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アオハル of the Dead End! ~平凡女子高生、顔面チートで頭赤ちゃんな超雑男子とラブコメ(ほぼコメ)する~  作者: 節トキ
LESSON 4 一緒にランチしよう!

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4-2 実際に、いつまで……いつまで……と呟いていたそうな


「梨奈ちゃんお願い、手伝って! 茉絢の魂が飛んでったの! まだそこらへんに浮遊してるはずだから、早くASMR持ってきて!」


「それを言うならAEDでは?」



 梨奈ちゃんがさらりと突っ込んでくる。


 オナチューで見慣れている上に告白できる程度には鍛えてるみたいだから、さすがに梨奈ちゃんは有瀬くんを前にしても余裕があるようだ。


 一応はフラれた相手だし、ちょっぴり気まずそうではあるけれど……今はそんなことに気遣ってらんない!



「茉絢は声フェチで、老若男女問わずイケボに弱いの! 特に理路整然とした罵倒の言葉が好きすぎて、本性はドSなのに罵られたがりっていう困った子なの! 手遅れになる前に早く!」


「えぇ……間違ってないんかい。しかも出会ってまだ日が浅い友人のえらい特殊な性癖暴露されて、自分かなり戸惑ってるんですけど。ええと、ちょっと待ってて。取り敢えず、茉絢が好きだって言ってた乙女ゲーの声優さんの動画検索してみるから」


「んああ、ちょっとも待っていられないよ! このままじゃ茉絢が群がる天使どもに連れ去られちゃう……ああっもう! 有瀬くん、ちょっとこっち来て!」



 焦り狂いながら、私はスマホを弄り始めた梨奈ちゃんから有瀬くんにヘルプ相手を変更した。



「腹減った。動きたくねぇ」


「うるさいっ! ほらっ、お菓子あげるから! 私のお願い聞いて!」


「お菓子? お菓子、お菓子」



 ポケットから出した小さなチョコをチラつかせると、有瀬くんは素直にトコトコとこちらに駆け寄ってきた。


 無造作ヘアはただの寝癖、憂いを帯びた表情は単に空腹なだけ、そうとわかっていても美形が過ぎる。雑な性格によって乱された要素までも、彼の造形美を引き立ててる。これは茉絢が召されるのも無理はない。


 でもだからって、みすみす親友をエンジェルワールドに引き渡すわけにはいかないの!


 チョコを有瀬くんに押し付けると、私は茉絢の上半身を支えながら早口で告げた。



「有瀬くん、この子の耳元で何か喋って。何でもいいから!」


「何でも。何でもって何だ」


「その調子だよ! ほらもっと!」


「もっとと言われても、何も思い付かない」


「思い付かなくても何か思い付いてよ! そ、そうだ! 閻魔さん保証に茉絢の舌もプラスしようじゃないの! やったね有瀬くん、ライフが増えるよ!」



 有瀬くんは私が渡した小さなチョコを平らげると、包み紙をじっと見つめて、口を開いた。



「エネルギー、65kcal、タンパク質、0.5g、脂質、4.2g、炭水化物、5.4g……」



 ――やるじゃない、有瀬くん!


 栄養成分を読み上げるとは、雑なりに考えたものね。初めて尊敬したかもだわ!



「……ふわっ!? 何何何、イケボの悪魔がわたしに真夜中の炭水化物は至福の味だと囁いてる……うん、ダイエットやめるわ、わたし! ナユ、今日はチョコパ食べに行こーぜ!」



 イケボ効果はてきめんで、茉絢はすぐに元気良く蘇った。



「茉絢ーー! 良かったーー! 魂ぶっ飛ぶのは声優さんのイベントじゃよくあったけど視覚では初めてだったから、超焦ったよーー! もう戻ってこないかと思ったーー!」


「わたしが簡単に逝くわけないっしょ。まだまだイケボの罵声を聞き足りないんだからさっ。さあ共に祝おうぞ、吉良(きら)茉絢ダイエットやめたった記念日を!」



 天に拳を突き出す茉絢を抱き締めて、私は号泣して彼女の無事を喜んだ。


 でも……ごめんね、茉絢。

 命を救うためとはいえ、本人の了承を得ずに閻魔さん保証に組み込んじゃったよ。チョコパ奢るから許して。


 梨奈ちゃんはというと、茉絢が生還を果たしてからも、私が密かに心の中で懺悔している間も、ずっとスマホを弄っていた。


 茉絢のためにイケボ声優さんの動画を検索してるんじゃなくて、有瀬くんを撮影してるの、とっくにバレてるからね。ずっと咳払いして誤魔化してるつもりらしいけど、それだけ連続撮影してたらシャッター音なんか誤魔化しきれるもんじゃないからね。


