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悠久創世譚 エデンコード  作者: ろうでい
第四話 共鳴と新たな覚醒
40/50

4-10


――


(なにが……!? なにが、起きたんだ……!?)


 ゼンの出した黒煙に向け、自身のギアブレスから出てきた謎のカードを、謎の声に誘導されるままに投げた。

 それをユウが受け取ったのかは定かではないし、それが何をもたらしたのかも分からない。


 ただ、ヨアはなにかを感じていた。


 自分と同じ【なにか】が黒煙の中にいるような感覚。安心感や、信頼感。そんな感覚に似ていた。


 ファントム・アイのスコープは輪郭を捉えるだけで、なにが起きたのかははっきりとは分からない。


 ただ……眼には見えない、なにかがユウに起きて……そして、そのなにかが、ユウの助けになっている。それをヨアは確かに感じていたのだ。


「ぐ……ッ! や……やって、くれるじゃん……! 先輩……!」


 黒煙の方ばかりを見てはいられない。

 リリィの変身したフレーム、パピリオ・アピスソードはダメージを受けた胸部に左手を添えながら、立ち上がる。

 真っ直ぐにヨアを見据え、そして再びレイピアの剣先をヨアへと向ける。


「訓練では見せなかった手……。まさか、鞭に銃弾を当てて軌道を逸らすなんてね……。予測できなかったよ……!」


「……奥の手、ってやつさ。リリィが大振りの攻撃をしてこないと軌道を逸らして隙を作る意味なんてない。そのタイミングが合った時しか出来ないから、取っておいたんだよ」


「……へえ。でも、もうその奥の手も使えないね。もう……先輩の弾を浴びるようなスローな動きは、しないからね……ッ!」


 パピリオ・アピスソードは軽く低いジャンプを始め、足を前後入れ替えながらフットワークをとるような動きを始める。

 

 そして、ギアブレスの歯車部分の下についた白色のスイッチに手をかけた。


(……リリィの本気。ここで勝負が決まる……!)


 同時に、ファントム・アイもギアブレスの白色スイッチに指を添えて、相手とのタイミングを見計らう。

 

「いくよ……!これで、終わりだ!!」


「……ッ!!」


 そして、同じタイミングで、ヨアとリリィは白色スイッチを押した。


『 フィニッシュ・ブレイク 』

『 フィニッシュ・ブレイク 』


 ファントム・アイとパピリオ・アピスソード。

 ギアブレスから発せられるアリシアの声が同時に重なる。


 パピリオ・アピスソードは黄色のオーラを纏い、フットワークの動きをやめて駆け出す前のような姿勢をとる。

 ファントム・アイは紫と橙のオーラを纏い、それが薄く、広がっていく。そしてリリィの動きを見据えながら銃を構える。


「はああああーーーーッ!!」


 動き出したのはパピリオ・アピスソード。

 先ほどとは比べものにならない、高速のダッシュ。瞬きをする間にファントム・アイとの距離を詰め、そしてレイピアの先端をファントム・アイの腹部に向けて突き出す。


「!!!」


 防御姿勢をとる事もできず、ファントム・アイの装甲をレイピアが貫いた。

 それで終わりではない。

 レイピアを引き抜き、再び刺す。抜き、刺す。抜き、刺す。その動作を何度も、何度も……目にも留まらぬ動作でリリィは続けた。


「さよならだあああッ!!」


 そして、とどめ。


 ファントム・アイの心臓部分の装甲をレイピアは貫き……そして黄色のオーラは消える。


「……これが、僕の必殺技だよ、先輩。ふふ……流石についてこられなかったよね」


 ホワイトフレームの装甲を貫く攻撃力と、回避や防御も間に合わないスピード。パピリオ・アピスソードのフレーム能力を最大限に活かした必殺技はファントム・アイを完全に捉え、破壊した。

