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アオハル of the Dead End!  作者: 節トキ
LESSON 0 恋人になろう!

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4/10

0-4 ペロリンキャンディーは美味しかった、それだけが救いだった


「だったら別れればいいだろ。おい、我が恋人。今すぐ別れるぞ」



 悩める私の元へ、思わぬ救世主が現れた。一人ムキムキ運動に飽きたようで、芝生をコロコロ転がって遊んでいた有瀬くんだ。


 何もかもこの男のせいなのに、このクソふざけた上から目線の提案が助け舟に思えるから腹が立つったらない。


 とはいえ、少なくとも城咲さんよりは話が通じそうだ。


 元はと言えば彼の不用意な言動が原因だけど、こんな流れで恋人同士になるのは有瀬くんだって不本意に違いないもの。それにこんなイケメンと付き合うなんて、平凡極めた私には荷が重すぎる。シンデレラストーリーは実際に体験するより、憧れてるままでいい。自分、身を弁えてますから。



「うん、今までありがとう、有瀬くん! じゃあサヨナうんも!」

「何言ってるの、留佳! あなたが彼女を恋人だって言ったんでしょう!」



 ほんの一時間ほどの短い今までに、大してありがたくもない経験について心にもない感謝の気持ちまで述べたのに……最後のラを言えばお終いだったのに……別れの言葉を告げることは叶わなかった。


 城咲さんに、巨大な棒付きペロリンキャンディーを口に突っ込まれたせいで。



「言った。だから恋人になった。で、別れる。何か問題あんのか」



 不貞腐れたように芝生に座ると、有瀬くんは仁王立ちする城咲さんを睨み上げた。


 髪がボサボサになっても芝まみれになっても、イケメンはイケメンなのだなぁと私はどうでもいいことを思った。ペロリンキャンディーがピッチリ口の端にハマって、押しても引いても抜けなくなってたので。

 舐めて溶かして隙間を作らなきゃ喋ることもできないんだから、イケメンでも鑑賞して時間を潰すしかないでしょ。



「アリもアリ! クロオオアリもムネアカオオアリも越えてギガスオオアリクラスの大アリよ! じゃあ聞くけど、留佳。あなた、この子と恋人らしいことをした?」



 虚をつかれたようで、有瀬くんの身がわかりやすく揺らぐ。



「マ、マイムマイムを踊った」



 すると城咲さんはフッと鼻で笑った。



「へっへーい、そぉれだけぇ? マイムマイムを踊るなんて、小学校の行事でやることじゃなぁいぃ? 私達も小五の宿泊学習でやったよねぇぇい? だったらぁ、あの時同じクラスだった子達全員、留佳の恋人だったってことぉ? うわうわこりゃこりゃ二股どころの騒ぎじゃないわぁ、留佳がそんなフシダラミダラな奴だったなんて知らなかったなぁぁあーあー」



 変顔をしながらくねくねと身をくねらせて有瀬くんの周りを回る城咲さんを見て、私はちょっとゾッとした。


 どうしよう……この人、思った以上に変だ……! 変顔しても美人すぎるってところも怖いけど、煽り方が小学校低学年の男子レベルってギャップの落差で脳が捻れるような恐怖を感じる……!



「違う、俺はフシダラミダラじゃない。小学校の奴らは恋人じゃない」


「嘘つき」



 有瀬くんの否定を、城咲さんは一言でぶった切った。



「じゃあこの子だって、恋人じゃないでしょ。なのに留佳は、恋人だって言ったわよね。ふうん、留佳、嘘ついたんだ。嘘つきなんだ。嘘ついたんだから、閻魔様に舌を抜かれるわね。あーあー、かーわいそー、プークス」



 嘘つきは閻魔さんに舌を抜かれる、か。そういえば幼稚園の時にそんな話聞いたっけ……と懐かしんでいたら、有瀬くんの様子がおかしいことに気付いた。


 え、だらだら冷や汗流してない?

 この稚拙な挑発が効いてる?


 まさかこのイケメン、閻魔さんを心から恐れてるの……!?


 薄々察してたけど、有瀬くんも城咲さんと同じくらい重度の変人らしい。突発的に猛牛憑依するし、いくらイケメンでもちょっとお近付きになりたくないわね。


 そもそも、考えてみれば次元を突き抜けたようなイケメンと平凡代表の私、こんな二人の世界線が交わることすら奇跡なのだ。

 私みたいな一般人にとって、イケメンは観賞用。目で愛でる権利だけをありがたくちょうだいいたすにして、今後一切関わらないようにしよう、そうしよう。


 心に決めるが早いか、ペロリンキャンディーをはめ込んだまま私は立ち上がり、じりじりと別世界じみた美形変人達から距離を取り始めた。



「ど、どうすればいい? どうすれば、俺は嘘つきにならずに済む?」

「簡単よ」



 有瀬くんの問いを受けて、城咲さんが私の背後に回り込む。その素早さといったら、まさに忍者級だった。

 退路を断たれた上に、彼女の手でぐっと体を押される。そのバカ力、まさに怪獣級。なすすべなく、私は有瀬くんの前に突き出され、ペロリンキャンディーがどハマリした間抜け面を晒すことになった。



「あなたがこの子を恋人だと言ったんだから、恋人らしいことをすればいいのよ。そうすれば嘘じゃなくなるでしょう?」



 有瀬くんは無表情で私を仰いで――けれどもすぐに立ち上がり、あっさりと見下ろす側となった。今更だけど、すごく背が高い。180センチ超えてるんじゃないだろうか?


 長身要素までしっかりと網羅しているとは……このイケメン、創造神の寵愛を受けすぎだ!



「俺は、嘘つきにはなりたくない。閻魔さんに舌を抜かれたくない。舌を抜かれたら、お菓子が食べられなくなる」



 が、有瀬くんが真剣な表情で告げたのは、何のこっちゃらやらな主張だった。あーあ、創造神の寵愛も台無しだ、こりゃ。



「言ったからには貫き通す。我が恋人、お前は俺の恋人だ。異論も反論も認めない。俺が決めたことだ、とやかく言われる筋合いはないからな」



 眉を寄せた険しい表情も、厳しく凛々しい口調も腰が砕けそうになるくらいカッコ良かったのに――カッコ良すぎるからこそ、中身のダメさが際立ってダメダメだった。逆の意味で力が抜けて、足腰が砕けそうになった。


 有言実行、大いに結構。


 でもだからって無関係な人を巻き込まないで! 嘘つきになりたくないなら最初から嘘つくんじゃない! あと見せつけるようにムキムキ運動再開すんな! どれだけイケメンだろうと、あなたとは二度と踊りたくありません!!


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