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アオハル of the Dead End! ~平凡女子高生、顔面チートで頭赤ちゃんな超雑男子とラブコメ(ほぼコメ)する~  作者: 節トキ
LESSON 19 理想のキスを考えよう!

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19-2 アオハル不感症は両足を素早く動かす彼が見たい


 学校が半日になった分、アルバイトを増やすのもいいかなと考えなくもなかったけれど、学生の本分はやっぱり勉強……否、アオハルだ。



「ねえ柊(ひいらぎ)さん、お願いがあるんだけど」


「何だろ、城咲さん。私に叶えられることかな?」



 晴れ渡る冬空の下、午前で学校が終わった帰路で、城咲さんが妙に深刻な表情で告げた。



「一緒に、運動公園にある陸上競技場に来てくれない……?」


「え? ……あいったたたた! 有瀬くん、止まって止まって、止まれってば! 腕折れるボキッてなるボキボキの蛇腹になる!」



 ポケット手繋ぎ改め、有瀬くんとポケット腕クロスで歩いていた私は足を止めるや、絶叫した。私の腕を前にしていたために、有瀬くんの動きに合わせて肩ごと持ってかれそうになったせいだ。


 くそぅ、手が抜けやすいようにポケットのボタン外してもらうんだったよ。無駄に痛い思いした!



「急に立ち止まる那由多(なゆた)が悪い。俺は悪くない。でもごめんなさい」


「ああ、そうだね! 私が悪かったね! はいはい、ごめんなさいできたね、いい子だね!」



 引っこ抜いた手で有瀬くんの頭をわしわしと高速で撫でてから、私は城咲さんに向き直った。



「陸上競技場って、もしかして八重樫くんの?」



 城咲さんはこくりと頷いて、ふわっと柔らかく口元を綻ばせた。



「いつもは学校のグラウンドで部活動してるから、部外者は入れなかったの。でも、今日は誰でも練習を見学できるんですって。八重樫くんが走ってるところ、一度見てみたいと思ってたのよね」



 ええっと? 何か城咲さん、さらに美しさに磨きがかかったように感じるんだけど気のせいかな?


 ねえ、この美し可愛い子が八重樫くんの恋人とか、おかしくない? いや疑似だとはわかってるよ?

 わかってるのに……何だろう、複雑通り越して憎らしく思えてきた。私、今猛烈に八重樫くんに飛び蹴り食らわせたい。



「でも八重樫くんって、中学でも陸上部だったんでしょ? 体育祭とか球技大会とかで走ってるとこくらい、見たことあるんじゃないの?」



 なので苛立ちに任せて、ちょっと意地悪なことを言ってしまった。

 うぅ……心が狭いのは自覚してるよ。でもアホ樫のくせに生意気だって思っちゃうんだから仕方ないじゃん……。



「あら? 言われてみればそうね? でも全く記憶にないわ。八重樫くんなんて、いたっけ? 全部休んでたんじゃない?」



 城咲さんが空を目をやり記憶を辿るも、どこにも彼の姿は見当たらなかったようだ。


 いたっけ、じゃないよ……いたよ。体育祭も球技大会も、久月くん家で見たアルバムにバッチリしっかりくっきり写ってたよ。

 あれが生身を持たない思念体だとしても、それこそ目に見えてもおかしくないレベルで強力なやつだと思うの……。


 この人、ほんっとーに八重樫くんの存在を全く認識してなかったんだね。



「明日香と那由多は、八重樫が走ってるところが見たいのか? 行っても多分、八重樫が走ってるだけだぞ。両足を素早く動かしてる八重樫がそんなに珍しいか?」



 ここで有瀬くんがごもっともな指摘を入れる。横槍ともいうか。

 そりゃそうだよねー……珍しくも何ともないよねー……って、違う! そういう理屈じゃない!



「じゃあ有瀬くんはお家に帰って、お昼ごはんとお菓子食べてねんねしたらいいよ。私は城咲さんと一緒に、両足を素早く動かしてる八重樫くんを見に行くから。ねえ、陸上競技場ってどこ? バイトまでの時間なら付き合えるよ」



 興味がなさそうな有瀬くんには帰宅してもらうことにして、私は城咲さんに身を寄せた。



「本当!? ありがとう、助かるわ。実は私、ひどい方向音痴なのよ。一人じゃ辿り着けるか不安だったのよね!」



 私に声をかけたのは、道案内役のためだったんかい。てっきりアオハルみ溢れる部活男子を鑑賞して、二人で手を取り合ってキャーキャーしたいもんだと思ってたよ。


 そうでしたね、あなたも有瀬くんと同じでアオハル不感症なんでしたよね!



「俺も行く」

「へ?」



 振り向くと、有瀬くんがいつもの無表情で続けた。



「俺も一緒に行く。珍しくも何ともないクソつまんねぇ八重樫を見に行く。見て、やっぱクソつまんねぇなって再確認しに行く」



 うわぁ、クソつまんねぇって断言しちゃってるじゃん。再確認する意味よ。



「あ、だったら久月くん達にも声かけてみる? 応援が多い方が八重樫くんのやる気出そうだし、有瀬くんも退屈しないでしょ? 城咲さん、どうかな?」


「いいわよ。そうしましょ」


「うん、そうしよう」



 二人から合わせたような返事をいただくと、私は久月くんと茉絢に連絡を入れて、城咲さんから陸上競技場の場所を聞いた。


 地図検索にかけたら、サラチューのすぐそばだった。


 ねえ、あなたが三年間通ってた中学の目と鼻の先だったんですけど。

 いくら方向音痴でも、これなら一人で行けたでしょ! 道案内役なんかいらなかったじゃん!


 それでも行きますけど。汗輝くアオハルい部活男子で目と心を潤したいから、行くなと言われても行きますけどね!


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