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「剣……!!」
ユウの手に出現したその剣は、アニメや漫画で見たものと比べるとやや小ぶりで短剣に近いような長さをした両刃の剣であった。
鍔の部分はブレスレットと同じようなラゼのカラーリングに近い模様をしており、ファンタジーRPGで見るような形状をしている。だが、刃の部分は銀に鋭く光りそれが刃物だという存在を誇示していた。
「こ、コレで戦うの……!?」
『暴力要素はニューレアルでは排除されている! アイツを斬ったところで血は出ねぇから安心してぶった斬れ!!』
「う……!」
「グルルルゥ……ッ!!」
自分を見据える巨大な獣型モンスター。
先ほどより明らかに警戒をし、自分とは距離をとって荒い息を整えている。
武器を持ち、相手を傷つける。
いくらバーチャル空間とはいえ、格闘戦より遙かにその行為はユウに躊躇いを生んだ。
『ユウッ!! コイツをこのまま逃がしたら、いずれ街の方に攻め込んでくる!! ここでトドメを刺すんだ!!』
「……ッ……!」
暴力など、他人に振るった記憶はない。
まして、自分が上の立場に立ち、優位な状況で武器を手に持ち振るった経験など欠片も見当たらない。
……だが。
ユウは剣のグリップを握り締め、相手を睨む。
(……俺が、俺の意思で……ッ、戦うんだ……!!)
親父さんを守ると決めたこと。
モンスターと対峙したこと。
そして、ラゼの言う通りに変身をしたこと。
それは全て、自分で決めたことだった。
この姿……イヴァレックスに変身した時、ラゼに言われた言葉が、少しだけ理解できた。
戦いとは、痛み、苦しみ、悲しみ、絶望…… その全てを味わうことなのだと。
だから、その覚悟のない者にラゼは変身をさせたくなかったのだ。
(……だったら……!!)
その全てを背負うと決め、この道を歩んでいくと決めたのだ。
嘘をつくなんて格好悪いこと、したくない!!
「うわァァァーーーッ!!」
「!?」
イヴァレックスに変身し上昇した身体能力は、相手に回避行動を取らせる間もなく懐に飛び込むことのできる速さを持つ。
右手に握った剣を左肩の方へ引き、解き放つように相手の首元へ…… 思い切り振るう!
「ギアアアアーッ!!」
相手はバックステップで回避するが、反応はやや遅れる。
同時にユウのグリップに相手に触れた感触が伝わる。
血は流れない。まるで木刀で叩いたような感触だった。
だが、獣の首元にはしっかりと剣の斬撃の跡が残る。切っ先が触れた部分が灰色に薄く輝いて、モンスターの毛を隠しているのだ。
それが、ニューレアルでのダメージ表現のようだ。
「ギアアッ!!」
「ッ!!」
痛みを感じたであろう相手はすかさずカウンターで、左足爪での引っ掻き攻撃を繰り出す。
素早くそれに反応をしたユウは、剣を振るいその腕を斬る!
「グギィィッ!!!」
相手の左足首に触れた剣は、会心の一撃。先ほどより大きな斬撃痕を残し、そのダメージのせいか、相手は左肩から地面に崩れ落ちる。
「グガ、ア……!!」
『よし、ユウ! 決めるぞ!! 距離を取れ!』
「!!」
頭の中に響いたラゼの声に反応し、ユウは後ろに飛び退き、相手との距離をとる。
左足にダメージのあるモンスターはそう簡単に動けはしない様子だ。
『いいか! オレの尻尾を真ん中に戻してもう一度、剣を出した時みたいに左に倒すんだ!』
「……! こうか!?」
先ほどと同じように、尻尾型のレバーを真ん中に起こし、再度左に倒す。
すると、ブレスレットのラゼの眼の部分が紅く光り、同時に剣の刃の部分に同じ色の紅い光が宿った。
『――フィニッシュブレイクッ!!』
それは、ブレスレットから発せられた声だった。
剣に宿った紅の光はどんどん大きさを増していき、剣全体を隠すような大きさとなる。
「わ、わ、わッ……!!」
『決めろ、ユウ!! この距離でもいける!! 思いっきりヤツにたたき込んでやれ!!』
相手との距離は約3m。とてもここからの距離で斬撃が届くとは思えない。
だが、この光と…… 剣から溢れ全身に漲るこの力を解き放てば……!!
ユウは剣を見つめていた視線をモンスターの方へと向け、右手に構えた剣を両手に持ち替え、上段に構える。
「グガアアアッ!!」
「はァァァッ……!!」
威嚇の声をあげるモンスター。
天空に光の剣をかざす……イヴァレックス。
そして、溢れるその力を解き放つように、思い切り剣を正面に斬り下ろした!
「でやああああああ―――――――ッ!!!」
剣を覆っていた紅い光は、一直線にモンスターの方へ。
地面を抉り、まるで波のように大きく、そして高速でその紅い光は突き進む。
「ア……ッ!!」
モンスターを両断するように、その光は通り過ぎた。
動きを止めた獣の身体は、徐々に灰色になっていき、そして…… 灰が散っていくように、消滅した。
「はぁ、はぁ、はぁ……!!」
『……よくやったぜ、ユウ。初戦にしちゃあ上出来だ』
「ら……ラゼ……。えーと……」
『あー、聞きたいことが色々あるのは分かってるよ。とりあえず……』
頭の中に語りかけていたラゼの声。
その声が止むと同時に、自分の腕にあったラゼの形をしたブレスレットが、消える。
「え?え?」
すると、先ほどまで自分が身に纏っていた銀色の装甲も、手に持っていた剣も、跡形もなく消えてしまう。
まるで夢を見ていたように……ユウは、元の姿に戻ったのだ。
「えええ……!?」
元の自分の姿にいきなり戻ったことに戸惑いを隠せず、自分の顔やら背中やらをぺたぺたと触るユウ。
そのユウの目の前。
大きな岩の前にぴょこん、と飛び乗るように……ふさふさ毛並みの動物が姿を現した。
「ラ、ゼ……」
「ひひひ。ま、一から説明すんのも手間かかるからさ。とりあえず、これだけは言わせてくれよ」
その動物は、実に人間的な表情で、微笑む。
それは、楽しげで。
しかし、どこか寂しげに眉をひそめているような笑みでもあった。
「がんばったな、一ノ瀬悠!」
「なんだ、なんなんだ……アイツ……!!」
信じられない、といった表情でユウを遠くの物陰から眺めるクロウ。
装甲が外れ、元の姿に戻った少年をワナワナと震えながら見つめ……歯を食い縛り、唇を震わせている。
「フレーム使い……!? しかもあんなモンスターを、一撃で消滅……!? 馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な……!!」
その顔に浮かぶ感情は……疑問。そして……明らかな嫉妬であった。
「絶対……絶対、正体を暴いてやるぞ、あのガキ……!!」
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