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アオハル of the Dead End! ~平凡女子高生、顔面チートで頭赤ちゃんな超雑男子とラブコメ(ほぼコメ)する~  作者: 節トキ
LESSON 16 ハロウィンに仮装しよう!

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16-4 パンツ・ザ・ラビリンス


「キツい。無理だこれ」

「えぇ……」



 袖を通すや、有瀬くんは眉をひそめてクローゼットから引っ張り出した学ランをポイ捨てした。


 卒業式の写真では普通に着てたよね? てことは、あの時よりもスペック上がってるのかぁ……。



「ねえ、城咲さん。有瀬くんの身長体重、今どうなってるの?」


「先週、家で計測したところによると183センチ、76.5キロだったわね」



 おいおいおい……この一年もまだまだすくすく成長してるじゃないの。タケノコか、この男は。



「あー、じゃあ体操着は? 体操着なら伸縮性あるから着られるんじゃない?」



 私が提案すると、有瀬くんは再びクローゼットに潜り込んだ。



「どこだ? 明日香」


「右端の棚の最下段の奥よ」


「ないー。明日香、交代ー」


「あるわよ、よく見て。私はこんな格好だから、クローゼットに入って手伝うのは無理よ」



 夫婦やん……と微笑ましく思うと同時に、じわっと寂しくなった。


 そりゃそうだよね、この二人はずっと一緒にいたんだもん。二人の間に、ぽっと出の私が入る余地なんかあるわけがない。



「ないー」



 私の心を見透かしたように、有瀬くんの声が続く。

 何故か、いつかの胸の痛みが蘇った。怖さは克服したはずなのに。どうして。



「ないことないってば」



 城咲さんの言葉が、私をフォローするように聞こえる。だけど、それがさらに痛みを加速させる。


 違う、私は二人の間に入りたいわけじゃない。

 そうじゃない。ダメだ、止まれ、私。考えちゃいけない。



「ないー」



 わかってる。わかってるのに、頭が心が走ろうとする。

 そっちへ行っちゃいけない。止めようとしても、胸の痛みが急き立てる。


 やだやだ、やめてやめて。止まって止まって止まって……!



「もうっ! 柊さん、ちょっと見てきて!」

「えっ!? あっ、はい!」



 プレデター城咲さんの強い声で、我に返った。おかげで思考も痛みも止まった。


 勢いで承諾してしまったので、私は渋々クローゼットに入って、ゴソゴソしてる有瀬くんの肩を叩いた。



「有瀬くん、ちょっと退いて。私が探す」



 右端の最下段だと言われてたのに、有瀬くんは二段目を漁っていた。この人、本当に人の話を聞いてないなぁ……。


 棚は結構奥行きがあるみたいで、膝をついて腕を伸ばさないと奥の衣類には届かない。

 私ですらキツい体勢なんだから、もっと体の大きい有瀬くんならさらにキツいよね。最初から私が探してあげれば良かったな。提案したのは自分だったんだし。



「おっ、これかな。うわ、何ぞこれ、交通事故の後みたいになってるけど、本当にこれでいいの? ねー、半袖も持ってこーかー?」



 呼びかけるも、返事がない。



「ねーちょっとー、聞いてんだけどー?」



 仕方なくズタボロな紺のジャージの上下と多少はマシそうな白の半袖の上下を引っ張り出して部屋に戻ると、有瀬くんはデコボコの床に倒れていた。

 城咲さんはベッドに仰向けに倒れ、痙攣している。まるで爆撃の後みたいな状態だ。



「な、何どうしたの? 遠隔で精神攻撃でも受けた!?」



 とにかく、一番近くにいた有瀬くんに駆け寄る。



「し、新作……シンプルに破壊力高ぇ……じわじわくる……」



 体を震わせながら、有瀬くんが絞り出すように言う。



「な、何でテレビ……? テレビだからって何なのよ……何でこんなにただのテレビが面白いのよ……っ!」



 城咲さんの発したテレビという単語で、私ははっとしてお尻を押さえた。が、時既に遅しだ。


 パンツ見られた!

 四つん這いになってる間に見られた!

 中学のスカート、入学した時から身長伸びたせいで高校のより短いってこと、忘れてた!


 見られた……けど、ヘタウマなテレビの絵の横にヘタウマな字で『テレビ。』って書いてあるだけのプリントの何がそんなにツボなのよ!? 至って普通じゃん!? じゃあ、セットで買った『れいぞうこ。』と『こたつ。』もダメってこと!?


 私にはもうパンツがわからないよ!!




「おっせぇな! ただ着替えるだけでどんだけ時間食ってんだ、お前ら!」



 階下に戻ると、真央さんの怒声に耳を突き刺された。



「那由多のせいだ」

「柊さんのせいよ」

「どうして!?」



 二人に責任転嫁されて、私は猛然と抗議した。


 あれから二人して噴き出して笑い出して転がり出して止まらなくなったせいじゃん! パンツ見られるわ笑いものにされるわ、遅れた責任を負わされるわ……何故こんな目に遭わされなきゃなんないの。


 城咲さんはプレデターマスクの下でまだ笑ってるようで、くぐもった忍び笑いが漏れ出て聞こえる。有瀬くんはの赤と黒のド派手なフサフサが目に痛いゴールドのベネチアンマスクで目元はカバーされてるものの、露出した口元を震わせていた。


 『テレビ。』の何がいけなかったというのか。可愛いと思って買ったのに……あーあ、パンツ選びの自信失ったよ。



「それでどこに出かけるんですか? 私、何にも知らないんですけど」



 玄関に向かう皆に尋ねると、全員がこちらを振り向いた。



「どこって、駅前の仮装パレードに参加するんだよ。そこ以外、行くとこなんてないでしょ?」



 志貴さんが事も無げに言い放つ。


 そんな当たり前みたいに言われても、私はこの辺の民じゃないんだから知るわけないでしょーが。

 有瀬くんと城咲さんの表情はわからなかったけど、ホッケーマスクを装備しようと構えてた真央さんまで何言ってんだこいつみたいな顔してるし……有瀬家の人々、皆して言葉足らずすぎる!


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