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私達、婚約破棄しましょう  作者: 若狭巴


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過去 6


三日目は国王は男性陣と狩りをしに森へと行き、女性陣は王妃とお茶会をする。


子供たちはこの日は自由に過ごせるため、各自が好きなことをした。


街に出かけるもの、親についていくもの、部屋から一歩も出ないものもいる。


妹のエリカはリナリアとともに街へ出掛けるから一緒に行こうと誘ってきたが、それを断りイフェイオンは朝からエニシダに会いに街の中を走っていた。


早くエニシダに会いたい一心で。


昨日と同じ場所で待ち合わせした場所に着くと、すでにそこに彼女がいた。


「っ!すまない!遅れてしまった!」


イフェイオンは慌ててエニシダに謝る。


「謝らないで。私も今着いたところだからだ」


イフェイオンはその言葉を聞いて、どこかで聞いたことあるなと思ったが、いつ聞いたのか思い出すことはできなかった。


「そうか。なら良かった」


イフェイオンはホッとして息を吐いた。


「じゃあ、行こうか」


「うん」


今日は孤児院に行く前に森の中で薬草を摘む。


エニシダには薬の知識があり、作ることができるのだという。


孤児院に薬を買うお金などあるわけないので、エニシダが作ってあげるのだと。


薬の知識を知っているということは、やっぱり貴族なのかと思っていると突然手を引っ張られた。


「どうした?」


突然のことで驚きながら尋ねると「ぶつかるよ」と言われた。


考え事に夢中で前が見えていなかった。


イフェイオンは恥ずかしくなり、顔に熱が集まるのを感じ、エニシダにそのことが気づかれないように俯いて「すまない。助かった」とお礼を言った。


「どういたしまして」


そう言うとエニシダは手を離した。


なぜかその瞬間寂しさを感じた。


イフェイオンは今のどこに寂しさを感じるのがあったのか、と自分の気持ちがよくわからず首を傾げながらエニシダの後を追いかけた。




薬草を取るために一緒にきたが夢中になり過ぎて、いつの間にかエニシダと離れたことに気づかなかった。


今日は貴族たちが森で狩りをするため、薬草摘みをする範囲は限られている。


印もあるのでそっちの方には行ってないだろうからすぐに見つけられると思っていたが、なかなかエニシダを見つけることができなかった。


名前を呼ぶが返事がない。


いくら探しても見つからないことに、イフェイオンは段々と焦り始めていた。


どうやって彼女を見つけられるのか考えていると後ろから草が揺れる音がした。


ようやく見つけたと後ろを振り返ると、そこにいたのは凶悪な笑みを浮かべた男たちがいた。


イフェイオンは彼らの顔に見覚えがあった。


彼らは、初めて街を訪れたときに自分を追っていた男たちだ。


どうしてここに、と疑問に思う暇もなく男たちがその答えを教えてくれた。


「ようやく見つけたぜ。貴族の坊ちゃん」


「大人しくついてくるってんなら危害はくわえないぜ」


下衆が!そう罵ってやりたいのに、口がうまく動かない。


一人だったらなんとかなったかもしれないが、大の大人三人を相手にするのは流石に無理だと諦めた。


「そう。それでいい」


イフェイオンの諦めた顔を見て、男は満足げに笑った。


イフェイオンは抵抗もせず、ついていく方がエニシダに気づかれない可能性が高いと判断した。


もし騒ぎにエニシダが気づいて、こっちにきたら彼女まで捕まるかもしれない。


男の自分より、女である彼女の方が酷いことをされるかもしれない、と想像するだけで我慢できず、被害を最初減にするためにも早くこの場から離れたいと思っていた。


だが、そんなイフェイオンの想いも虚しく「やぁあああーっ!」と叫ぶ声が近づいてくるのが聞こえた。


なんだ、なんだ、と男たちと一緒に驚いていると太く長い木の枝を持ったエニシダがそれを振り回しながら走ってきた。


エニシダは男たちに向かって「あっち行け」と木の枝を振り回し、勇敢に戦った。


男たちはいきなりのエニシダの奇襲に驚き体を引いたが、すぐに冷静さを取り戻し、エニシダから木の枝を奪った。


「なんだこのガキは」


一人の男がそう言うと、エニシダを殴った。


エニシダは殴られた衝撃でその場に倒れた。


男は、もう一回殴ろうと拳を振り上げた。


イフェイオンは慌ててその男とエニシダの間に割って入り、拳を受けた。


イフェイオンは恥ずかしくなった。


彼女は勇敢に立ち向かったのに、自分は逃げることを選択したことに。


もっと真面目に剣の腕を磨いていれば、エニシダが殴られることなどなかったかもしれない。


そう思うだけで、これまでの自分の人生がいかにだらしないものだったか思い知らされた。


今の自分に大人の男、三人に勝つ方法はないが、それでもエニシダだけは守ると決めて、彼女を抱き抱えてその場にうずくまった。


蹲ったせいで男たちからは蹴られ放題だったが、呻き声ひとつあげずに耐え続けた。


時間にすれば三分にも満たないほど短い時間だったが、騒ぎを聞きつけた狩りをしていた貴族の者たちが様子を見にこちらへきた。


「おい。お前たち、そこで何をしている?」

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