 明らかに現実世界であれば殺傷レベルの攻撃。これでプレイヤーは強制ログアウトとなり、フレームごとヨアはかき消えてそのアナウンスが入る――。


 はずだった。


「……え?」


 リリィが見慣れてきた強制ログアウトの形とは、それは違っていた。


 レイピアで貫いたファントム・アイの姿はまるで霧のようにかき消えて、その場からいなくなる。


 違う。


 普段の強制ログアウトでは、プレイヤーの身体にはテレビの砂嵐のようなブロックノイズが走り、ダメージを受けた先から身体が崩壊していき、データの断片となって空間に散っていくのだ。

 完全にプレイヤーの姿が消えた後に【FORCED LOGOUT】の文字がその場に浮かび上がり、プレイヤー名と再接続までの時間【12:00:00】が表示される。

 それはアリシアの声でもアナウンスが入るはずなのだが……。


 いつもリリィが見ているその光景とは、全く異なる消え方をヨアはしていた。


「どう、いう……こと……?」


 呆気にとられ、空に突き出したままのレイピアの剣先を見つめるリリィ。



「これがボクの奥の手だよ、リリィ」



「!?」


 聞き慣れたその声の主を探し、辺りを見回そうとするパピリオ・アピスソード。

 しかし、探すまでもなく…… それは、自分の背後に張り付く距離で聞こえていた。


「ボクのフレームの名前は知っているよね。……幻影のファントム・アイ。キミがいまトドメを刺したのは……ボクの幻だ」


「……ッ!!」


「キミの視覚に【干渉】させてもらった。ボクの姿を、まるで本物のようにキミの視覚に映し出させて……そして、攻撃させたんだ。これが、ボクの必殺技だよ、リリィ」


「ぐ……!! う……!!」



『フィニッシュブレイクッ!!』


 一方の、東側エリア。

 黒煙の中でゼンのノクス・ストリクスとの戦闘を続けていたユウ……イヴァレックスのブレスレットから、ラゼの声が響く。


 ファントムフォームの武器である銃の銃口が光に溢れ、それを確認するとユウは自身の視界に集中する。

 スコープを通した眼が、相手であるノクス・ストリクスの輪郭を捉え、ロックオンした。



 一方の、西側エリア。

 

「うあああーーーッ!!」


 困惑と怒りで、振り向きながら声の主に向かい剣を振るうリリィ。

 しかしそこに主はおらず……ファントム・アイに似た影が剣の風圧で、霞のように消え去った。



「それもボクの幻影だ。最大で、二体まで。それがボクの限界だよ」



 ヨアは……鉄格子を背にしていた。

 西側エリアから僅かに漏れ出すノクス・ストリクスの黒煙に身を隠し……パピリオ・アピスソードに狙いを定めていたのだ。

 手にした拳銃……ゾウネンアウフガングの銃口から、光が溢れだしていた。


 そして、鉄格子越しに背を合わせていたユウと同時に、引き金に手をかけ、二人は同時に叫んだ。



「いけぇぇぇーーーッ!!」


「でやああああーーーッ!!」


 二人の銃から、光の波が発射される。

 巨大なそのエネルギー波はノクス・ストリクスを。そして、パピリオ・アピスソードを巻き込みながら、東西それぞれの壁際まで貫かれた。


「グ、ギ、ア……ッ……」


「よ……ヨアアアアアーーーーッ!!!」


 二体のホワイトフレームは、光の波に呑まれていく。

 フレームの装甲に砂嵐のようなノイズが浮かんでいき、そしてその身体が欠片のように次々と空間に浮かんでいき、消滅していく。


【FORCED LOGOUT PLAYER:ゼン RECONNECT LIMIT:12:00:00】


【FORCED LOGOUT PLAYER:リリィ・ホワベリー RECONNECT LIMIT:12:00:00】


 二つの文章が大きく、それぞれの身体があった空間に表示され、そしてアリシアの声がどこからかユウとヨア、二人の耳に届いた。



『プレイヤー保護機構が作動しました。対象プレイヤー、ゼン、リリィ・ホワベリーを強制ログアウト。再接続可能時刻は十二時間後です』




――


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