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『―― 銀輝永煌!! シルバーフレーム…… イヴァレックス !!』
悠がブレスレットの尻尾を引き下げた瞬間、ラゼの声が高らかに響く。
そして、悠の身体が瞬間、赤い光に包まれた。
肩、胸、腹部、脚……そして、顔。 フラッシュライトで照らされたような眩い光に思わず悠は薄目になる。
「グルルゥ!?」
それは、モンスターも同じだった。
吹き飛ばされ体勢を立て直したモンスターだったが、自分が襲いかかろうとしていた対象に起きている異変に気づき、その光に突進を止める。
光は、収束する。
無形の光は、形を成すように集まっていき…… それは、意味のある形へと姿を変えていく。
眩い光は、その色を銀色へと。
細身の悠の身体を隠すように、かといってゴツゴツとした重いものではない……【鎧】が形成されていく。
全身にシャープな白銀の装甲が形成され、間接の可動部には黒い伸縮性のある素材と赤のライン。
胸部には、ラゼの額にある紋章と同じ模様が赤く大きく光る。
そして頭部も。ヘルメットのように悠の頭はすっぽりとフルフェイスの兜に収まり、紅く光る二つのグラスで前を見る。
やや獣の毛並みのようにゴツゴツと凹凸のあるその兜も、どこかラゼの頭の形にも似ている。
一ノ瀬悠の身体は、白銀のアーマーに全て覆われ、先ほどまでとは全く別の姿形となっていた。
まるで、どこかで見たような……。
「……変身ヒーロー……!?」
悠は思わずそう呟き、自分の頭を手袋をはめた手で確かめてみる。
ゴツゴツと固く、触感が全くない。、
視界は明確に、先ほどまでと変わりはしない。むしろ目が良くなったような感じもするが……自分の目ではない感覚もある。まるで、度のついた眼鏡をかけたような感覚だ。
ヘルメットのゴーグルを通した視界に戸惑い、そしてその頭部が全て装甲に覆われていることに戸惑い、そして更に自分の身体が全てその装甲に覆われている事を触って確認していって、戸惑う。
「な……なにこれぇ!?」
『戦う力が欲しいんだろ? コイツがそれだ、悠!』
「え……ラゼ? ど、どこから喋ってるんだ??」
ラゼの声は、まるで兜の中にイヤホンがあってそれが響くように……あるいは、頭の中に直接語られるかのように、明確にはっきりと聞こえる。
悠は辺りを見回すがラゼの姿はどこにも見当たらなかった。
『細けぇ話してる暇ねーんだよ! とにかくオメーは今、オレと一心同体なんだ!』
「いっしん、どうたい……?」
『だー!! いいから!! とにかく悠は今すげーーー強くなってんの!! ほれ、目の前!!』
「え、あ、え……??」
ラゼに促されて目の前を見ると、ラゼが焦っている理由が分かった。
異形の姿となった人間を見るモンスターの威嚇の瞳と牙がそこにあった。
先ほどまでとは違い、装甲を身に纏って表情が見えない相手に明らかな警戒心を抱いてはいるが…… とにかく、こちらに襲いかかろうとする意思に変わりはないようだ。
『くるぞ!! 試してみろ!!』
「う、うわああああ……ッ!!」
「グガアアアアアアッ!!!」
悠との距離を一気に詰め、右足で大振りなパンチを繰り出す獣。
回避動作は間に合わず、思わず悠はその繰り出された右足に向け、左腕で頭部を庇う。
ガキイィンッ!!
「…………え??」
「グア、ガッ……!?」
重く鈍い金属音。
困惑しているのは悠とモンスター、両方だった。
人間など吹き飛ぶか切り裂かれるほどの威力の大振りのパンチ。まともに受けられた経験など、モンスターにはない。
そのパンチを……今、目の前の装甲を身に纏った人間は、吹き飛びもせず、微動もせずに左手一本で受け止めているのだ。
「いたく、ない……?」
『いいぜ、悠! 続けて攻撃!』
「え、あ……! う、うああああああーーーッ!!」
固まり無防備なモンスターの顔が、悠の目の前にある。
ラゼにそう言われ、反射的に悠は右手でストレートを……思い切り獣の顔にたたき込む!
「グゲエエエエエッ!!?」
まるで、重く太い丸太で一突きしたような衝撃。
ケンカ慣れなど全くしていない素人のパンチで、体重は数百キロはあるであろう獣の身体はいとも簡単に吹き飛んだ。
「な……な……なに、コレ……」
『オメーがその気のなればあんなモンスター楽勝なんだよ! それが【シルバーフレーム】の力だ!』
「シルバー……フレーム……!?」
「な……あ、ありゃあ、フレームシステム……?なんであんな初心者のガキが、あんな……?」
岩陰に隠れ様子を伺っていたクロウは、悠の変身したその姿に驚愕していた。
「しかもバトルレベル30以上必要なモンスターをパンチ一発で吹き飛ばしやがった……!?な、な、なんで……?なんでだ……!?」
悠が変身したその姿に釘付けになりつつも、唇を震わせて歯を噛みしめる。
先ほどまで初心者と侮っていたプレイヤーの突然の覚醒。嫉妬心が彼の中に渦巻いていた。
しかし、クロウは更に大きな疑問を口に出さずにはいられなかった。
「アイツの、あのフレーム変身機構……。あんなの、見たことねぇぞ……!!」
「はぁあああッ!!」
勢いに任せ、悠は吹き飛ばしたモンスターの方へ突進していく。
大振りなパンチやキックを獣型モンスターは見切り、四足を使いステップをして避ける。
格闘技はおろか、まともに相手がいるようなケンカもした事がない素人の動きは流石に獣にはそう簡単に当たりはしない。
だが。
「グガアアッ!!」
「ッ!! ふんッ!!」
モンスターが攻撃に転じた時。それが悠にとって最大のチャンスとなった。
今度は鋭い牙で悠の肩に噛みつこうと一気に距離を詰めるモンスターだったが、既に悠には恐怖心はほとんどない。
全身を覆う装甲が痛みを軽減してくれる事は先ほどの攻防で証明をされた。だから、相手の噛みつき攻撃も冷静に反応し……余計な手は出さない。
噛みつこうとした相手の顎に、思い切り膝蹴りをお見舞いしてやる。
「グギィッ!?」
「おりゃああッ!!」
牙が折れるような衝撃。一瞬相手の動きが止まり、その隙に今度は同じ右足でモンスターの頬に横蹴りを放つ。
「グゲボオッ!!」
横に一回転し、そのままの勢いで地面に倒れ込むモンスター。
致命傷にはなっていないようですぐにバックステップで相手との距離をとるモンスターだが、明らかに先ほどまでより相手を警戒し、荒い息をしながら距離をとっている。
『いい調子だぜ悠!このまま決めるぞ!』
「え、ど、どうやって……?」
『格闘戦じゃこのまま逃げられちまう。一気にダメージでかい技で決めるんだ!』
「だからどうやって!?」
『オレの尻尾を真ん中に起こして、そのまま左に倒しな!』
「!」
悠は言われてすぐ、右手のブレスレットの尻尾型レバーを摘まむ。
(真ん中に起こして……左っ、と!)
先ほどはこの変身をすることが出来た不思議なブレスレット。今度は何が起きるのか、悠は少しワクワクしながらレバーを中央に戻し、左に倒した。
『ウェポン転送!ノヴァブレード!』
ラゼのその声と共に、再び光が……今度は悠の、右手の平に集まってくる。
眩い光が収束し、形を成したそれは……。
「……おおおッ……!!」
片手で扱える大きさの、両刃の剣だった。
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