↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アオハル of the Dead End! ~平凡女子高生、顔面チートで頭赤ちゃんな超雑男子とラブコメ(ほぼコメ)する~  作者: 節トキ
LESSON 13 恐れを克服しよう!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/82

13-7 ぺいんぽいん無限リピ


 真央さんに手伝ってもらってヘッドギアとグローブを付けると、私はへっぴり腰でファイティングポーズを取った。



「いいか、俺は絶対にお前に当てない。それだけは約束する。お前は俺にどれだけ当ててもいい。だから安心して打ち込んでこい」



 そう宣告して、真央さんもファイティングポーズを取る。向こうはヘッドギアなし、グローブのみだ。


 絶対に当てない…………と言われたけれども。



 無理!! 超怖い!!



 ファイティングポーズを取った瞬間、真央さんの空気が変わった。

 目視できるんじゃないかと錯覚するほど濃密な殺意のオーラに包まれ、親の敵にでも出会ったかのような底冷えする目付きでこちらを射竦める。身長は変わっていないはずなのに、内側から燃える闘気のせいか、五メートル以上に見えた。


 あの写真で見た各務真央が、ここに降臨なされたのである!



「来ねえのか、ならこっちから行くぞ」



 早くもだば泣きの私に、無情の声が投げられる。その刹那、凄まじい旋風が髪を揺らし、切られたかと思うほどの鋭利な衝撃が顔面の皮膚を襲った。真央さんがパンチを放ったのだ。


 真央さんが宣告した通り、当たりはしなかった。拳はヘッドギアすれすれの位置で停止した。それでも恐怖のあまり、ぼあーーっと涙が一気に噴き出す。


 それを感じながら、私はひょいと腕を上げた。


 ぺん、と。

 グローブに手応えがあった。



「な……」



 低く呻いて真央さんが飛び退く。


 あれ? 今、普通に殴れなかった?

 真央さんの左頬に当たったような気がしたんだけど……気のせい? 気のせいかー。だよなぁ。


 肩を落とす間もなく、怒涛の疾風が私の身を斬り上げるかのように走り抜ける。蹴りだ、と察するより前に、ふらっと体がよろめいた。


 ぺこん。

 また手応えがあった。


 どぼどぼ涙を流したまま、私はそっと尋ねた。



「あの、今……」



 当たりませんでした? と聞くより早く、またもやパンチが繰り出される。

 私は泣きながら、真央さんが伸ばした腕側からぽいんととグローブで腹部を叩いた。


 真央さんがいつまでも無言で殴りかかってくるもんだから、私もずっとぺいんぽいんし返すしかない。


 これがスパーリングってやつ?

 でも、いつまでやらなきゃなんないの、この行為?


 時間制限も伝えられてないし、何をやってるのかよくわからないし、真央さんの顔はいつもに増して怖いしで、筋トレよりしんどいんだけど……。



「え……那由多ちゃん!? 何やってんの!?」



 いい加減、体も目玉も疲れ果ててきたところで、聞き覚えのある声が私の名前を呼んだ。おかげでビックリして、立ってるのもやっとだった足を滑らせてひっくり返ってしまった。



「!!」



 真央さんが声もなく蹲る。滑らせたのと反対側の私の足が、見事に股間にクリーンヒットしたせいだ。


 二回目のやらかしだ……ああ、今度という今度こそ殺される……。我が尻子玉よ、さようなら……。


 もう涙腺も限界のようで、涙ははらはら小粒に零れるのみだった。


 マットに仰向けに倒れたまま、最期の時を待っていると、可愛らしい天使が覗き込んできた。



「私、天国に行けるんだ……良かった……もう地獄は嫌だよ……早く連れてって、天使様……」


「な、那由多ちゃん、大丈夫!? 何が見えてるの!? 怖いから変なこと言うのやめてね!? ほら、スポドリ飲んで!」



 天使様に導かれて生命の泉を口にすると、私はたちまち現世に戻ってきた。



「あれ……久月くんだったか。どうしてここに?」



 久月くんは肩から吐き出すように息をつくと、タオルで涙と汗と涙と涙に濡れ倒した顔を拭いてくれた。



「市井さんから連絡があって、真央さ……有瀬先生……いやもう卒業したから真央さんでいいのか、真央さんが直々に留佳の恋人を鍛えてるって聞いたから気になって来たんだよ。もう、何やってんだよ……」


「何って……聞きたいのは私の方だよ。私、何させられてたの……?」


「オイ、紅」



 蘇った地獄の主の声に私は飛び起き、慌てて大天使久月様の後ろに隠れた。


 せっかく天界から救いの使者が現れたというのに、地獄の死者に逆戻りしたくないよ! 大体さっきのアレは不可抗力だったし!



「ギアとグローブ着けろ。マウスピースも」

「へ?」



 私にしがみつかれたまま、久月くんが問い返す。



「久々に滾ってきた。相手になれ」



 真央さんは飢えた獣のような目で久月くんを睨んだ。すると久月くんはすっと立ち上がって、笑顔で答えた。



「はいっ! ありがとうございます!」



 え? 久月くん、何でこんな嬉しそうなの?

 感謝しながら地獄に飛び込んでくとか、私より死に急いでない? 実はひっそり世を儚んでたのかな?

 後でさり気なく聞いてみて、話してくれそうなら相談に乗ろう。


 心の中でいらぬお世話を焼いている間に、久月くんはトレーニングパンツ一枚になって防具を装備した。


 ヒェッ、腹筋やば! 腕もすげぇやん!

 あんな可愛い顔して、こんな鋼の肉体を隠してたの!? 二面性が天国と地獄じゃん!


 そうしてすぐに、真央さんと久月くんは戦い始めた。


 正直、格闘技はほぼ観ない……というか避けてきた私には、二人が繰り出す技なんて理解できなかったし、展開が早すぎて目で追うだけで必死だった。


 戦う二人を前にして、私は補給したスポドリを流し切っても足りないくらい、ひたすら泣いた。泣いて泣いて、どぶどぶに泣き倒した。


 だから嫌なんだよ、こういうの見るの!

 だって怖いし痛そうだし怖いし痛そうだし怖いし痛そうだし、見てる内に感覚がリンクして、どんどん怖さも痛みも我が物になっていくんだもん!


 私、格闘技観戦に向いてないの! ついでにヤンキー物も任侠物も無理なの!

 リアルでもフィクションでも、優しい世界に生きていたいの!



「真央くん、真央くん! ストップ! もうやめろ、ほら!」



 泣きすぎて意識が朦朧としてきたところで、市井さんが飛んできて組み合う二人を引き剥がした。


 真央さんによる圧倒的かつ一方的な攻撃で、久月くんは短時間でズタボロにされていた。これでも真央さんは加減したらしいけれど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。