16話
「はっ!!」
突如急に声をあげるエレナに俺は驚きながら振り返る。
「お姉ちゃん発見だよっ!ザッくん隠れて!」
俺はエレナに引っ張られると、そのまま草の茂みに突っ込まれる。エレナは謎のドヤ顔を見せると自分も茂みの中にダイブし、頭だけをだして周りをキョロキョロと見渡した。
「な、なんで隠れて…」
「今からお姉ちゃんに見つかったらゲームオーバーだよっ」
いや、意味わかんないよっ!!…そう、心の中で俺は叫ぶと、そう思ったにも関わらず俺はエレナの隣で見つからないように身を隠す。
エレナの目線の先へ視線を移すと、そこには俺の家の前で花に水やりをしているセリーヌさんの姿があった。
そんな水やりなんて俺たちでするのになぁ…、いつもは家で留守番してる俺の仕事だし、俺の趣味だしさ。
「匍匐前進で接近だよっ、ザッくん!」
何を思ったのか、エレナは地面を這いながら茂みから出てくると、そのままセリーヌさんのいるところまで近づいて行く。
しかしエレナの着ている服は明るい橙色で、地面に生えている緑や黄緑の雑草の上ではあまりにも目立ちすぎていた。
俺の着ているのも黒と白の布を巻きつけたようなものだし、エレナほどではないけど目立つだろう。
そして案の定、数歩茂みから出て、まだ足の部分が隠れている状態で、エレナはセリーヌさんと目がばっちり合っていた。
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「というわけで、見つけたよお姉ちゃんっ!」
「エレナ…エレナさんが見つかったんだよっ!」
結局オレとエレナ2人ともセリーヌさんに見つかり、セリーヌさんも水やりを終えていたようなので、とりあえず家の中へ上がり、セリーヌさんと向かい合うようにしてオレとエレナは椅子に腰掛けていた。
「こんな遠くなところまで…大丈夫エレナ?どこか怪我してませんか?
あとザックちゃん!私もエレナもさんづけじゃなくて大丈夫です!是非、呼び捨てで!!」
「えぇっ!?お姉ちゃんにはお姉ちゃんって呼ばなきゃ、めっ!だよっ!」
そんなに身を乗り出して言わなくてもいいと思うんだけどっ!?
まえにあったテーブルに勢いよく手をつけて乗り出してきたセリーヌさんとエレナは、俺が慌ててどう対応してすればいいかわからなくなっていることを察すると、2人ともせきばらいをしながらゆっくりと席に着いた。
「えっとじゃあエレナ、今思ったけどどうしてセリーヌさんを捜してたの?」
「うぅ…エレナは呼び捨てなのに私はさんづけ…」
「わわっ!?な、泣かないで!?泣かないでセリーヌさ…せせせセリーヌっ!!」
するとセリーヌさんは満足したようにニッコリした表情になるとそのまま力が抜けたようにテーブルの上にふにゃふにゃと倒れこんだ。
まあ、今はとりあえずセリーヌさんは置いておき、俺はエレナの方へと目線を向ける。
「いやー、私家出してきたんだ〜っ!そしたらお姉ちゃんがここに着ているって情報を聞き入れたからお姉ちゃんを捜してここまできたってわけだよっ♪」
ぜんっぜん感心しない理由ですなっ!!?
俺はニコニコとすごくニコニコと苦笑いしながらそんなエレナのここに来た理由を聞いていた。
「で、俺の家に泊めてくれないかって言うつもりだよね絶対」
そんなエレナを見ながら俺はぼそりと呟く。
「えぇっ!?なんでわかったの!?」
「なんでわかったのじゃないよ…」
俺ははぁ、とため息を吐くと、もう泊まる気満々でどこから出したのかいろんな道具を並べ始めるエレナを見てもう一度ため息を吐いた。
まあ、別に俺はいいんだけどさ、いいんだけど…。
どうしてこんなに人が増えてしまったんだろう…!!
こうして、家出した理由はわからないが、セリーヌさんの妹、エレナが俺の家に住むことになった。
ガレアから聞いた話だと、セリーヌさんは一応あの王様からの依頼という形で成り立っているみたいだけど、エレナに関してはもうただの居候だよね。
まあ、そんなこと言ってたらガレアも一緒なんだけどさ。
「あ、エレナ。その…」
「ん?どうしたのザッくんっ。お姉ちゃんに遊んでほしくなったの?大歓迎だよ〜っ♪」
いや、そうじゃなくて。ええと…なんて言おうとしたんだっけ…。
「ってうわぁぁ!?」
俺はいきなり飛びついてきたエレナを躱すことができずそのまま地面に押し倒されてしまった。
地面に倒れたときの反動と上にのしかかってくる身体に頭が真っ白になる。まだコミュ障を卒業できてない俺にこの仕打ちはないよ…。
俺がパクパクと口を開け閉めしているとそんな俺の様子に気づいたエレナが「えへへ…ごめんザッくん」と頬を掻きながら一歩後ろに後退した。
「えっと…あ、そうだ。まだ二階にいくつか空きの部屋があるからさ、荷物はそ、ほこに置いてき…」
…か、噛んだ。
最近なかったのに、最近噛んだりすることなかったのにぃ〜!まあ、いいや。それくらいなら誰でもあるだろうし。
「二階の部屋使わせてもらっていいの!?」
「ん、うんいいよ。どうせ誰も使わないしいらないし。部屋がないと不便だろうし」
俺がそう言うと、エレナはご機嫌そうに立ち上がると、荷物を持って「ザッくんありがとぉっ!」と叫びながら二階へと駆けて行った。
人数も増えてきて、このままじゃ大家族みたいになっちゃいそうだな〜…。俺はふとそう思い、二階へと走っていくエレナの背中を目で追った。




