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アオハル of the Dead End! ~平凡女子高生、顔面チートで頭赤ちゃんな超雑男子とラブコメ(ほぼコメ)する~  作者: 節トキ
LESSON 8 恋人の友達と知り合おう!

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8-2 黒歴史の呼び声


「おー、有瀬ぇー。お前もいたのかー」



 八重樫くんなる男子は、有瀬くんに視線を落とすとたちまち態度を変えて絡み始めた。



「へぇーえ? 城咲だけじゃ物足りなくて、他にも女の子侍らせてるってか? いいご身分だなぁ、オイ?」


「いいご身分だろ。羨ましいのか、羨ましいんだな、そうなんだろ」



 しかし有瀬くんは、ヤンキーみたいに肩に組み付いてオラついてくる八重樫くんに全く動じない。動じないどころか、楽しげに煽ってるではないの。


 あれ、この距離感……もしや?



「ばっ……ちげーし! んだよてめえ、相変わらず感じ悪いな! う、羨ましくなんかねーし! 俺だって百人や二億人侍らせることできるし!? できるけどしないだけだし!?」


「八重樫は相変わらずうるせぇな。久しぶりの喚き声で耳が痛ぇ。今来たとこ? 良かったらこっち座る?」


「だ、誰がお前なんかの施しに……い、いいのか? じゃあお言葉に甘えて、お邪魔させていただきまぁす!」



 有瀬くんとのやり取りを少し見ただけでわかった。うん、八重樫くん、クソチョロい。



「八重樫ー! いたいた、もー何してんの! いきなり道路渡って店に飛び込んでくから何事かと……」



 八重樫くんが座ろうとしたところで、驚きがビックリな可愛い子が現れた。


 うわぁ、これぞ可愛い系の究極って感じの正統派美少女だぁ!


 サラサラのショートヘアも似合ってるけど、ロングにしたら間違いなく茉絢イチオシの乙女ゲーの実写版ヒロインって感じになるよ……勧められて私もプレイしたんだ、『可愛い系の悪役令嬢はダメですか?』!

 悪役令嬢なのにありがちな意地悪顔じゃないってとこがポイントで、顔だけはゲームヒロインより可愛いんだよね。なのにきっちり腹黒で、狙った攻略対象は可愛さをフル活用してどこまでも追い込む姿勢がほんと清々しくて! あの爽快感は他の乙女ゲーじゃ味わえないわ!

 実写映画化した際には、是非主役をこの人にお願いしたい!


 ……などと心ときめかせていたら、茉絢も同じ気持ちだったようで、二人で顔を見合わせて手を握り頷き合った。


 やはり同じ思いであったか、友よ!

 後で久々にあのゲームについて語り合おうじゃないか、友よ!



「あれっ、明日香ちゃんに留佳、春休み以来だね。あーあー、なるほどね。八重樫の明日香ちゃん探知機が作動したのか」



 しかし、この美少女、妙に声が低い。


 背も高いし喉仏も出てるし……んんん? こいつはもしや?



