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「ようこそいらっしゃいました、プレイヤーの皆様。ここはニューレアル……皆様全てに提供される【新たな現実】。冒険、戦い、生活……その全てを、謳歌してください」
「ん? この声……」
街の中央広場。
西欧の中世のような建築物が並ぶその風景に、似つかわしくないものがあった。
広場の中央。大きな噴水が吹き上がるモニュメントの中央に……【映像】が映っているのだ。
白銀のショートカット。瑠璃色の美しい瞳に、美しい白い肌。
純白のハイネックスーツにミニスカート、黒のタイツを身に纏った女性が、にこやかに映像の中で声を発していた。
そのにこやかさの先に、感情というものがあまりないようにも感じられる。まるで、機械のような……そんな声色だった。
だが悠は、そんな彼女の声に聞き覚えがあったのだ。
「どうしたんだよ悠」
「いや、この声聞き覚えが……あ、そうだ」
肩に乗ったラゼが悠の顔を覗き込むと、悠はぽん、と手を打ってその声の記憶を呼び起こした。
「ダイヴギアから流れてきた声だ! それと……エデンリンク・インダストリーズのCMとかでも流れてた声! まさか、彼女が全部そういうの担当してるの?」
「ああ。アイツは【アリシア】だ。ニューレアル全体に関するナビゲーションを外部に向けても内部でも行っているAIシステム……。この世界でアイツの顔と声を知らないヤツはいねーだろーなぁ」
けけけ、と笑うラゼ。そのラゼに悠は呟く。
「……ナビゲーションAIがあるなら、別にラゼって必要ないんじゃあ……」
「ん?なんか言ったか?」
「い、いやいや……。なんでもないよ。……へー、映像が噴水の水に映ってるよ……。ちょっと世界観壊れちゃうかもだけど、すごいねコレ」
真っ直ぐに落ち揺らがない噴水に、映像はモニター画面のように鮮明に映し出されている。
緑の澄んだ瞳で語りかけるAI【アリシア】は、まるで悠を認識しているかのように悠に向けて語りかけた。
「ニューレアルに来て間もない皆様は、まず何をすればいいのか分からない、何から始めればいいのか分からない……そんな事をお考えではありませんか?」
「ああ……うん、そうそう……」
「AIの自動映像だっつーのに」
ラゼのツッコミも耳に入らず、悠は水に映る彼女に釘付けになっていた。
「それでしたらまず【四大ギルド】のいずれかに所属してみるのはいかがでしょうか?」
「四大ギルド?」
悠の質問に答えるように、アリシアは続ける。
「五感を共有し、現実世界と全く変わりなく過ごすことのできるこのメタバース空間【ニューレアル】では、全く新しい人生を始める事ができます。その中で、自分が何を求めるのか。その答えを、四大ギルドのいずれかに所属する事によって確かめてみるのはいかがでしょうか」
アリシアの映る映像の中に、四つの旗のようなものが映し出された。
白と蒼の旗の中央に、金色の天秤が描かれた旗がアップになり、アリシアは語る。
「【ヴァレクト・システム】。このニューレアルでの秩序の根幹を担うギルドです。ゲームの違反者を取り締まり、絶対的な正義を示す。運営側から認可を受けた唯一のギルドで、運営とは協力関係にあります。このニューレアルを誰もが過ごしやすくするために治安維持を行う、自警団のようなギルドと言えるでしょう」
薄い緑の旗の中央に、銀色の羅針盤が描かれた旗がアップになり、アリシアは語る。
「【グリムチェイサーズ】。広大なニューレアルの世界には、物資や資源、そして貴重な宝などが数多く眠っています。山を登り、海へ潜り、危険なダンジョンへ入り、数多のモンスターを討伐しお宝を手に入れる……。そんな冒険心をこの世界で輝かせたい方は是非、このギルドへ入団してみてください」
黒に近い藍色の旗の中央に、薄く霞む満月が描かれた旗がアップになり、アリシアは語る。
「【朧月商会】。この世界でも、売買や取引……果ては約束事や依頼まで、全てに『レード』というお金が使われております。その金銭を製造し、物資の取引を生み出し、この世界の商いの全てを担うのがこのギルドです。お金の持つ価値が、この世界でも不変のものとお考えであれば……このギルドもまた、お金以上の価値を持つのでしょう」
炎のような赤の旗の中央に、黒色の円陣が描かれた旗がアップになり、アリシアは語る。
「【修羅陣】。現実と同じ感覚を共有する空間であっても、現実離れした戦いが行えるこの空間……。そこに闘争本能を燃やし、闘いの日々に身を投じる人々がいます。巨大コロシアム『グランドカタストラ』に集い、闘い、己を磨き、より強く、高みを目指していく者は、必然……このギルドへと集まるようです」
そして、四つの旗をバックにアリシアは一歩前へと歩み出て画面の外の者へと語りかける。
「さあ……貴方は、この世界で、何を望みますか?」
「ふえー……」
「なに呆けた声出してんだよ。頭に入ったか? 今の説明」
猫背になって噴水の映像に見入る悠の頭を、肩に乗ったラゼが小さな手で軽く小突く。
「う、うん……。でも流石に一度に全部は……。それに、この世界で何をすべきかなんてまだ全然わかんないし……」
「ま、そりゃそーだよな。会話だってオレとしかしてねーし、モンスターと遭遇どころかプレイヤーともNPCとも喋ってねーもんな」
……プレイヤー。NPC。
街を行き交っているどれがプレイヤーでどれがNPCかも分からないような世界。
自分の視覚を通して見る人はまるでどれもがホンモノの人で……。
そして、こんなリアルな世界の中でもし……【モンスター】なんてものと出会ってしまったのなら。
自分は、恐怖でどうにかなってしまうのではないだろうか。
悠は、頭の片隅にそんな不安の芽生えを感じるのであった。
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