11-1 夢を壊すようだけど、現実の女子会は女子感皆無だから
「まじかー、くっそー、羨ましいなー!」
「とっとと爆発してまえ、バーカバーカ」
ゴールデンウィークにお流れになったお泊まり会は、カラオケフリータイムで歌いまくろう会に変更して開催された。
それがさー、聞いてよ。
お泊まり会の家の子、ミッチーっていうんだけどさ、例のグループデートの彼と付き合うことになったんだって!
音痴のミッチーにしては珍しく一番最初に曲入れたからちょっと不思議に思ったんだけど、イントロ開始したところでマイクで電撃発表されて、超ビックリして泣いたわ。
おまけに泣けるラブソングを選曲しやがって……全力で私を泣かせに来たとしか思えない!
「那由多ー、泣き止んだー?」
「もーへーきー。はー、泣いた泣いた。目ん玉洗濯された気分だわ」
瞼を冷やしていた濡れタオルを外すと、優花の呆れたような顔が映った。
「あんたの目玉は常に自浄機能働いてんじゃん。ほら、泣いた分しっかり水分摂っときなよ」
「ありがとー。あ、これ優花の入れた曲じゃない?」
「うわ、ほんとだ。マイクこっちに貸してー」
優花が差し出してくれた烏龍茶で水分補給しながら、久々に耳にする友の歌声に耳を傾けていると。
「ねー、那由多はどうなん? アオハルな甘酸っぱ話はないの?」
反対隣から、紬が体当たりするようにして寄ってきた。
「えっ……いや、特には?」
「だろうなー。知ってた! 聞くまでもなく知ってた!」
向かいでミッチーと並んで座っていたシオリンが突っ込んでくる。
「うっさいな、勝者の隣にいるからって自分も勝ったつもりでいるなよ? 目くそ鼻くそって言葉があってだな」
「那由多にしちゃ難しい言葉知ってんじゃん。茉絢はどうなのよ?」
同じ高校に通う親友の名前が出たので、私は肩をすくめてみせた。
「ご心配なく、あちら様も無風だよ。今日も元気に声優さんのイベント行ってるし。相変わらず恋より声、愛の囁きより愛なき罵り優先だからね」
「茉絢が真の恋を知るのは、また後の話……エンドのまんまかぁ」
「顔面はウチらの中じゃピカイチなのにねー。もったいなー」
「奴の場合、明らか性癖が邪魔してる。ドSのくせに罵られたいとか、ひねくれ過ぎだ」
ほら、好き放題言われてますよ、茉絢さん。
たまにはイベント休んで、友達の誘いにも付き合いなさいっての。皆何だかんだ言いつつ、会いたがってんだからね?
ミッチーへのお祝いソングで盛り上がり、宴もたけなわ……といったところで、退室を促す電話が入った。
まだ昼を過ぎたところで終了時間まではかなりあったけど、今日は混み合っているらしい。
私達のグループは朝イチから入店してたし、仕方ないよね。それでも五時間以上は歌ったし、そろそろ皆して選曲のバリエも尽きてたし、良い頃合いだったかも。
名残を惜しんで皆で仲良く一曲歌い、改めてミッチーにおめでとうの言葉をそれぞれ叫んで受付に向かったところで、知った顔に遭遇した。
「おーい、八重樫くーん!」
名前を呼んで手を振ると、八重樫くんはこちらを見て目を見開いた。
「え、柊? 何でこんなところにいんの? 確か家、遠いよな?」
「うん、電車賃差し引いてもカラオケはここが一番安いからさ。ウチの周り、近くに系列店ないんだよね」
「あー、そりゃ切実だぁ。小遣いにも限りあるかんなぁ」
「伊吹ー、待ち時間二時間だってよー、どーするー?」
八重樫くんの語尾に被って、彼の友人らしき男子が受付から呼びかける声が聞こえた。
「まじで!? 二時間はキツイだろー」
八重樫くんがさっさと向こうに行くと、会計を済ませた紬にがばっと肩を掴まれた。
「那由多、那由多! 今の人、知り合い!?」
「バンコーの制服だったけど、何繋がりよ? 正直に答えなさい」
優花が背後から覆いかぶさってくる。
「結構カッコ良かったよね!? タイプかもー! ねねね、紹介して紹介して!」
シオリンも手を握っておねだりしてくる始末。
「バンコーって優等生なイメージあったけど、変わったぁー今変わったぁー! あのやんちゃっ子感たまんなーい! 頭良くてやんちゃっ子って、美味しすぎん!?」
ちょっと、ミッチーまで何ウキウキしてんの。彼氏できたばっかでしょうが。
那由多ママは、あんたをそんなふしだらな子に育てた覚えはありませんよ!
八重樫くん達は、結局カラオケを諦めたらしい。
で、友人達にせがまれてお互いのグループを紹介し合ってこれからお茶でも、って話になったんだけど……八重樫くんのお友達は乗り気だったのに、肝心の本人が及び腰でまたの機会に、で終わった。
八重樫くん曰く、
「女子の集団、怖い、無理」
とのことで。中学の諸々がトラウマになってるんだろうなぁ……。




