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アオハル of the Dead End! ~平凡女子高生、顔面チートで頭赤ちゃんな超雑男子とラブコメ(ほぼコメ)する~  作者: 節トキ
LESSON 19 理想のキスを考えよう!

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19-5 瞬間最大可愛い力、記録更新


「城咲さーん、茉絢ー、お待たせー!」



 トラック周辺にやってくると、私は並んで立っていた二人に声をかけて合流した。



「おお、ナユ。遅かったじゃん」


「ちょうどいいところに来たわね。今から他校との合同練習ですって。あら、留佳は?」



 城咲さんが私の周りに視線を巡らせて尋ねる。



「ご飯食べたら寝落ちた。ねんねんころりんの子守番、久月くんに交代してもらってやっと来れたの」



 うんざり感を隠しもせずに答えると、茉絢か噴き出した。



「何だそれ、ご飯食べたらねんねって子どもか。あんなデカい子がいると、那由多マンマも大変だね」


「最近、寝る時間が遅いせいだと思うわ。柊さんの送迎もあるし、課題もやらなきゃならないから、真央が特別に消灯時間を一時間延ばしてくれてるのよね。家でもよく寝落ちてるわよ。真央が即マグロに包んで部屋に放り込むから、チソチソもたまたまも見放題ってわけにはいかないけれどね」



 城咲さんの言葉に、私はまた脱力した。


 あの唐突な寝落ち、私のせいだったのかぁ。じゃあ久月くんに押し付けず、責任持って最後まで一人で面倒見るべきだったかも。


 それにしても外より家で寝落ちる方が危険性高いじゃない……裸に剥かれて鑑賞されるとか、イタズラの域を超えて犯罪じゃん。やっぱり有瀬家、怖い。もう行かない。



「あっ、始まるみたいよ。ねえ、もっと近くに行きましょ!」



 城咲さんに手を取られ、私と茉絢も付いていった。


 ユニフォーム姿でトラックに立つ八重樫くんは、控えめに言ってカッコよかった。ユニフォームには人を二割増し魅力的に見せる効果があるらしい。

 パイロットとか警官とか、お医者さんとかホテルマンとか、カッコイイもんねぇ……私も部活やってた時は今より二割増しいい感じに見えたのかな? いや、ないよね。うん、わかってるよ。


 合同練習といっても、ちょっとした試合みたいな感じになるらしい。全体的に、緊張感が漂っている。



「伊吹(いぶき)ー、頑張ってねー!」



 遅い、まだか、いつまで待たせるんだ等と愚痴るばかりの城咲さんに代わり、声援を送ろうとしたところで、トラックの内側からエールが飛んだ。


 その人の顔を見るや、私の全身から血の気が引いた。



「何よ、あの女。八重樫くんと仲が良いのかしら? 聞いたことないけど」



 城咲さんが眉をひそめる。


 エールを送った女子――遊佐(ゆさ)さんは、八重樫くんとお揃いの白いジャージを身に纏っていた。どうやら同じ陸上部らしい。


 うわぁ、まじかぁ。二度と会わないと思ってたのに、よりにもよって最悪のセッティングじゃん……。



「へー、八重樫くんモテるんだね。物好きもいたもんだ。でもユニフォーム着てたら、確かにちょっとはよく見えるってのはわかるかな」



 茉絢の感想に頷きで同意を示すと、私は城咲さんの華奢な両肩を掴んで問い質した。



「城咲さん、今の今まで八重樫くんを応援してたんだよね? どこでどうしてたの? 差し入れは? 二人で一緒に過ごした?」


「えっ……? どうも何も、ここで眺めてただけよ? 留佳には及ばないにしても、両足を素早く動かしていたわね。クソつまんねぇってほどではなかったと思うわ。そろそろ飽きてはきたけれど。差し入れはその辺の人にお願いして、紅くんのと一緒にまとめて持っていってもらったわよ。一緒に過ごす必要なんてある? 向こうは練習中なんだし、静かに見学してそっと立ち去るのが礼儀でしょ?」



 んもぉぉぉぉ……この人はぁぁぁぁ……!


 城咲さんの行動を踏まえるに、恐らく、いや間違いなく遊佐さんは城咲さんを認識していないようだ。もしかしたら、八重樫くんも城咲さんは差し入れだけ置いて帰ったと思ってるかもしれない。


 さて、どうする?


 遊佐さんは明らかに面倒な類の女子だ。八重樫くんの彼女が来てるなんて知れたら、何をされることか。

 しかもその問題の彼女は、見た目こそ麗しいけれども、幼き頃に各務(かがみ)真央(まお)から手解きを受けた生粋の戦闘民族だ。


 この二人がぶつかり合えば、確実に戦争が起こる。やっぱりやり過ごすのが正解、だよね?



「あ、走り始めた」



 号砲と茉絢の声に合わせ、八重樫くんが駆けていく。洗練された美しいフォームだった。


 ほう、と吐息をついて城咲さんの横顔を窺った私は、少なからず驚いた。夢見るように大きな瞳を潤ませて、柔らかな頬をほんのりと紅潮させていたから。


 白い息が雲のように緩やかに漂う中、そんな城咲さんの表情は今までで一番綺麗で、一番切なくて――――胸が掻き毟られるように、堪らなくなった。



「八重樫くーん! 城咲さんが来てるよー! ほら、ここだ、ここー! わかったかー!? わかったら死ぬ気で走れー!」


「ええ!? ちょちょっと、吉良(きら)さん!?」



 私より一足早く、茉絢が叫ぶ。さすが親友、以心伝心だね!



「そうだよ、八重樫くーん! 城咲さんにバッチリいいとこ見せなよー! もしかしたら、ご褒美があるかもよー!?」


「柊さんまで!? や、やめてよ! 見学は静かにしなくちゃ!」



 ちょうどこちら側のトラックに駆けてきた八重樫くんが、城咲さんの姿をついに認めたらしい。


 驚いたように目を瞠ると――雲が一気に晴れたような爽やかな笑顔を見せ、ぐっとスピードを上げて通り過ぎていった。


 ふわぁ……やばい、初めて八重樫くんにときめいたかも! 何よ、あのスポーツマン全開のフレッシュ漲るアオハルい笑顔! あんなのズルいわ!


 そのトキメキ笑顔のお届け先である城咲さんは、呆然と彼の背を見送ってから、嬉しくてつい零れ落ちてしまったような笑みを浮かべた。


 この瞬間――――城咲さんの可愛いレベルは、私が知る城咲さん史上最高値を超えた。


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