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私達、婚約破棄しましょう  作者: 若狭巴


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黒魔術 3


「貴様!ふざけているのか!」


伯爵は今にも殴りかかりそうな勢いで怒鳴る。


「黒魔術だと!?そんなことをすれば私は殺されるだろうが!何が目的だ!最初から馬鹿にするためだけに依頼を受けたのか!?こんな依頼無効だ!私の求めていたものではない!他の方法を今すぐ言え!そうでなければ金は一切はらわないからな!!」


伯爵は顔を真っ赤にして一方的な言い分を捲し立てた。


「別に構いませんが、困るのは伯爵ではありませんか?」


ドルーラはにこやかに笑いながら脅す。


「どういう意味だ」


伯爵はドルーラの脅しに眉をひそめる。


「そのままの意味ですよ。国王陛下には今度はなんて説明するつもりですか?」


情報屋を名乗るだけあって、そのことを知られていてもおかしくはない。


普段だったら、この程度の脅しを鼻で笑って聞き流していただろう。


だが、今の伯爵は普通ではない。


ドルーラの挑発にまんまんと乗ってしまい、元々失っていた冷静さを更に失ってしまった。


「私と陛下の問題だ!貴様に関係ない!」


伯爵は自分が墓穴を掘ったことに気づいていない。


「確かに伯爵様のいう通り、私には関係ありません。ただ、その問題を解決できないから私のところに来たのではありませんか?」


ドルーラの言う通りだった。


だが、それを認めたら黒魔術に手を出さなくてはいけなくなる。


それを拒否したところで薬の効能が上がらなければ、いずれ嘘がバレる。


そうなれば今まで薬を作っていたのが自分ではないと皆に知られてしまう。


伯爵は今二つの選択肢を迫られていた。


正直に己の罪を公表するか、それとも黒魔術に手を染めてまで嘘をつき続けるか。


そのどちらかを選ばないといけなかった。


どちらをとっても地獄なのには変わりない。


伯爵の答えは最初から決まっていた。


だが、どうしても他の選択肢があるのではないかと期待して、決断を先送りにしていた。


「その黒魔術について教えろ」


伯爵は嘘をつき続けることを選んだ。


まるで被害者のように苦しそうに言う伯爵にドルーラはハッと鼻で笑いそうになった。


「もちろんです。こちらにその方法を書き記しています」


ドルーラは引き出しから半分に折られた薄汚れた数枚の紙を取り出し見せる。


伯爵はその紙に手を伸ばし取ろうとするが、ドルーラは取られないように後ろに避けた。


「なんのつもりだ」


伯爵は目を釣り上げる。


「それはこちらの台詞ですよ。伯爵様」


ドルーラは困ったように笑う。


「先に代金を頂かないとお渡しできません。忘れるなんて酷いですね。毎回そうなのに」


ドルーラは挑発するように紙をヒラヒラさせる。


伯爵は舌打ちをした後に懐から袋を取り出し、机の下に落とす。


ドルーラは中身を確認した後、問題ないとわかると紙を伯爵に渡した。


伯爵は奪い取るように紙を受け取ると確認もせず、懐にしまい「ここに来ることは二度とない。お前と会うのも今日が最後だ」と吐き捨てるように言ってから部屋から出ていった。


伯爵は自分が黒魔術を使ったことが知られないように、この件が無事に終わったら殺すつもりの宣言だった。


ドルーラはその宣言を正しく理解した上で、部屋から出ていった伯爵に向かってこう言った。


「いや、残念だが、俺たちはもう一度会う運命だ。伯爵様」




※※※




伯爵は屋敷に戻ると、急いで部屋に向かった。


最近は薬のせいで苛立つことが多く、使用人達のちょっとした態度に腹を立て怒鳴るのが当たり前だったが、今はそれをする時間すら惜しく寛大な心で許してやると思いながら通り過ぎた。


使用人達は深く頭を下げ、今日も怒鳴られるのかと身構えたが素通りされた。


呆気に取られながら安堵のため息を吐き、仕事に戻っていく。



伯爵は部屋に入ると鍵を閉めた。


窓に近寄りカーテンを閉め、部屋に誰もいないことを確認した後、ドルーラから渡された紙に書かれた黒魔術について確認した。


魔法は本来魔力を持った者たちだけが使える代物だった。


今から200年ほど前、ある一人の男が魔法使いが魔力で描いた魔法陣を紙に書き、呪文を唱えると、不思議なことに使えてしまったのだ。


黒魔術も同じだった。


これが世間に好評された時、魔力を持たない者たちは自分たちも特別な存在になれると大いに喜んだ。


魔法が当たり前の日常に変わった。


人々は幸せだった。だが、その幸せは長くは続かなかった。


当然だ。魔法がなぜ一部のものしか使えないのか、考えれば簡単に答えが出る。


魔法は特別だ。それは人を幸せにもし、簡単に傷つけることもできる。


魔法は圧倒的な力だ。その力を生まれた時から使っていた者たちとは違い、突然手に入れられた者たちは制御することができない。


魔法陣さえ描ければ強者になれるのだ。


欲に溺れ、人間たちの醜い争いよって大勢のものが命を落とし、ようやく人々は魔法は自分たちの手に余るものだったと気づいた。


魔法使いたちは人々の記憶からこの事件のことを消し、その日から魔力を持たないものが魔法陣で魔法を使おうとするのを防がことになった。


伯爵が今からやろうとしていることは、魔法使いたちの中で禁じられていることだった。


そんなことを知る由もない伯爵は、知らないうちにもう一つの禁忌を犯そうとしていた。

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