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アオハル of the Dead End! ~平凡女子高生、顔面チートで頭赤ちゃんな超雑男子とラブコメ(ほぼコメ)する~  作者: 節トキ
LESSON 14 誕生日を祝われよう!

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14-5 そしてエクソシストは花火になった


 続いての願いは、有瀬くんのクラスが次の時間体育であることを考慮して手短に告げた。



「茉絢の名前を覚えてほしい」

「エクソシスト」


「違う、吉良茉絢」

「フィルァムヤ」


「吉良茉絢」

「グィロメェニャ」


「吉良茉絢!」

「ゲマルチョイサ」



 ああ……教えれば教えるほど遠退いていく。


 やっぱり一筋縄ではいかないかー!

 そうだよねー、私の名前も二時間くらいかけて偶然発音できたところから覚えられたもんねー!



「参考までに聞きたいんだけど、久月(くづき)くんと城咲さんと八重樫くんはどうやって覚えたの?」


(こう)は紅ちゃんって呼ばれてて、苗字と合わせたらクッキー紅茶って聞こえたから、それきっかけで声かけて仲良くなって覚えた。明日香は俺が覚えるまでひたすらずっと自分の名前を言い続けてて、気付いたら覚えてた。八重樫は菓子の字が入ってるから気になって、紅も勧めるから友達に選んでそれから覚えた。でも、半年くらいは菓子って呼んでたと思う。あんまり記憶にないけど」



 ざっくりと有瀬くんから説明を受けると、私は頭を抱えた。


 お菓子に関する名前か、洗脳するかしかないのかぁ……。私、本当に運が良かったんだね。

 もしあの偶然がなかったら、八重樫コースで半年家に帰れなかったかもしれないんだもん……。



「別に名前じゃなくてもいいんじゃない?」



 私の机の前で、有瀬くんの隣に並んで立っていた茉絢が言う。



「このままエクソシストって呼ばれ続けることに同意するの? 茉絢、本当にそれでいいの?」



 机に突っ伏していた顔を上げ、尋ねてみる。



「同意なんかしねーよ。誰がエクソシストだよ。祓えるもんならこんなもん、とっくに祓っとるわ」



 忌々しげに舌打ちしてから茉絢は自分のスマホを私の机に置き、映像を流し始めた。私も身を乗り出して一緒に観る。



「有瀬くん、これはどういうふうに見える?」



 茉絢が再生したのは、どこかの花火大会の映像だった。



「花火がある」



 有瀬くんが淡々と答える。



「チッ、こいつ、ほんっとーに情緒もクソもねーな……じゃあ擬音をつけるなら?」



 茉絢、えらい口悪くなってるな……また舌打ち出たし、これ、結構本気で苛ついてるやつや。



「ドーン」


「音じゃねーよ。光の方だよ。そのくらいわかれよ、理解しろよ」


「パーン」


「それも音だろ。いい加減にせーよ、頭ウンコか貴様は」


「ほよよ」


「打ち上がって飛んでくところな。そこはいちいち言わんでいいからな。光ね、光をよく見て。ほらっ、花火が上がって……さあ開いた! どう!?」


「キラキラ」


「それ!」



 ネチネチ嫌味を言い続けていた茉絢が、白け顔から一転、花火みたいに眼鏡の向こうの瞳を輝かせた。



「もういっぺん言ってみようか」


「キラキラ?」



 有瀬くんが繰り返す。



「そう、わたしのことはこれからキラキラってあだ名で呼んで。名前は無理して覚えなくていいよ。真名を知られたら、さらに精神の奥深くに取り憑かれそうだから」


「キラキラ……わかった、キラキラ」


「はい、用は済んだね。とっとと着替えて、元気に体動かしてらっしゃーい」


「ありがとう、キラキラ。じゃあ後でな、那由多」



 茉絢に背中を押し出され、有瀬くんはあっという間に去っていった。


 すんげー、茉絢……半年コースをたった三分で終えちゃったよ。

 すんげー! すんげー! すんげー!

 もうすんげーしか言葉が出てこない!!




 有瀬くんが誕生日をお祝いしてくれるのは嬉しいんだけれども、私にはどうしても気になることがあった。


 三時間目の体育を終えてすぐ、有瀬くんはダッシュで私の移動先の教室に現れた。あまりにも早すぎて、ちょっとビビった。


 だって、体育館にある更衣室で着替えて、別棟の二階にある特別教室にチャイム鳴ってから三分で到着したんだよ?

 ブレザー着ずに引っ掴んでる状態だったし、走りながら留めたのかシャツのボタン盛大に掛け違えてたとはいえ、どんな脚力してんの……鬼ごっこしたくない人、ぶっちぎりのナンバーワンにランクインしたよ。



「有瀬くんの教室、見てみたいんだよね。私の名前覚えるミッションの時以来、行ってないから」



 願いを口にすると、有瀬くんは首を傾げた。



「行ってどうするんだ? 何も面白いもんはねぇぞ? あれから少しも変わってないし、那由多の教室と同じだろ」


「いいからいいから。有瀬くんだって戻る手間が省けるじゃん。クラスの皆も、もう着替えて戻ってきてるよねー?」



 ウキウキと二段飛ばしで階段を上れたのは踊り場までで、あっという間に息絶えた。


 だっる……五組と六組の人達、毎日こんな思いして三階まで通ってんの? 毎日が鍛錬じゃん。二階の三組と四組もすごいよ、私には無理だよ。

 どうか来年のクラス替えも、一階でありますように。


 入学式の放課後の時は誰もいなかった廊下も、休憩時間とあって人通りが多い。

 自分と同じ一年生のはずなのに、皆のどこか大人びて感じるのは何故なんだろう? やっぱ三階まで毎日通ってるおかげで、精神力が鍛えられてるせいかも。だとしたら、私も二階くらいにはなりたいかな。


 それにしても……何だ?

 あちこちで女子がスクワットしたり、椅子使ったストレッチしたりしてるんだけど?

 ここに毎日到達するだけで修行みたいなもんなのに、この階の女子達、さらに高みを目指してるの? 猛者揃いすぎん?



「一階じゃ見ない異様な光景だねぇ……五組と六組じゃ、女子の間で筋トレ流行ってんだ?」


「知らない」



 背後をついてくる有瀬くんに聞くと、予想通りの答えが返ってきた。ああそう、私はあなたがそう答えるだろうって知ってたよ……。


 お目当ての五組に着くと、私は後ろ側のドアから顔を出して中の様子を窺った。


 お目当ての人物はすぐに発見できた。


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