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17話

「というわけで、エレナさんもこの家で過ごすことになったっていうことでいいのお兄ちゃん」


「まあ、うん。そういうこと」


 辺りはすっかり暗くなり、買い出しから帰ってきたフランとガレアを入れて、俺たちはテーブルを囲んで座っていた。

 いや、ガレアを除いて全員座っていた。ガレアには今料理を作ってもらっているからこの場にはいない。

 俺は別にいいって遠慮したんだけど、ガレアは全く聞く耳を持ってくれなかった。自分に出来ることはこれくらいしかないから俺がいる間は任せてくれだってさ。

 俺は華麗にフライパンを振るガレアを見ながら、俺もあれくらい出来るように慣れるかな…とふと思った。


「でね、フラっぺちゃん!私の妹にならないっ?」


 俺がそんなことを思っていたとき、エレナがいきなりテーブルから身を乗り出し、そう言った。

 しかも「でね」って、どういう流れでそんな話になったんだよ…。


「いや、駄目なお兄ちゃんが1人いるので大丈夫です」


 ちょ、今俺のことさりげなくディスったよね。

 エレナのお姉ちゃんアピールを華麗に受け流したフランは、そのあと俺を見てフッと一瞬バカにするような笑みを漏らした。

 そしてその顔を見た俺は、あとで覚えてろよ…と、ジッとフランを睨む。

 確かに俺は駄目なお兄ちゃんだけどさ、自覚ぐらいしてるけどさ!だからっていざ言われてみるとかなり悲しくなるんだよ…。

 そんな俺たちのやり取りにも動じず、いや、ただ単に気づいてなかったセリーヌさんが口を開いた。


「あ、言い忘れてましたがフラっぺ。私もエレナも呼び捨てで呼んでもらって構わないので!」


「ほえ?あぁ、うんっ!ってセリーヌまでフラっぺって呼ぶつもりなんだ…」


 一瞬でセリーヌさんへの呼び方を変えたフランが、未だに睨み続けている俺の方から目線を外し、セリーヌさんの方へ顔を向けた。

 俺はこんなに早く呼び方を変えるような、そんな高度なテクニックは持ち合わせていないのに、どうして俺の妹は持ってるんだろ…。お兄ちゃん気になりますよっ!


「はいっ!これからもよろしくお願いしますね♪」


「こちらこそよろしくって、なんだか今更感あるんだけど…」


 本当、なんで今更自己紹介なんだろうか。いや、セリーヌさんに文句を言ったわけじゃないんだけどさ。なんだか俺だけ仲間はずれされてるみたいで少し寂しいんだよね…。

 俺はガレアから渡されたサンドイッチを反射的にかぶりつくと、そのまま頬を大きく膨らませてサンドイッチを口の中に詰め込んだ。

 俺とフランは何か食べるときに頬をすぐ膨らませる癖があるんだけど、まあそこは気にしない気にしない。


「あ、今日のサンドイッチは美味しい」


「おいそこのチビ!俺のつくったのが不味いみたいな感じに言うんじゃねぇよ!!」


 いや、まあガレアがつくるものは全部美味しいのはわかってるんだけどさ、前俺のだけ激辛に味付けされてたの思い出したから…。

 俺はそんなことを思いながらゴクンと頬張ったサンドイッチを飲み込むと、みんながまだ食事をとっている中、1人席を外した。

 本当はもう少しここでみんなと居たいんだけど、もう自分の体力が精神的にも肉体的にも限界なんだよね…。

 ガレアが俺の料理は今からだぞ!?とでも言うような顔つきで俺に手招きしていたが、俺はそれを顔を横に振って断り、自室へと向かった。


 俺の部屋につくと、真っ先にベルさんの写真が俺の視界に入った。別にそこまで気になったわけではなかったのだけど、なぜか俺はその写真から目を背けることができなかった。

 そういや、俺が蟹と戦って意識を失ってたときベルさんとの思い出のような、そんな夢を見てたんだっけ。確か、小さい頃の俺が剣の扱い方を教えてもらってて…、最後はなぜか泣き叫んでたような…。


「ゔっ!!」


 ここで突如俺の頭に何かが突き刺さるような頭痛が走り、繋がりそうだった記憶がまた離れていく。あと少しでわかりそうなのに、俺の中の何かがそれを邪魔しているようだった。


「でもこのまま過去のことを何もわからないままってのも嫌だ…、俺とベルさんが師弟関係だったっていうのは何となく…思い出したわけじゃないけど、わかったし、何とかできそうな気もするんだけど…」


 そういや、夢の最後、フランも俺と一緒に泣いてた気がする。あれが俺のただの夢じゃなかったら、フランが何か知っているのかもしれない。

 フランが泣いてた…か。俺もそのとき泣いてたし…、あの夢で出てきた人物は3人、この流れでいくと…。


「ゔぐぁっ…」


 俺の中、深いところで隠されていた記憶のようなものが無理やり繋がっていく感覚がした。

 あと少し、あと少しで全て思い出せそうな気がする。俺の頭の中に、火事が燃え広がっている中、片手に剣を、もう片手にフランを担いで走っている俺の姿が浮かび上がってきた。街の風景からして、俺の家の近くにあるあの城下町の様子だろう。

 次々と繋がってくる記憶にうずくまりながらも、俺は必死にベルさんとは誰なのか、俺にとって師以外にどのような人だったのか、答えを探し続けた。


 記憶の中を探り、探り続けた結果。ついにその答えを見つけだした俺は、何も言葉を発さずそのまま地面へと膝から崩れ落ちた。

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