「あら、(こう)くん、久しぶり。ちょっと見ない間にまた背が伸びたんじゃない? 大分可愛くなくなってきたわね」


「まあね。さすがに高校に入ってからは、僕を女の子と間違えるようなバカはいなくなったよ」



 城咲さんとの会話で、私と茉絢は同時に項垂れるようにへこっと頭を下げた。


 ごめんなさい……ここにバカが二人います……。



「紅、お前も座る? 奢るって、八重樫が」


「言ってねぇよ!?」


「やったね。じゃあ遠慮なく。せっかくだから和牛ステーキ御膳フルコースセットにしようかな」


久月(くづき)、てめえも乗ってくんじゃねぇよ!」



 私達がいるのはソファー席だったので、二人増えたところで問題はない。


 可愛いヒロイン系の男の子は向かいの城咲さんと茉絢の側に、八重樫くんは有瀬くんを挟んで私がいる席に座ることとなった。


 が、八重樫くん、斜め向かいの城咲さんをチラチラ見ている。


 この人、クソチョロい上にわかりやすいとか、生き辛いようで生きやすそうでやっぱり生き辛そうなタイプだなぁ。



「こっちは久月紅、幼馴染。これ、八重樫伊吹。友達」



 有瀬くんが雑に紹介すると、



「有瀬くん、友達なんていたの!?」



 抉るような突っ込みをぶち込んだのは、茉絢だった。


 先に突っ込んでくれてありがとう……一歩遅かったら、私が切り込んでたよ……。



「うん。過去形じゃなくて現在形でいる」



 特に気を悪くした様子もなく、有瀬くんはパンケーキの最後の一切れを名残惜しそうに飲み込んで頷いた。


 え?

 てことは、有瀬くんも城咲さんも高嶺の花は孤独状態ではなかった……? 私の勘違い……?


 イヤー!

 勝手にぼっち認定して勝手に想像して泣いた私、サイッテーー! 二人に失礼すぎるーー!



「別に、友達っつっても仲良いわけじゃねーし。こいつが友達になってくれっつーからなっただけだし」



 己の無礼さに打ちのめされて半泣きになっていたら、八重樫くんが唇を尖らせて吐き捨てるように言った。



「紅が同じクラスで友達を作った方がいい、八重樫ならチョロいし余裕でイケるって言うから、仕方なく声かけた」



 有瀬くんが平然と可哀想な事実を打ち明ける。



「誰がチョロいんだよ!? 俺か、俺のことか!? ああ、そうだよ! どうせ俺はチョロいよ! 悪かったな、チョロくて!」



 この人、自覚あるんだ。

 雑を自覚してない有瀬くんよりはマシ……でもなさそうだな。有瀬くんの友達だけあって、やっぱりちょっと変な人っぽい。



「へ、へー……二人はいつからお友達になったの?」



 正直、あまり口を挟みたくはなかったものの、このままでは八重樫くんが泣かされそうだと思ったので、私は取り敢えず無難な質問をした。



「確か、中一のゴールデンウィーク明けの初日だよ」



 久月くんがドリンクバーのオレンジジュースを片手に微笑む。



「僕と明日香ちゃんとクラスが離れて、留佳がぼっちになっちゃったからさ。僕の勧めで留佳が八重樫に声かけて、友達になってほしいって言ったんだ。ところが八重樫が、とんでもない条件を出してきて」


「あっ……あーっ! 思い出したわ! こいつ、あの時の!」



 城咲さんが目を見開いて、八重樫くんを指差す。



「留佳に靴を舐めろって命令したクソ野郎ね! 私がボコボコにして事なきを得たけど、三年間全学年の女子に無視されてざまぁなかったわ! ちょっと紅くん、サラチューの永久戦犯がどうしてここにいるの!?」



 久月くんが濁そうとしてくれていた事実は、城咲さんによって無情にも白日の下に晒された。


 ああ、余計な口出しするんじゃなかった。気を利かせるつもりが、裏目に出てしまった。


 八重樫くん、両手で顔覆って震えてるよ……。不本意とはいえ、黒歴史を掘り返すことになって、本当にごめん……。



「そのまま舐めるのは嫌だったから、次の日に家からチョコソース持ってきた。それを靴にぶっかけたところで、八重樫が泣きながら謝ってきて、友達になった」



 有瀬くんが補足説明してくれたけど、私までつらくなってきた。


 もうやめたげてよ……中学の時に好きだったキャラのブロマイドを拡大コピーして、唇部分にマシュマロくっつけてキス練してるところをママに見られた記憶が何故か蘇っちゃったじゃない。


 これが共感羞恥ってやつ? つらい、つらすぎる……。


 ほろほろ涙を零していたら、茉絢がそっとハンカチを差し出してくれた。

 見ると、親友はぐっと唇を噛み締めて悲愴な表情をしていた。


 ああ、君もこの苦しみに耐えているんだね、マイ・ベスト・フレンド。わかるよ、私も同じだから。

 うん、忘れたままでいたかったよね、つらいね……つらいね……。

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