最悪な再会
「そんな……嘘だろ……」
ユリウスは現実を受け入れられず、膝から崩れ落ちる。
本来ならエニシダに触れることは許されないが、まだ体が温かければ何とかなるかもしれないと混乱しながらそう思い指先に触れるが、とても冷たくどうにもならないと突きつけられた。
ユリウスはこれからどうすればいいかわからなかった。
イフェイオンにこの光景を見せるわけにはいかないと頭の中ではわかっているのに、体が指一本も動かなかった。
ユリウスはその場で、ただ呆然とこの状況を受け入れられず現実逃避をした。
何がいけなかったのか。
どうすれば間に合ったのか。
何故彼女が死ななければいけないのか。
そもそも何故彼女のような人が呪われたのか。
答えが出ない謎に嵌りかけていたとき、ふと視界に知らない男の顔が入った。
ユリウスはエニシダから視線を横にずらし男を捉えた。
(誰だ?こいつは?)
エニシダの隣で横になっている男に気づき、眉間に皺がよる。
見る限りその男も死んでいるようだった。
この男は一体誰だと顔から正体を特定しようとしたが、記憶を辿ってもわからず、一度も会ったこと人物なため知る方法がないと特定するのを諦めた。
それよりも、もっと重要なことがある。
この男はエニシダとどういう関係なのかだ。
恋人同士か?
と一瞬でも頭の中で嫌な想像をしてしまうが、すぐにそれはないだろうと思った。
もし恋人同士なら二人は抱き合うか手を握って幸せそうな顔をして死んだはずだ。
だが二人は顔は幸せそうだが、体のどこも触れ合っていない。
エニシダは仰向けで死に、男は横向きでエニシダの方に体を向けて死んでいた。
どう見ても恋人同士というよりは主従関係か男の片思いにしか見えない。
主従関係だったら男は死ぬ必要はないはずだとユリウスは思い、きっと後者が正解な筈だと推察した。
その推察は当たっていたが、ユリウスはそれを確かめる方法がないため、これから男にしようとする最低な行為を心の中で謝罪した。
二人の関係が推察とは違い、もし恋人同士だったのなら、ユリウスがこれからすることは全てイフェイオンのためを思ってすることなので、男には悪いことをするとわかっていたがしないという選択肢はなかった。
ユリウスにとって一番大事でさいゆうせんされることは、イフェイオンを守ることだ。
それは本来、戦のときだけだが、ユリウスは今以上に守らなければならない状況は、これまでもこれからも一生訪れ無いと確信した。
愛する人が知らない男と一緒に死んだかもしれない光景を見るなど耐えられないだろう。
イフェイオンの心は既に限界に達している。
エニシダの死を受け止め切れるかも怪しいのに、さらに男が隣で一緒に死んでいる光景など見たら、間違いなく心が壊れてしまう。
それだけは絶対に避けなければ、とユリウスは思い、男を抱き抱えて隠すことにした。
心の中で何度も謝罪し、必ず埋葬すると誓いながら、イフェイオンがこちらに来る前に急いでその場から離れた。
とりあえず木の後ろに隠して、イフェイオンにエニシダの死を伝えにいかなければと立ちあがろうとしたそのとき、悲痛な叫び声が耳に届いた。
「エニシダ嬢!」
ユリウスは声を聞いた瞬間、声の主が誰かわかった。
慌てて後ろを振り向くと、イフェイオンがエニシダを抱き抱えていた。
いつきたのか。
気配を全く感じなかった。
男を離れさせて良かった、と思うと同時に、見られていないような、と不安にも駆られた。
ユリウスはしばらくその場から動けず、視線も逸らすことができなかった。
ユリウスはただ二人の姿を見ていることしかできなかった。




