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『―― 幻視穿界!! シルバーフレーム…… イヴァレックス!! ファントムフォーム!! 』
「よっしゃ! へっへー、コレで探しものは楽勝で見つけられるな!」
リンクカードを挿入し、ファントム・フォームへの変身を成功させたユウは意気揚々とその場でスクワットを始めた。
続いて左眼のスコープをコンコン、と人差し指で叩きその視界を確認する。
「あんまり調子に乗らないの。ボクのファントム・アイだって万能じゃないんだから。少し眼に優れた程度で思っておいたほうがいいよ」
「そんなことないだろー!? 実際すげぇもんコレ! 一気に視界が開けるっていうかなんていうか……」
ファントム・アイの視界性能の全てではないにしろ、それに近い能力はイヴァレックスに付与される。
その視界は、広くも、狭くも出来る。
スコープが開けば視界はそれに応じて広くなり、前方にしかない視線が一気に180°以上になるようなイメージになり、視線の端に移る木の葉のざわめきも見逃さない。
逆にスコープを絞れば視界は狭くなり、相手の動きに集中ができる。一挙手一投足、僅かな動きから次の行動を予測し、それに対応した動きが可能になるのだ。
それらの視界を状況に応じ使い分けることのできるのが、ファントム・アイの最大の特徴となる。
「で、どうするんだ?ヨア。二手に分かれて探す?」
「そうだね。北西と南東、くらいの意識でそれぞれに探索していこうか。制限時間は12時間、余裕はまだあるから」
『お互いの意思疎通はオレに任せておけ。共鳴しているお前らなら、オレがそれぞれに語りかけることが出来るからな』
ラゼットの自信満々な表情が浮かぶような声が、イヴァレックスとファントム・アイ、それぞれの脳内に聞こえる。
「うーん、つくづく便利だなコレ。スマホいらずで連絡も出来るし、ヨアの視界能力も使えるし、今回の任務にぴったりじゃん!」
「……ヴィネットは、この任務はユウとボクが適任、って言っていたらしいね。お互いの能力のことはボクからは朧月商会には伝えていないはずだけれど……ある程度は情報を仕入れている……のかな」
「まぁ、別にフレーム能力がバレていたとしても問題ないだろ。今のところ朧月商会もヴィネットも、敵ってわけじゃないしむしろ味方にしなくちゃなんだから」
(……だからこそ、見えないところで何をしているかが重要なんだけどね……)
ヨアの心配もユウには伝わっていないらしく、ユウは踵を返して森の奥の方を向く。
「それじゃ、俺はこっちの方を探していくぜ。さっきの球ならこの薄暗い森でも光っているだろうし、ちょっとでも視界に入れば見つかりそうだな!」
「うん。……ま、とりあえずは安直に探していこうか。後々ラゼを通して連絡するよ」
「……?なんか引っかかる言い方するなー、さっきから。大丈夫だって!俺とヨアなら出来るさ!」
「……はあ。ユウのそういうところ、嫌いじゃないんだけどね」
「へへへー」
ワケも分からず腰に手を当てて自信満々な感じのユウに一つ溜息をつき、ヨアは別の方向へと歩き出した。
「シールは渡してあるよね。こまめに張って迷わないようにして。落ち合う場所はここにしておこう」
「オッケー!気をつけてな、ヨア!」
「そっちこそね」
二人はそれぞれで背を向け、別方向へと歩き出した。
深い、深い森。晴天でも薄暗いその木々の中に、二人の姿は溶け出していく。
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「……!! あった、あったぜ!!」
イヴァレックス・ファントムフォームに変じたまま、視界の端に何かを捉えたユウはそれに向けて駆け出した。
木々の間。枝の隙間に挟まるように、拳大の宝玉は存在していた。
僅かに白色にそれは光っており、薄暗い森の中でも目立っていたのが幸いし、ユウはものの30分ほど周囲を歩いたところで【久遠晶】を発見したのだ。
「よっ、とォ!!」
数mほど見上げたところにある枝であったが、イヴァレックスの身体能力には楽なものであった。
地面を蹴って、木の幹を一度足場にして再度跳躍。
視界の正面に久遠晶を見据える位置まで跳び、手を伸ばしてそれをキャッチする。
「っしゃああー! 楽勝楽勝! ラゼ、ヨアに連絡してくれ! 一つ見つけたって!」
『おう! 任せとけ! …………んー』
地面に下り、手にした久遠晶を天にかざしながらユウはラゼの報告を待つ。
見れば見るほど、美しい宝玉である。
朧月商会がこれを求めているのもなんとなく頷けるような輝きと光を持つ球。拳より少し大きく、完璧な球体の形をしたツルツルした触り心地も実に気持ちが良い。
「まだ探し始めて30分だぜ?あと3つ以上だろ、余裕じゃん。へへへ、流石、ヨアのファントムフォームだなー。なんなら6つ全部見つけられるんじゃないか?」
ユウは上機嫌に独り言のように言いながら、空中に宝玉を軽く投げてキャッチをして弄ぶ。
『……え、マジかよ……。それじゃあ……。……あ、ああ……。オッケー。伝えておく』
しかし、ユウと同じようにテンション高くヨアと連絡をしていたはずのラゼのトーンがどんどんと低くなっていく。
そして、声の方向はヨアではなくユウの方へと向けられた。
『ユウ。ヨアのヤツも……久遠晶を一つ、見つけたそうだぜ』
「え、マジで!?なんだー、もうあと2つかよー。マジで楽に終わるなコレ!」
『……けど、ヨアはかなり疑っているぜ』
「え?疑う?」
『……「簡単すぎる」ってな。こんなの、ファントム・アイを使わなくても数時間探索していれば誰でも見つけられる。宝玉自体が光を放っているからこの森の中では異様に目立つし、まるで見つけてくれって言っているみたいだ、って』
「……どういうことだ?」
『……疑え、ってさ。このまま素直な宝探しを続けていけば……あの石像みたいな運命を辿るかもしれない。用心しろって』
「……」
ユウの背筋に、冷や汗が流れる。
簡単な、宝探し。
確かにそうであれば……あのプレイヤー達のように石化するなんて事態には、ならないはずなのだ。
その事実をユウもラゼも、ヨアの言葉で叩きつけられたような思いであった。
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