第二、第三の救世主現れる
《天海聖暦690年》
王都ラグールの漁港近くの浜辺で、眠っている2人の転生者が発見された。1人は家畜酪農研究者のマユミ・キョウカ、もう一人は海洋生物と魚類の革新的研究者のナカムラ・シュンイチだ。2人ともゴウ(竹岡一進)の高台の研究室の崩落中に意識を失っていた。
2人は王城に運ばれ、ベッドに寝かされた。その翌朝に目を覚ました。
「お目覚めになりました」「こちらもお目覚めになりました」
マユミは、何人もの見知らぬ顔が自分を見ているので慌てて飛び起きた。ナカムラは静かに上体を起こし、「ここは何処の病院ですか? 修道院付属の病院ですか?」と言ったが周りを見て違うと思った。そこに青年と白髪の男が部屋に入って来た。
「マユミ先生、ナカムラ先生、お目覚めですか、私はシマモト・ヨシオです」
「君、何をからかっているの、シマモト先生は60歳を超えているのよ」
「ここは何処です。何が何だか分からない」
「これでご自分のお顔を見て下さい。私の言う事を信じてもらえると思います」
戸惑っている2人に、手鏡が渡された。
「ひぇ~ 何、これ私? 若い女性だ、鏡に細工してないわよね」
「青年だ、言葉が出ない、詳しく説明してくれないか」
「詳しくお話します。それとこちらは大魔導士ガブリエル公爵殿です。私と2人で詳しく説明します」
「ガブリエルと申します、よろしくお願いします」
まずシマモトから説明を始めた。
「それでは、最初にお2人と私の容姿について話します」
シマモトは9年前にこの世界に転生した。その時、自分の姿を見て大変驚いた。後に私の希望でガブリエル殿が国王陛下から許可を頂き、禁忌の方法を用いて転生者のことを調べてもらった。
(禁忌の方法の悪影響で、ガブリエルの綺麗な金髪が白髪になってしまった)
1. 転生時は18歳の年齢・容姿である
2. 転生時から67年後の85歳で寿命を迎える
3. 寿命を迎えるまで、容姿・体力ともに18歳のままである
次はガブリエルが説明した。
「この国、グルンジ国民については私からお話します」
〇国民の寿命は100歳、戦争や事故以外は100歳まで生きる
〇40歳からそれ以上老けない、100歳の寿命まで40歳の容姿のまま
〇16歳で成人とする
〇教育は、小級年7~8歳 中級年9~11歳 高級年12~15歳
〇義務教育は中級年まで
シマモトが補足した。
「それと、この世界の1年480日、春夏秋冬の月がそれぞれ120日、日本の1,3倍ぐらい長い。我々が85歳で寿命を迎えても日本の日数の100歳以上生きる計算です」
この後、2人の転生者は、シャワーを浴び、王家が用意した服に着替え食事を済ませてから本格的な説明を3日間に渡り受けた。王城内で寝泊まりした2人はこの世界で生きる覚悟を決めた。一番の決め手は、先に転生されたシマモト先生がとても楽しそうで生き生きしていたこと。もう一つは若い容姿だ。
「このまま、 この若い容姿まま85歳まで変わらないとはおとぎ話以上ですわね。私、覚悟を決めましたわ」
「ずっとモテないまま還暦近くになった男が18歳の好青年の容姿にリセットされるとは奇跡ですね。やりますかこの世界で、マユミ先生!」
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5日後、国王陛下から『第二の救世主様、第三の救世主様が現れた』と国民に発表された。国王の演説台が設置された王国大広場には人が大勢集まって来た。なにか重大な発表があると噂が流れたからだ。
「救世主シマモト様が現れてから早9年が経った。その間のご活躍は皆が知っての通り、このグルンジ王国を救ってくださった! そして今日、新たな救世主様が転生されて来たことを発表する」
群衆の大拍手や歓声が続き、騒めきもしばらく止まなかった。
「凄いぞ、今度はどんなお方か」「また良いことが起きるといいな」
国王が両手を下に向けると一瞬で静かになった。
「第二の救世主様は、マユミ・キョウカ様である。獣類の専門家である。我が国で輸入に頼っている食肉類についての改善を期待しておる。第三の救世主様は、ナカムラ・シュンイチ様、海産物・魚類の専門家である。水産業のさらなる発展に期待しておる。そしてお2人の救世主様は、始まりの救世主シマモト様と同じ理想郷の日本から転生され、しかもお知り合いの関係だった」
もう一度歓声を制し
「お2人の救世主様は、数日後からそれぞれの場所に調査に出る。90日から120日に及ぶ調査が終わったら救世主様からのお言葉がある。今日はこれまでとする」
翌日、転生者の世話をする引受貴族が決定した。マユミ・キョウカはサリバン公爵家が、ナカムラ・シュンイチはロッシ公爵家がそれぞれ担当することになった。他の貴族も名乗りを上げたが、2人を最初に発見したサリバン公爵家と次に発見現場に駆け付けたロッシ公爵家が指名された。
大魔導士ガブリエル・モーガン公爵が救世主シマモト・ヨシオと共に成し得た功績でモーガン公爵家の地位と名声は確固たるものとなった。それを目にしていた貴族は次に功績を上げるのは自分たちの番と意気込んだ。しかし、指名されなかった貴族達は落ち込んだ。そこで、次は真っ先に転生者を見つける為の見張りの塔を港に競って建て始めた。
グルンジ王国の政治・経済・軍事の問題は、王城に住むグルム国王を中心とした王族と7大公爵家とで組織された『グルンジ議会』で検討され。最終判断は国王が議会内でする。しかし、国王の独断的な判断はよほどの確信がないかぎり難しい雰囲気がある。つまり公爵家の影響力がかなり大きい国である。




