前たちは最初からあの島国を狙っておったのだな」
「いえ、途中からです。乗っ取りに気が付かない国民はSSCには美味しいです」
「ハハハハ ハハハハ! 悪いヤツだ。約束は守る」
「ありがとうございます」
「皇帝陛下、今日は良くお笑いになりますわね。ありがとうございます」
「国家乗っ取りの新しい形を実践してお見せしますわ」




