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天才ラーメン王、全てを失い異世界で無双する  作者: とみた美味いろは


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救世主 マユミ・キョウカの活躍

《天海聖暦690年》


「本当に光栄ですわ! 興奮し過ぎて昨夜は眠れませんでしたの。お2人の救世主様と調査にご一緒できるなんて信じられませんわ」


 興奮して馬車の中で声を出しているのは、ルーク・サリバン公爵夫人のベロニカ・サリバンだ。夫のルークは、引っ込み思案で外にはあまり出ず、屋敷内で読書や調べものをして一日を過ごしている。でもその知識は王国一と言われ、たまに議会に進言する内容の的確さに皆が驚き納得する。


 その議会を含め表舞台にはベロニカが公爵夫人として代理で出ている。夫人の行動力と親しみやすさから、マダム・サリバンと呼ばれ、今では「マダム」と言えば、誰でもサリバン公爵夫人のことだと認識している。


 今回の調査団の費用はサリバン公爵家が用意した。シマモトは、マユミ・キョウカに案内したい場所と現地で相談したい事があるので同行した。300名の調査団を組織して最初の目的地に向かっている。


「マダム、はしゃぎすぎですよ。今日はもう何度も同じ話をしていますよ」


 この男は薄緑色の髪が美しい青年で、マダムのお気に入りの従者だ。


「ジローこそ、お黙り」


 なんか微笑ましい。主従関係といっても、いつもこんな感じなのだろうと思った。


「マダムは、転生前の私とそっくりのような気がしますわ。調査団を作るのに奮闘されていたお姿を見て感じたわ。行動力があって物事を前へ前と進める能力があるわね。私の場合は強引過ぎると先輩方に怒られていましたが…」


 少し眠たくなったシマモトは丁度良いタイミングと思って話した。


「私こそ、2人の美人に囲まれて調査の旅に出られるなんて光栄ですよ。まだ目的地まで長いので、少し眠って行きましょう」


…………


 最初の目的地に着いたシマモトは興奮していた。


「何度ここに来ても感動する。ここは、この国の要だ。そして奇跡の場所だ!」


 この場所には、緑色の魔石が混じった岩場の中から緑色の水が流れ出て溜まる池が沢山ある。その池から流れ出した水は群生している植物に自然に注がれていた。一番濃い緑の水が注がれた植物は大きく育っているが枯れていた。反対に、一番薄い緑の水が注がれた植物は成長が遅い。中間の濃さの緑の水が注がれた植物は大きく元気に育っていた。

 さらによく観察すると、中間から一番薄い緑の水まで、水の色の濃さに比例して成長度合いが変化していた。濃い色の池には魚類は生息していないが、薄い色の方には生息していた。


「私はこの場所で、植物を育てるのに最適な緑の水の濃さを植物の種類ごとに研究する事を思いついた。ガブリエル公爵の魔道技術の助けもあって研究は大成功。しかも、その植物に最適な緑の水を与えると、土壌も最適に改良される。土壌おたくの私は楽しくて仕方なかった。この景色を見なければ、この国の農業はここまで発展しなかった。是非、ここをマユミ先生に見せたかった」


「シマモト先生、ありがとうございます。感動しましたわ。凄くやる気が出てきました」


 シマモトは、家畜もいないのに餌となる牧草も育ててみた。もしも、マユミ先生が転生してきたらと淡い期待をしていたのだ。緑の水の濃さを調整して一番育ちが良い牧草を用意した。でも、植物が育つには良いが、それが家畜に良い餌かは分からない。


「ここから先はマユミ先生の出番ですね。私の方はなんでも協力します。それでは次の目的地に向かいましょう」


 調査団は、移動途中、シマモトの要請で建てた第一植物研究所に立ち寄った。建物内には幹部達10名が宿泊し、他の隊員はテントを張った。翌日の午後に今回のメインの目的地に着いた。南北に広がる大草原とそれに平行して西側に深い林がある。この草原に『マユミ・キョウカ獣調査隊ベースキャンプ』の看板が立てられた。


 ここをベースキャンプ地に選んだのは、草原の西側の林の中に獣類の住処があるからだ。草原に草を食べに出て来る目撃情報が一番多い場所と報告を受けている。隊員の中でこの地域に一番詳しいロクという男から経験談と注意事項を聞いた。


「マユミ様、ここの獣のことは事前の説明でご存じだと思いますが、私からもう一度お話しさせていただきます。多くの種類の豚が生息しています。どの豚もとても狂暴で私の仲間は何人も襲われ怪我をしています。大熊や狼のような豚、特大サイズの太った豚から小豚までどの種類も狂暴です」


