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「久しぶりですね、皆さんでこうして顔を合わせるのは」
長身の男は眼鏡をクイ、と中央部を人差し指で上げて辺りを見回す。
その空間には、何も存在しなかった。
ただ白い壁が四方を囲んだ部屋。学校の教室ほどの大きさの部屋だが、窓はおろか、扉すら存在しない異様な空間。
眼鏡の男の声に返答するように、低く、だが明るい声が次にあがった。
「あー。出来れば、アンタらとはあんまし顔を合わせたくねぇんだけどな。俺も色々と忙しい身でね」
その声の主は、眼鏡の男と比べると歳を重ねているように見える。
長い白髪。その上に大きなハットを被った老齢の男は、大袈裟に両手を広げて首を横に振った。
「どうせくだらない宝探しでしょ。ちょっとは使えるモノ、こっちに寄越してほしいわね」
そのハットの老齢の男に呆れたような声をかけるのは、ピンク髪のおさげの少女だった。
身長も小さく、くりくりした幼い顔つきの少女であったが表情や口調は子どものそれではなかった。
「この間アンタらから買い取った新しい鉱石。加工しようとしたらすぐに溶け出しちゃって使い物にならなかったわよ。損害賠償くらいはしてくれるんでしょうね?」
「……あー? ははは、そうだったのか? そりゃ悪かったな。いや、良い素材だと思ったんだけどなぁ」
明るく笑う老齢の男とは対照的に、ピンク髪の少女は怒りにも似た冷ややかな視線を向け続ける。
「……アンタのとこだって、戦争はしたくないでしょ……? 故意だったかどうかなんて、関係ないの。使えないモノに金払ってる経験は一度や二度じゃないのよ」
「おかしいな。それ込みの契約だったはずだが……いやー、そっちも商売上手なもんだから、こっちとしても色々と考えなくちゃいけなくてね」
「……へぇ。今ココで代理戦争って形でも構わないのよ……」
一歩、ピンク髪の少女が前に歩み出したところで、先ほどの眼鏡の長身の男がその間に入る。
「お止めなさい。あくまで今回、我々は【呼び出し】に応じただけ……。それ以外の話題は別の機会にしていただかないと、本質を見失ってしまいます」
「……チッ。偉そうに言ってくれるわね、運営の犬が」
「どうとでも言ってください。とにかく、我々四人が……。……おや」
長身の男は眼鏡をもう一度上げて辺りを見る。
部屋の隅の方、胡座をかいて眼を閉じ、微動だにしない男が一人いた。
黒髪のウルフカット。この中では一番若く……そして、体格の良い男性。
上半身に衣服はなく、腹や首、手首にまでしなやかな筋肉に覆われた男。そこには無数の傷跡が刻まれている。
眼鏡の男はその筋肉質の男性の方へと近づいていき、顔を覗き込みながらにこやかに声をかける。
「お久しぶりです。いかがされましたか?」
「……ああ、久しぶりだな」
「随分と怪訝な表情をされていますね。普段は明るい貴方が」
「今回のような【呼び出し】は……2年ぶりくらいだ。警戒だってするさ。あっちからすれば、オレ達相手になにかしようとしてきてもおかしくはない」
「ははは、まさか。我々四人相手に手を出そうとするほど、運営も愚かではないでしょう」
「どうだか。数年間、声すらかけてこなかった相手を信用するほどオレは人が出来ちゃいねーんだ」
「…………。成程」
胡座をかいて一点を見つめる男に、眼鏡の男は一礼をして再び元の位置へ戻る。
――そこへ。
丁度、四人の中央に位置するような場所に、一人の人間が【出現】する。
なにもない空間から、突如、瞬間移動でもしたかのように、彼女は現れた。
「お忙しい中ご足労いただき、ありがとうございます。皆様」
白銀のショートカット。
純白のハイネックスーツにミニスカート、黒のタイツを身に纏ったその女性は……四人、一人一人の顔を見ながら、小さく、そしてにこやかに会釈をした。
「まったくだわ。こうしている間にも金は動いてんのよ。せめて数日前にアポとるくらいの礼儀はあんたらにないの?」
「きちーなぁ、お嬢ちゃんは。2年ぶりに会うヤツにかける言葉とは思えねぇな」
白銀の女性を怒りの視線で見つめるピンク髪の少女に、腕組みをして笑う老齢の男。
「お久しぶりです。我々を呼び出したという事は、相当の理由がおありなのでしょう。楽しみです」
「…………」
背中で手を組む眼鏡の男に、胡座をかいてまま腕を組む筋肉質の男。
四人の中央で、白銀の女性は再び、一人一人の顔を、今度はゆっくりと見つめながら一人一人に声をかけていった。
「【ヴァレクト・システム】ギルドリーダー…… クラヴィス・ヴァレクト様」
白銀の女性の呼びかけに、クラヴィスは眼鏡を上げて微笑んだ。
「【グリムチェイサーズ】ギルドリーダー…… アルガ・コーライル様」
白銀の女性の呼びかけに、アルガはハットの先を少し下げる。
「【朧月商会】ギルドリーダー…… ヴィネット様」
白銀の女性の呼びかけに、ヴィネットはピンクの髪を弄びながらそっぽを向いた。
「【修羅陣】ギルドリーダー…… ラウド・ガルダーン様」
白銀の女性の呼びかけに、ラウドは胡座で座ったまま小さく頷く。
そして、白銀の女性……。
ニューレアルのナビゲーションAIでもある女性、アリシアは、明朗に告げた。
「 お喜びください。遂に…… 【エデンコード】 の存在が、確認されました 」
――
《次回予告》
仮想現実空間、ニューレアルでの変身能力―― シルバーフレームの力を手に入れ、それを人々のために使う一ノ瀬悠。
そんなユウの目の前に現れたのは、別の変身能力者。ホワイトフレームを身に纏う謎の青年、ヨア。
一体、その目的は何か。そして対峙する二つのフレーム。果たして、勝者は――。
次回 悠久創世譚エデンコード 第二話【フレーム使い】
――世界がまた、創造されていく。




