16-5 イカれたメンバーを紹介するぜ!
駅前は、ここに来た時よりもたくさんの人々に溢れていた。
うわぁ、すごい……毎年テレビのローカルニュースで目にしてたけど、生で空気味わうと楽しさ百倍だぁ。
あっ、あれ、アニメの『レッドフィクション』のサクヤじゃない?
きゃー、『絶対パティシエ!』の御堂ランだあ! あっあっ、『プリンスクッキング』のレン・ミウラとの奇跡のコラボじゃーん!
わあ、ゲームのコスも多いなぁ……おっ、向こうで格ゲーのコスでプレイ動画みたいなことしてるぞ。面白ーい!
へえええ、トイレットペーパーのコスとか、皆で集まってフライドポテトになってるコスとか、変なカッコしてる人もたくさんいるんだ。
でも、こっちだって負けてないもんね!
では、本日のイカれたメンバーを紹介するぜ!!
モンスター殺人鬼、有瀬真央!
装備はホッケーマスクに迷彩服、そして志貴さんが仕事の資料として入手したレプリカのチェーンソーだ! レプリカと侮るなかれ、醸し出す殺意のオーラが本物の凶器以上に恐ろしく見せるせいで、ここに来るまでの短時間で三回職質を受けたぜ!
ホラー映画の本家より怖いと私の中で圧倒的高評価、通りすがる人々もさっと避けてくれるからお役立ちアイテムとしても活躍中だ!!
お次はやっつけ魔女、有瀬志貴!
こちらの装備は、テカテカの黒布に蝶々仮面に、何故かガトリングガンときた! ちゃっちいガトリングガンは息子の遊び道具だったものを再利用、本来はシャボン玉が出てくるファンシー仕様だが、液を入れたまま長年放置したせいで現在使用不可だ!
旦那のリクエストに応えて仕方なく取り敢えず適当にやってやった感満載!
しかし、これでも魔女だと言い張るメンタルの強さは、全人類のお手本にすべきだぜ!!
続いて仲良し宇宙人コンビ、城咲明日香!
己の美貌をかなぐり捨てて、エイリアンに抱っこされるプレデターという意味不明な友好関係を全力で体現してきやがった! プレデター部分は元は緊張感のない空気人間だったが、自力でカスタム、ホラー好きだけあってその完成度には目を瞠るものがあるぜ!
しかしこのプレデターマスクの下に隠されている素顔が超絶美少女だなんて、誰が想像できる!?
知っている私ですら、ドリンクを飲む時にマスク外した顔を見て落差に驚愕して泣いた!!
さあ、お待ちかね!
自称吸血鬼の有瀬留佳!
装備はベネチアンマスクに中学時の紺ジャーとシンプルだが、徹底した雑精神は随所に健在! 腕まくり裾まくりで丈を誤魔化したジャージは発掘時から既にズタボロ! 貴様の中学では、体育で軍事訓練でもしてるのかと小一時間ほど問い詰めたくなったぜ!
華々しい存在感を放っていたベネチアンマスクも、ここに到着するまでの間に哀れなほど雑に扱われてフサフサはまだらに剥げ、面は歪み、ヒビすら入る始末! 吸血鬼要素に拘っていた割に、何故かゾンビ寄りに仕上がってきた!
だが大丈夫、本人も吸血鬼設定なんかとっくに忘れてそうだ! これぞ雑オールライト精神!!
ラストは女子中学生の私、柊那由多!
謎の化物一家に攫われた生贄に見えるほど、どこもかしこも普通! 普通ここに極まれりだぜ! 特に言うことはないぜ! 以上だぜ!!
心の中で皆を紹介してひっそり悦に浸ると、私はいろんな仮装を眺めてはそれこそJCに還ったようにキャッキャとはしゃいで、パレードの流れに乗って歩いた。
多くはないけれど出店も並んでいて、お祭りみたいだ。今年は鍛錬で忙しかったから、夏祭りに行けなかったんだよね……そこはちょっと悔やまれる。
「有瀬くん達は毎年参加してるの?」
隣の城咲さんとばかり話していたことに気付いて、私は背後から付いてくる自称吸血鬼に尋ねてみた。
この吸血鬼、人の中にこっそり潜んでるとか抜かしつつ仲間外れにするとうるさいので。
「うん。昔は母に着せ替え人形みたいにされてた」
「有瀬くん、着せ甲斐あっただろうねー。めちゃくちゃ可愛かったもんなー」
私も有瀬くんみたいな子がいたら、きっとあれこれ着せるね! ママとオソロの仮装にしちゃうね!
一緒にお手手繋いで歩いて、『どう? ウチの子、世界一可愛いでしょ!』って見せびらかしちゃうね!
「ちょっと、どうして過去形なのよ。留佳は今も可愛いでしょ!」
隣から城咲さんが肩をぶつけてくる。
いったいなー。やたら作りが良いショルダーアーマーのせいでいつもより攻撃力高くなってるんだから、ちょっと控えてよねー。
「このパレードの一番奥にあるイベント広場に行って戻ったら、夕飯だからねー」
志貴さんが振り向いて、今後の予定を伝える。
「真央さん、今から作るんですか? 大変じゃないです?」
「下拵えしてあるからそうでもない。お前も食ってくだろ? 家に連絡しとけ」
ホッケーマスクの殺人鬼が、今日初めて輝く輪っかを冠したオカン天使に見えた。
「いいんですか!? ありがとうございます! じゃあ私にもお手伝いさせてください。大したことはできないけど」
ダメ元で協力を申し出てみる。真央さんは料理にこだわりありそうだから、いらんことすんなって断られるかなーと思ったのだけれど。
「……そうしてくれると助かる」
意外にもすんなり了承してくれた。
まじか、やったね! 有瀬家のご飯作りに携われるなんて、誉れ高い!
「ちょっと柊さん、大丈夫なの? 真央の料理の手伝いなんかしたら、命が幾つあっても足りないわよ? 私、友達が死ぬところなんて見たくないわよ?」
隣から城咲さんが私の肩をプレデターアームで掴んで、物騒なことを言う。
「大丈夫だよー。下拵えはしてあるっていうし、真央さんだって私如きに大それた調理は任せないって。死なずに死なないもの作るから、ちゃんと食べてよ? 私が作ったのだけ避けるとかナシだからね?」
プレデターアームをぺしぺし叩いて諭すと、プレデターマスクが少し俯いた。
「えっ……ええ、それはもちろん食べるわよ。柊さんの卵焼き、大好きだもの。やだ、すごく楽しみになってきた……卵焼き以外の柊さんの手料理を、家で食べられるのよね? どうしよう、嬉しい。早く帰りたいわ、足が地につかない感じよ!」
城咲さんの弾んだ声を聞きながら――私はこの上なくプレデターマスクを恨んだ。
くそー、美少女のデレ顔を拝める大チャンスだったのに! プレデターめ、何さらしてくれるんだ! 今の私なら、怒りのパワーでプレデターを倒せるかもしれない!




