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アオハル of the Dead End! ~平凡女子高生、顔面チートで頭赤ちゃんな超雑男子とラブコメ(ほぼコメ)する~  作者: 節トキ
LESSON 6 お家にお呼ばれしよう!

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6-3 引き出しの中身はグロと鬱、以上


 現在、私はペンネーム瀬里(せり)さん改め本名、志貴(しき)さん――ちなみに漫画家さんでペンネームが瀬里(せり)彰嗣(あきし)というそうな――が運転する車の助手席にいる。


 あの後、志貴さんは私の手を掴んだまま、書店員さん達に挨拶をして本屋を出た。そして『面倒事に巻き込んだお詫びがしたい』と言われたので、何はなくともまずは服を着替えてほしいと訴え、まずは彼女の家に向かうことになりました、という次第である。


 そうなんだよねー、この人、着替えも持ってきてなかったの。今も巻きシーツ姿のまんま運転してるんだよ。巻きシーツ姿でもイケメンレディはイケメンレディなんだけどね。



「つまり、隠れんぼ方式の先着一名限定っていう謎のサイン会は、やりたくないのにやらなきゃなんない大人の事情……ってわけですか……」


「そういうこと。私としてはサイン会というイベントに意味を見出だせないんだよね。作者が顔を見せたところで作品が変わるわけじゃないし、サインなんて自筆で名前を書いただけじゃないか。そんなものに、何の価値があるのかさっぱりわからない。なのにあっちこっちからサイン会をやれやれ、サインを書け書けってうるさく言われるから、仕方なくこういう形ならって妥協案を出して、お互いに我慢しながら何とかやってるっていう感じだね」



 あんなヘンテコなサイン会が許されるものなんだろうか? と思ったけれど、きちんと前もって連絡確認して、許可してくれたところでしか開催しないらしい。

 しかし、これまで拒否されたことは一度もないんだとか。



「うーん、でも価値観は人それぞれだし、心から志貴さんのサインをほしがっているファンの人が可哀想ですよ。いっそ転売で価値が全くつかなくなるくらい、書いて書いて書きまくって、バラ撒き散らせばいいんじゃないかな? そうすればファンの人全員に行き届くし、二束三文でしか売れなくなるから転売ヤーも撲滅できるでしょ?」


「……君、意外と鬼畜なこと言うね。ファン全員に行き届かせるとなったら、一生をサイン書きに費やすことになるじゃないか。だったらファンの皆のためにも、作品を描きたいよ!」



 えっ? この人、一生サイン書かなきゃならないくらいファンがいるの?


 そういえばさっきの本屋の書店員さん達も、変なカッコで変なサイン会を開催した志貴さんに嫌な顔をするどころか、皆して群がって握手を求めてたっけ。

 あれって志貴さんがシーツを脱いだらイケメンレディだったから、知らなかった皆が感激したせいだとばかり思ってたけど、もしかしたらそうじゃなくて……。



「……志貴さんって、実は有名な漫画家さんなの?」



 疑問をそのまま口に出すと、志貴さんはぱあっと顔全体に笑みを咲かせてこっちを見た。



「那由多ちゃん、ついに私の作品に興味持ってくれた!? R15+だから那由多ちゃんは知らないかもしれないけど、今連載してるのは『ブランド・ニュー・レイジ』っていうアクション物だよ! 熱い男達の闘いを描いた最高に滾るブロマンスなんだ!」



 好きなことに夢中になる少年みたいな笑顔は、さっきまでファン男、改め転売ヤー男を凄んでいた人ととても同一人物には見えなかった。


 おいおい、二面性のあるイケメンレディとか要素盛りすぎじゃない? ちょっと変なとこもあるけど、敢えてのハズシ要素としてアホ可愛さまで加わっちゃうよね。



「ああ、タイトルは知ってる。ママの本棚にあるやつだ。読もうとしたら、ママが慌てて飛んできて『那由多にはまだ早い!』って取り上げられたんだよね。てっきりえっちな方面でヤバいのかと思ってたのに、検索したらグロ表現があらゆる意味で地獄ってあちこちで見たから今もまだ未読なの。私グロ耐性なくて……って志貴さん、前見て前! 運転中は余所見しないで!」


「はいはい、ほらぁちゃんと曲がったよー。もー、那由多ちゃんは大袈裟だなぁ。川に突っ込んだくらいじゃ死なないってー。それより作品の話なんだけどさあ、グロが苦手なら『死して尚狂い』をオススメするよ! トラウマ級の鬱作品を揃えた珠玉の短編集なんだ! 二年前の『このマンガがエグい!』で精神グロ部門第三位にも選ばれた自信作だよ!」


「いや、精神グロって結局グロじゃないすか……自分、鬱作品も無理っす……何で作品読んで鬱になんなきゃならないの……せめて空想の世界の中でくらいハッピーでいさせてよ……はい、左寄り過ぎ! 電柱注意!」


「ほいよっ、回避っとーんじゃー那由多ちゃんは、どんな漫画なら読むんだよー? グロもダメ、鬱もダメ……もう私には引き出しがないよ! 全然オススメできないじゃないかー!」


「コラ、感情に任せてアクセル踏まない! 黄色信号はほぼ止まれと同義だからね! 志貴さん、引き出し少なすぎない? 私が読むのは、キュンキュンする恋愛物とか、ワクワクするスポーツ物とか、ほのぼのする日常物とかだよ! グロと鬱はミュートどころかブロック案件なの!」



 志貴さんのお宅は、思っていたより遠いようだ。私の家の近所にあった本屋さんから、既に三十分は車を走らせている。

 気付けば辺りの景色は、閑静な住宅街から背の高い建物が並ぶ繁華街へと移り変わっていた。どうやら近辺の主要駅となるターミナル駅付近のエリアにまで来たらしい。



「私の作品にだって、キュンキュンワクワクほのぼのするところが人によってはあるかもしれないのになー。ちぇー、那由多ちゃんくらいの年の子の感想がほしかったのにー。息子に読ませようとしたら、旦那に怒られるしー」



 駅前通りは渋滞一歩手前の混み具合といった感じで、こうなるとさすがに志貴さんも無茶な運転はしなくなった。できなくなった、という方が正しいかもしれない。



「へえ、志貴さん、息子さんがいるんだ。年いくつ? どんな子? 可愛い? 志貴さんに似てる?」



 なので私もやっと安心して、志貴さんとの会話を楽しむ余裕が出てきた。



「あっ、そういや那由多ちゃん、高一だって言ってたよね。息子も同い年なんだよ」



 と、ここで、志貴さんから爆弾発言が飛び出した。


 ウッソー! 志貴さんの息子さん、私と同じ高一なの!? じゃあ志貴さんって、私のママと同年代なの!?

 まじか、全然見えない……まだ二十代後半、いってても三十代前半だと思ってたよ。美魔女すぎる!


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