15-2 ゲラ☆ゲラ☆ゲラ☆ゲラ☆ワ〜ロリ〜ン☆
だ、大丈夫。
峯岸さんがいきなり豹変して襲いかかってきても、私には真央さんに教わったようなそうでもないような戦う術が多分恐らくきっと備わっているはず……と信じてるし信じたい。
癇癪起こした巨大赤ちゃんを制圧しなきゃならないのに、こんな自分と大して体格の変わらない女子一人に怯んでなんかいられない。
あ、でも仲間呼びっていう手を使われたらヤバいな……うわぁ、やっぱり梨奈ちゃんを帰さずに待機させておくべきだったかな!?
「柊さん、単刀直入に聞くね。あなた、有瀬留佳くんの恋人なの? 間違いはない?」
刺すような視線で、峯岸さんが問う。
ひぇぇ……いきなり空気変わったぁぁぁ……豹変モード突入だぁぁぁ。間違ってますって言いたい。
本当の本当は間違いだし、こんな怖い目に遭う必要も義理も道理も、私にはない。
でも。
「そ、そうだよ。間違いない。私が有瀬くんの恋人だよ」
涙目にはなってたけど、はっきり答えられた。
皆に有瀬くんを任されたんだ、ここで逃げてどうする。
親近感を抱いたせいで忘れかけていたけど、この人はライングループで有瀬くんをストーカーみたいに見張ってる奴らのトップなんだ。私がビシッと言って、やめさせなきゃいけない。これだって、立派な恋人の役目だ。
体を張る相手は、有瀬くんだけじゃない。有瀬くんを害そうとする奴にも立ち向かわなきゃ。
皆と一緒に、大きい赤ちゃんを育てるって決めたのは自分なんだから!
睨み合いつつも、いつでも逃げられるようにドアに向かう最短距離を頭の中でシミュレーションしていたら、峯岸さんの表情がまた変化した。
「そうなんだあああ! すっげー、やったー! いやもうまじ嬉しい! うひぇひぇひぇ! 有瀬くんが柊さんみたいな子を選んでくれるの、ずっとずっとずーっと夢見てたんだよう! あはぁっはっはっはっはぁぁぁ!」
「え……え?」
狂ったように笑い始めたけど……何なの、この人?
も、もしやサイコパスってやつ?
いやいや、それは想定外だよ!?
嫉妬の炎メラメラ燃やした殺意の塊みたいなのはまだ説得の余地がありそうだけど、言葉の通じない脳内クレイジートリッパーは無理だって!
ああ、出会ったばかりの頃の城咲さんを思い出す……あの人も全く意思疎通が不可能で、怖すぎて泣いたなぁ。
なのに未来ってわからないものだよね、それが今では毎日ランチする仲なんだもん……と、ここで私は閃いた。
「み、峯岸さん! わわわ私と、ととと友達になろうよ!」
現在対面する不可解な存在への恐怖と、過去に対峙した危険な存在への郷愁の入り混じった思い出し恐怖にバシャバシャ涙を流しながら、とにかく提案するだけしてみた。もしかしたらのもしかしたらで、この人にもこの手が通用するかもしれない、という僅かな望みに賭けて。
すると、峯岸さんの笑いが止まった。
「と、友達? ワタシと?」
「うん! ほら、話合うしさ! ウチら、きっと仲良くなれるよ! 友達になろ、ね!?」
きょとんとする峯岸さんに、私は念を押すように繰り返した。
そう、私達は仲良くなれる可能性を秘めているはず。だって一目でお互いの平凡な容姿に警戒心を解かれて惹かれ合って、親近感を抱き合ったくらいなんだもの。
これ、類似性バイアスっていうらしいけど、峯岸さんもきっと感じてくれてる……と今は願うしかない!
峯岸さんの肩が震える。そして、すぐまた爆発した。
「いひーっひっひっひっ! まじか、まじかあ! ぎひっ、嬉しい……シンデレラと友達になれんの、ワタシ! 選ばれちゃっていいんすか、ワタシ! ハイッ、喜んでぇえええへぇへへへへ! あひょひょひょひょ!」
シンデレラって私のことかな?
どっちかというと、皆にデコレーションされて送り出されたシンデレラより、果報を寝て待った眠り姫か白雪姫寄りだと思うけどなぁ、それにしたって待った覚えもないんだよなぁ……などとのんびり思いながら、今度は冷静に見てられた。
だって、この人がこんな変な理由がわかったんだもん。
峯岸さん、多分ゲラってやつだ。
何でも笑いのドツボにハマっちゃうんだな。
私とは正反対だけど、これはこれで生きにくそうだ。早速呼吸困難になりかけてるし。




