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私達、婚約破棄しましょう  作者: 若狭巴


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ギルバートはユリウスに促されるままに下に降りた。


ユリウスは降りないつもりなのか、その場から動かなかった。


地面の下にあるはずなのに、周囲は暗いどころか明るい。


階段を降りていくたびにその光は強くなっていく。


なぜ?と不思議に思っていたが、階段を全て降りて墓のある場所。


少しだけ広い空間の場所に出ると、その疑問は解消された。


上を向くと地面が透けて、山茶花の木と空が見えた。


太陽の光が地面を通り抜けて、この空間を照らしていたのだ。


四年間眠り続けたせいか、ギルバートの知らない魔法の知識が目の前にあった。


興味をそそられたが、今はそれよりも大事なことがある。


イフェイオンとエニシダ、今日は二人に会いに来たのだ。


ギルバートは二人が埋葬されている墓に近づいた。


先にエニシダの墓の前に立ち、花を置く。


なんて話しかけるべきかわからず、ギルバートは少しの間沈黙していた。


それからゆっくりと国が滅んだ後のことについて話し始めた。


「もう、ユリウスから聞いたことかもしれませんが、エニシダ様の功績が世界中で称賛されています。私たちが戦から無事に変えることができたのも、きっと、いえ、間違いなくエニシダ様が作ってくださった薬のおかげでしょう」


ギルバートは一旦言葉を区切った後、やらせないといった感じで息を吐いた。


「伯爵の悪事は全て暴かれました。伯爵の功績だと思っていたのは、全てエニシダ様の功績だと世界中の人たちが知ることになりました。でも、今さら遅いですよね。あなたはもうこの世にいないのですから」


ギルバートはエニシダの名誉が回復したときは、まだ意識が戻っていなかったため、詳しくしは知らない。


全ては人づてで聞いた話だ。


エニシダの名誉を回復させたのは神殿とオルテル領地に住んでいた人たちだと。


オルテル領地はの民はどういうわけか比較的に被害が少なかった。


死んだのは騎士たちと数名の民だけ。


町の被害も少なかった。


なぜオルテル領地だけ被害が最小で済んだのかは未だに謎に包まれたままだが、誰もが口には出さなかったがわかっていた。


エニシダが守ったのだろう、と。


彼女は多くの人を救い、守った。


それなのに彼女の最後は呪いによる死。


誰もが、彼女を呪った犯人を見つけ出そうと躍起になっている。


だが、残念なことに犯人の手がかりは一向に見つからない。


時が経つにつれ、誰もがやっぱり不治の呪いだから仕方ないと諦めていった。


五年も経てば多くのものが、自分の生活に戻っていた。


エニシダの功績と聖女のような人柄を忘れないため銅像が建てられたが、彼女に感謝していた気持ちも次第に薄れていった。


その気持ちが蘇るのは彼女の薬が必要になったときだけだった。



ーー彼女の作った薬さえあれば……



どんな怪我も病気も治したそな奇跡の薬を人々は求めた。


だが、同時に腹立たしい気持ちも抱いてしまった。


彼女が薬の作り方を残していれさえいれば、いや、誰かに作り方を教えてさえいれば、と、非難する声も出た。


だが、それは少人数だけですぐに鎮静化された。


この話を聞いたときギルバートは憤りを感じた。


何て酷い奴らなのだ。恩を仇で返す奴らなのか、と腹が立った。


だがすぐに自分にそんな権利があるのかと思い直した。


エニシダ・オルテルは間違いなく多くの人を救った。


だが、誰一人として彼女を救うことはできなかった。


オルテル・エニシダは死んだ。


もう、彼女に感謝を伝えることも謝罪することもできない。


なぜ彼女のような善人が死に、なぜ悪人は甘い蜜を吸いながら長生きをするのだろうか。


生きるべき人間が死に、死ぬべき人間が生きる。


何とも生きにくい世の中だ。


だが、彼女にとってはその方が良かったかもしれないと考えることにした。


人は死んだら天国か地獄にいくと言われている。


信じている者もいれば、疑っている者もいる。


ギルバートは信じていた。というよりは時の神の加護を授かっているので、知っていた。


エニシダは死後の世界では間違いなく善人だけがいる世界、天国へと導かれたはずだ。


そこでは誰一人、彼女を傷つけるものはいないだろう。


そうであってほしい。


「そちらでは、誰にも傷つけられることなく、幸せな日々がおくれることを祈っています」

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