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アオハル of the Dead End! ~平凡女子高生、顔面チートで頭赤ちゃんな超雑男子とラブコメ(ほぼコメ)する~  作者: 節トキ
LESSON 8 恋人の友達と知り合おう!

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8-4 私の家はお菓子の家じゃない


「有瀬もフラれんなよ? ちっとばかし顔が良いからって調子こいてたら、俺が顔面ボコボコになるまでブン殴って原型留めなくしてやっからな」


「……その前に、あなたのその調子こいてるお間抜けな顔が、首から断ち落とされるけれどね?」



 ファミレス内の空調より冷たい空気が、前方から流れてきた。そっと顔を向けてみれば、城咲さんが八重樫くんに氷の槍の如き凍てついた視線を突き刺している。



「ねえ、それより勉強会やるんだって? 茉絢ちゃんから聞いたよ」



 殺意に満ち満ちた冷気を打ち破ったのは、久月くんの明るい声だった。



「良かったら僕達も混ぜてよ。僕達の高校、課題の量がハンパないんだよね」


「久月くんと八重樫くんって、どこ通ってるの?」


万果(ばんか)高校だって。今日はこっちの方で、ボランティア活動の課外授業だったそうだよ。二人共、頭いいんだね!」



 私の疑問に、茉絢が頬を上気させて答える。


 バンコーといったら、近隣屈指の私立進学校だ。金銭的な問題で諦めたけど、茉絢にとっては今も憧れの高校らしい。


 久月くんはわかるとして、八重樫くんもバンコー生なの? 何かイメージと違う……。



「柊、何だよ、その目は。俺がアホそうに見えるって言いたいのかよ。そうだよ、俺はアホだよ。アホで何が悪いんだよ」


「い、いえ、そんなことは」



 慌てて私は目を逸らした。やばい。このアホ、鋭い。



「八重樫は陸上のスポーツ推薦だからね。アホだよ」



 間髪入れず、久月くんが肯定する。


 何だ、良かった。アホで間違ってなかった。本人も自己申告してるし、私、何にも悪くなかった。



「えーと、二人増えるとなると全員で六人だよね。我が家にはそんな大人数で勉強できるスペースなんてないし……」



 八重樫くんも久月くんも、有瀬くんと城咲さんの友達とはいえ今日知り合ったばかりの人だ。一緒に勉強するのは良しとしてもいきなり家に招くのは、ちょっと抵抗がある。


 そんな気持ちをオブラートに包みながら伝えようとしたら、久月くんは人差し指を立ててみせた。



「それなんだけど那由多ちゃん、勉強会は僕の家でやらない? そんなに綺麗じゃないけど広さだけはあるし」



 思わぬ申し出に、私はぽかんとした。

 が、慌てて両手と首を横に振って、ご遠慮のポーズを取る。



「わ、私までお邪魔するなんて、申し訳ないよ。だって私、まだ久月くんとほとんど話せてないし、人となりが掴めてないでしょ? もしかしたら怪しい宗教一家の一員でヤバい勧誘されたりだとか、実はスリの達人で金目の物を狙われたりだとか、そういう可能性もあるんだよ? 心配じゃない?」



 久月くんにとっても、私は軽く自己紹介しただけの他人だ。有瀬くんと城咲さんの大切な友人だとわかっているからこそ、ご迷惑をおかけするわけにはいかない。


 そんな気持ちで遠回しに辞退の旨をお伝えしたのだけれど、久月くんはぷっと噴き出した。



「心配なんて全然してないよ。むしろ大歓迎。那由多ちゃんとも、もっとお話したいと思ってるからね。そうだ、お昼は僕が作るよ。余った食材で適当に作るだけだから大したものは出せないし、お口に合わないかもしれな」


「ハイッ、喜んで行きまっすっ! 開催地は久月家に決定! 異議なし!」



 私が食い気味に返答したのは言うまでもない。


 だってこんな可愛い子の手料理ですよ、手料理。間違いなく美味しいやつじゃん!



「……那由多の家、行きたかった」



 が、一人だけ、不満を申し立てる奴がいた。有瀬くんだ。



「もー、いい感じにまとまったんだからグズグズ言わないでよねー。私の家なんかいつでも来れるじゃん。そんなに来たきゃ、好きな時に来ればいいでしょ!」


「いつでもいいのか? じゃあ今から行く」


「え、いや今からはちょっと」


「今から行く」


「え、えええ……」


「今から行く」



 有瀬くんが私を見つめて、真顔で繰り返す。


 まずい、本気で行く気満々になってるぞ、これ。

 ああもう、何でこんなに私の家に興味津々なの……ってそうか、青飴のストックがあるって知ってるからか。久月くんの手料理に浮かれていたとはいえ、失言だったわ。面倒臭いことになってしまった。



「はいはい、ストップ。留佳は今から僕の家で片付けの手伝いね。でないと、留佳だけ出禁にするよ?」



 向かいの席から身を乗り出して、久月くんが有瀬くんのおでこに手を当てて止めてくれた。


 ふえー、助かったぁ……実はマイルーム、またもや精神的苦痛を与えるカオスに逆戻りしちゃってるのよね。


 ち、違うよ? 雑になったんじゃないからね? 試験勉強で忙しくて掃除する暇がなかっただけだからね?


 話がまとまり、有瀬くんも久月くんが責任持って引き取ってくれることとなったので、今日はこれにて解散となった。


 電車通学組の有瀬くん達とは、ここでお別れ。

 茉絢と私は手を振って、彼らが駅に向かうのを見送った。


 楽しそうに語らいながら去っていく四人を見て、私の胸に何とも言えない寂しさがぽつんと宿った。

 ツンデレ炸裂させながらも久月くんには甘える城咲さんも、八重樫くんと肩を組んで軽口を叩き合う有瀬くんも、初めて見る顔をしてた。


 そうだよね、私と有瀬くん達は知り合ってまだたった三ヶ月なんだもん。私なんかよりも長い期間を過ごしてきた友人に、心許した表情を見せるのは当たり前だよね。

 久月くんと八重樫くんは、私の知らない二人のいろんなことを知ってるし、いろんなとこを見てるんだろうな。


 たとえ私がこれから有瀬くん達と同じ月日を過ごしても、これまであの四人で積み重ねてきた年月には追い付けない。


 仕方ないことだとわかっていても、皆とじゃれ合う有瀬くんの後ろ姿が全然違う世界の住人みたいに見えて――――距離よりも遠く感じた。


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