 あーあ、魅力窃盗宣言された時からわかってたけど、梨奈ちゃんはやっぱり友情より恋を取るタイプみたいだ。ちょっと寂しい。




「遅い、遅い遅い遅い! 二人共何してるのよ何してたのよ何しくさってくれてんのよ! 人をいつまで待たせれば気が済むの、そろそろ妖怪以津真天(いつまでん)になるとこだったわよ!?」



 有瀬くんに手持ちのお菓子を与えながら道案内してもらった先では、城咲(しろさき)さんがプンスコ怒ってた。

 彼女が待機していたのは、食堂のテラス席だ。



「どう? 恋人同士がランチするには最適の場所でしょ? 学校案内のパンフレットで見てからずっと目を付けていたのよ。でも人気スポットらしくて、競争率がすごく高いみたいなの。今日は何としても(ひいらぎ)さんとランチするって決めていたから、授業が終わったらすぐに猛ダッシュで来て、ライバル達を力技で蹴散らして席確保したんですからね!」


「アッ、ウン、ホントーアリガトー。ワー、ステキナバショダネー」



 得意気に胸を張る城咲さんを見てたら、もう来たことある、なんてとても言えない……。


 笑顔でお礼を言うと、私は彼女に促されて椅子に座った。

 丸い白テーブルには本当なら四脚の椅子があるはずだけど、城咲さんが別の席の人に貸し出したらしい。三人なんだから、三つでいいもんね。



「柊さんはお弁当なの?」


「ううん、今日はコンビニでおにぎり買ってきた。今朝はちょっと寝坊して作れなかったからさ」


「今朝は……って、え? い、いつもは、じ、自分で、つ、作ってるの?」



 何故か震え声で城咲さんが問いかける。慄きわななく美人も乙なものだなぁ。



「作るといっても、冷食詰めるだけのお手軽簡単弁当だよ。高校は給食がないから、自分でお弁当作りなさいってママに言われたの。ちゃんと作るのは、ママの朝食のお手伝いついでに焼く卵焼きくらいかな」


「朝食のお手伝いもするって……つ、つまりあなた、料理ができるの!? すごい、柊さん、超人じゃないの!」



 えぇ……そんな大袈裟な。


 そう思って城咲さんのお弁当箱を覗いたら、みっちりと固形の栄養補助食品が敷き詰められていた。


 これ、詰める必要あるのかな? 箱ごと持ってくればいいだけなのに、わざわざ詰める手間は何なんだろう。一応の女子力的な……?



「那由多もか。俺も自作だ」

「えっ!?」



 驚いて私は思わず声と顔を上げた。



「俺の家では父が家事を仕切ってて、特に食事にはあれこれと口うるさい。お菓子を食うのも命懸けだ。でも高校生になったら昼飯くらいは好きに食っていいって言われたから、自分で作ることにした」


「へえ、有瀬くん家のパパはしっかりした方なんだね」


「はっ、ただの神経質バイオレンスオヤジよ。いい年して嫁にはデレデレ甘々なくせに、留佳(るか)には厳しいんだもの。無口な割に、私にまでネチネチグチグチ文句言うんだから鬱陶しいったらないわ」



 城咲さんが吐き捨てるように言う。


 神経質、バイオレンス、デレデレ甘々、無口、ネチグチ……うーん、全く人物像が掴めない。



「えっと……家事全般してるってことは、有瀬くんのパパは専業主夫なのかな?」


「仕事してる。元格闘家で今は家庭科の先生だ」



 聞くんじゃなかった。

 ヒントになるどころか、ますますわかんなくなったよ。


 半端に興味持つって一番良くないんだね。謎が謎を呼んで深みにハマってしまった感が……って待て、待て待て待て!



「有瀬くん!? ソレ、ナンナンスカ!?」


「見ればわかるだろ。俺の昼飯だ」



 有瀬くんがお箸を手に、怪訝な眼差しを私に向けて答える。


 彼の前には、真白の四角に黒くて細い棒が何本も突き刺さった、飯と呼ぶにはどうなのか? そもそも何を以ってして飯と呼ぶのか? 果たして飯とは何なのか? と飯の概念が揺らぐような物体が置かれていた。


 ランチ用にしてはやたら大きいバッグ持ってたから中身が気になってはいたけど……いやこれほんとナンナンスカ? まさか線香・オン・線香立て?

 んなわけないよね……って、あっあっ、わかったぞ!



「お豆腐とポッキーだ!」


「うん。那由多はおにぎり、明日香(あすか)はメロリーカイトだな。俺もわかった」



 器用にお箸でお豆腐を掬い、合間にポッキーを齧りながら、有瀬くんが頷く。


 なるほどね、ポッキー豆腐だったんだぁ。良かった良かった、胸のつかえが下りたよー……いや、全然良くない。何だこれ、どうしてこんな組み合わせにしたの? 発想がフリーダムすぎる!


 有瀬留佳流(ザッツ)・オールライト精神、やっぱり凡人の私には理解不能です……。


 有瀬くんは、自作ランチも雑――また一つ、彼に関するしょーもない知識が増えた。


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