さらに話は続いた。


「私は滅多に見つからない珍しいミニ豚と遭遇しました。見た目は愛くるしく可愛いのですが一番狂暴な奴でした。捕まえようとした瞬間に剣を持った方の腕を嚙まれました。その痛さに落とした剣が足に刺さり大怪我をしました。とにかく危険です。弓矢部隊を編成してありますがくれぐれもご注意ください」


 このロクという男は、10年前の食糧危機が深刻な時期に獣狩りをして肉を得ようと仲間たちと豚狩りに来たが、全員怪我をして狩りを断念したという苦い経験をしていた。


「弓矢を放つのはいいけれど、絶対に殺さないこと。それだけはお願いね」


「はい! 痺れ薬を塗った矢です。殺さないように徹底させます」


 ベースキャンプ地に丈夫な木材の柵で幾つもの囲いを作らせた。マダムとシマモトをキャンプに残し、調査を開始した。弓矢を構えた隊員に囲まれながら林付近の草原を探索していると、さっそく豚が現れた。


 林の中から突然現れたと思ったら、90度のターンをしてこちらに向かって猛スピードで突進して来た。豚というより熊だ、しかも巨大なグリズリーのような大熊豚だ。大熊豚の前にはミニ豚が走っていた。おそらく追われていたのだろう。

 

 隊員は一斉に大熊豚とミニ豚に向けて矢を放った。ミニ豚は動きが素早くて姿を見失ったが、大熊豚には数本の矢が刺さり倒れた。ホッとしたのも一瞬で、皆が青ざめる事態が起きた。


「マユミ様、危ない!」「救世主様、危ない!」


 先ほどのミニ豚が、マユミの肩に乗っていた。隊員がミニ豚を剣で刺そうとするとマユミの首筋を噛もうとする。かなり頭が良い。隊員は人質を取られているようで焦った。


「みなさん、大丈夫ですよ! 私は転生前の日本では、豚さんの恋人と云われておりましたのよ。この国の豚も同じみたいですわ。ほら、こんなに触ったり撫ぜたりしても怒らずに喜んでいるわ。私には無害ですから、この子に危害を加えようとしないでね」


 このミニ豚はピーターと名付けられマユミのペットとなるが、いつも行動を共にする相棒的存在になった。後の研究でミニ豚の寿命は120年で、この国の動物では一番長生きだと分かった。救世主のマユミといつも一緒にいるので周りの者からはピー様と呼ばれるようになる。

 

 倒れた大熊豚は、囲いの中に運ばれた。マユミの指示で矢を抜いて薬が塗られた。矢が深く刺さった影響があり治療に4日掛かった。その間毎日、大熊豚に話しかけた。


「矢を刺してゴメンね、体を痺れさせてゴメンね。お詫びに美味しい餌をあげるわ」


 この大熊豚もマユミには襲いかからなかった。どちらかと言うと懐いているようだ。皆の「仕返しに来られたら危険だ」との反対を押し切り大熊豚を囲いから解放した。


「今度来たらまた美味しい餌をあげるわ」

 

 その大熊豚は囲いから解放しても急がずにゆっくり歩いて林の中に姿を消した。翌朝になって隊員達が大声をあげた。


「マユミ様、大変です!」「あの豚が復讐に来たようです」

「12頭もいます」「みんな大きいです」 


 昨日解放した豚を筆頭にして大きな豚が集団でこちらに歩いて来た。すると昨日と同じ囲いの中に勝手に入ってしまった。


「心配ないわ。私が対応するわね。大量の牧草を運んで来て!」


 隊員が運んできた牧草を豚に与えながら


「本当に来たのね。これ美味しかったのね」


 次の日は、さらに多くの大熊豚が家族を連れて来た。

 大熊豚が餌の牧草を食べているのを興味深そうに見ていたシマモトは頷いた。


「うん。なんか感動しますね。マユミ先生だからこんな事が出来るのですね。この牧草とは別の新しいタイプの餌の開発を進めます。大熊豚を見て閃きました」


「シマモト先生ありがとうございます。私も自信が湧きました。牧場を作って肉を国内で自給自足させる目途が立ちました」


◦◦◦◦◦◦◦◦◦◦◦◦


◇その後のマユミ・キョウカの活躍◇


 シマモトより新しく提供された薬草を干し草に混ぜたエサの効果が抜群で、豚の成長が早く、放牧は大成功。特に、大熊豚・熊豚・大イノシシ・狼豚等の気性が激しく危険とされていた種類の放牧に成功した功績は大きかった。

 さらに野生の鶏類だった大ニワトリの養鶏化に成功し大量の卵や廃鶏も流通させた。マユミの得意分野の牛の家畜化、酪農も成功し、食肉類の国内自給自足体制を完成させた。


《天海聖暦695年》

  畜産業などで大きな成果を挙げたとして国王より勲章を授与され伯爵の地位も与えられた。


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