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18話

 燃え広がる炎の中、俺は必死に走っていた。

 何者かが王国を裏切り、2匹の邪悪な魔物を王国へ侵入させたのだ。幼かった俺はただひたすらフランを守ることだけ考えていた。ベル兄さんに剣の修行をつけてもらっていたから恐らくここにいる街の人、兵士たちよりかは俺の方がまともに戦えるだろう。兵士たちは俺を戦いに出そうとはしないだろうけど、最悪みんなを守るため、フランを守るため俺も戦わなくてはならない。


「ベル兄さん…早くきて…!!」


 ベル兄さんは王様の住んでいるあの城に近いほうから攻めてきている邪竜を討伐するために、今は俺たちと逆側で必死に戦っている。

 最強の剣士だと言われているベル兄さんでもとても大きいと言われている邪竜を倒したあと、こちらへ助けにくることがとても難しいことくらい俺でもわかる。もしかしたらベル兄さんも負けてしまうかもしれない。

 だけど、こんな状況の中、俺はベル兄さんに助けを求めること以外何もできそうになかった。


「お兄ちゃん、私たちどうなるの…?」


「どうも…ならないよ。フランはお兄ちゃんが絶対守ってあげるから」


「お兄ちゃん…いなくならないよね?」


「………うん」


 俺が返事を躊躇ったことにフランは不安げな表情を浮かべるも、俺が「いなくならないよ」と付け加えたのを聞いて少し安心したような笑みを俺に見せてくれた。


 俺はフランと一緒に走りながら、ベル兄さんの無事を祈った。

 ベル兄さんは俺の師匠であり、この国の王様の幼馴染であり、この世界で一番強いと言われている剣士でもある。いや、剣士という枠から外したとしても、人類最強の強さを誇っていると俺は思う。そう思わせるほど、ベル兄さんには神に等しいほどの剣の実力が備わっていた。

 しかし強さの理由はその実力だけではない。確かに剣術だけでもベル兄さんはすごい。すごい…が、ベル兄さんは他に最強だと決定的に裏付けるものがその身に宿っていた。

 それは、産まれたときから持っていたという膨大な生命力であり、その生命力の濃さ、高さから今までどれだけよ攻撃を受けようが倒れたことはなかったらしい。

 こんなベル兄さんだから俺はいつどこでも、必ずベル兄さんが勝つと信じ、それを疑っていなかった。

 だが、今回、何者かの裏切りによって放たれたこの邪竜はベル兄さん同様、もしくはそれ以上だと、俺たちから離れる前、ベル兄さん自身がそう言っていた。

 

「でもベル兄さんならきっと大丈夫…絶対にこの国を救ってくれる」


 俺はそう呟きながら、ベル兄さんと初めてあったときのことも振り返っていた。

 初めてベル兄さんと会ったとき、俺とフランのベル兄さんとの出会いは、とても急なものだった。その日、いつも帰ってくるはずのお母さんとお父さんは帰ってこず、代わりに家を訪ねてきたのがこのベル兄さんだった。

 この日俺の両親と依頼を受けていたのがベル兄さんで、そのときのある事故のせいで、俺の両親は行方不明になったのだった。そしてこの日以来、俺とフランはベル兄さんの祖母のもとで生活させてもらっている。

 おばあちゃんはちゃんと逃げれてるかな…。俺は家があった場所へ顔を向けるが、住んでいた家はもう魔物に焼かれ粉々になっているのが遠目でもわかる。

 おばあちゃんはとある用で城の方へと出かけていたから大丈夫だと思うけど、まあ、今は他の住民と一緒に避難しているだろう。そう願うしかない。


「ぐあぁぁぁぁぁッ!!!」


 後ろから兵士たちの悲鳴が聞こえてくる。王国の兵士たちだけじゃやはりあの炎を操る魔物を撃退することは不可能なようだ。

 だんだん炎も俺たちの方へと近づいてき、魔物が近づいてきているということを俺は察した。

 

「…お兄ちゃん?」


 俺が頭の中で考えていることをフランは何か感じとったのか、俺の腕を握っている右手にぎゅっと力が入った。俺はそれを落ち着かせるようにフランの銀色の髪を優しく撫でた。

 俺とフランの髪は同じ銀色だけども、フランの髪のほうが光を反射しやすいのかこの炎の中キラキラと輝いて見える。髪質も俺のように硬くなく、サラサラと柔らかな感触がした。

 フランの頭を撫で終えると、俺は魔物のいる方角、街の外側の方へと顔を向ける。兵士たちの叫び声は次第に少なくなっていき、それに伴って魔物の炎の近く速度も速くなってきた。

 このままだと、誰かがこの魔物を止めないと…、この国滅んじゃうよね。俺だけで倒せるとは思わないけどさ、足止めくらいなら今の俺でも…きっとできるはず。


「ねえフラン、俺がいなくてももう逃げれる?」


「お兄…ちゃん?やだよお兄ちゃん。行っちゃやだ…」


「大丈夫、絶対戻ってくるから」


 俺はそう言うと、フランから背を向け、燃え盛る炎の中心部に目を向けた。

 腰にある剣を抜刀すると、それを低い位置に構え、俺は一息深呼吸する。


「絶対だからね…戻ってこなかったら…もうお兄ちゃんにはパフェつくってあげないから…」


「はは…、それだけは勘弁だなぁ…」


俺は最後にそう告げると、フランを残し、1人炎の中へと突っ込んで行った。

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