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私達、婚約破棄しましょう  作者: 若狭巴


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黒魔術 2


当初、公爵はイフェイオンとエニシダの結婚を猛反対していた。


あのクズ男と家族になると考えるだけで吐き気がしたからだ。


だが、先代国王から薬を守るため、ルーデンドルフ家の保護化に置くのが一番だと頼まれ、渋々承諾した。


今思えば国王は知っていたのかもしれない。


奇跡の薬と呼ばれている薬を作っていたのがエニシダだということを。


そんな彼女を救うためにイフェイオンと結婚させようとしていたのではないかと思ってしまった。


本当のところはどうなのか、もう確かめることはできないが。


「なら、両方であることを願うよ」


ルークは冷笑を浮かべて吐き捨てるように言った。


自分の手で殺せないのなら、最も悲惨な最期を迎えてほしいと思ったからだ。


「これから、どうするつもりだ」


ルークの問いかけに、公爵は少し考えてからこう言った。


「神殿に助けを乞おう」


黒魔術に対抗できるのは神聖力を持った神官たちだけだ。


化け物にされた者たちを人間に戻すことはもうできないが、汚染された土地を元通りにすることはできる。


それに魔族や魔物たちにとっても神聖力は天敵だ。


人間にとっては怪我や病を治してくれる存在。


神官がいるだけで、こちらの戦略は数段も跳ね上がる。


この状況になった以上、国王も文句は言わないだろう。


生きていればの話だが。


「周辺諸国にも助けを乞うか」


ルークの問いかけに公爵は頷いた。


「レイサン国は無理だろうから他の国には応援を頼もう」


レイサン国の兵士たちは魔族の一人に操られていた。


戦争中か敗北したかのどちらかだろう。


「だな」


ルークも同じことを思っていたのか、レイサン国は除外した。


「それで、誰を向かわす」


国に残って戦うのも危険だが、神殿と周辺諸国に助けを求める任務は重要だ。


少人数で向かわないといけないため危険も伴う。


失敗は許されないため、慎重に選ばないといけない。


ルークは生き残った者たちの顔を見て誰を選ぶべきか悩んだ。


「ルーク。頼む」


「わかった」


公爵に言われる前から自分しかいないとわかっていた。


本音を言えば一緒に戦いたかったが、民のことを思えば援軍を連れてくるしかない。


「二人もらっていくぞ」


魔族が何人いるかわからない以上、戦力はなるべく削ぐべきではない。


「二人でいいのか?」


「ああ。十分だ」


ルークは連れていく二人を選んだ後、すぐに出発をした。


たった一秒でも時間が惜しかったからだ。


公爵もその後すぐに出発をした。


ルーデンドルフ公爵として為すべきことを果たすために。




※※※




時は半年前に遡る。



オルテル伯爵は言われた通り一週間後にまた情報屋を訪れた。


「それで方法は見つかったのか」


たった一週間しか経っていないというのに、伯爵の顔はやつれ別人みたいになっていた。


男は声を聞くまで伯爵だと認識できなかった。


「ええ。見つかりましたよ」


男が朗報を伝えると伯爵の目に光が戻った。


「本当か!?さすが、ドルーア君だ」


(ドルーラだ)


ドルーラは名前を間違えられ顔から感情が消えるも、一瞬でいつも通り顔に戻した。


伯爵が自分のことを褒め称えるも明日になればその口から出るのは蔑むことだと知っていれば、例え褒められていたとしても喜べない。


嫌味にしか聞こえないからだ。


「それで、どんな方法なんだ。それは」


伯爵は早く知りたくて、無意識に体が前のめりになっていた。


そんな伯爵をドルーラは手で制してから、こう言った。


「教える前に、もう一度確認させてください」


「なんだ」


伯爵は声を荒げることはしなかったが、苛立ちを感じる投げやりな言い方をした。


もし依頼してなかったら、貴族に対して生意気だと、その顔を殴っていたぞ、と心の中で舌打ちをした。


「本当に方法はなんでもいいんですよね」


ドルーラの顔から笑顔が消えた。


いつものふざけた顔から真剣な顔に変わったので、伯爵はドルーラの迫力に蹴落とされそうになった。


伯爵は奥歯を噛み締め、その事実を無かったことにしようと、声を荒げて言った。


「ああ!薬の効能が元に戻るのなら、方法はなんでもいい!二度も同じことを言わせるな!」


「わかりました。確認も取れましたので、方法をお教えしましょう」


男は勿体ぶるようにゆっくりと口を動かして、その方法を教えた。


「黒魔術」


公爵はその言葉を聞いた瞬間、周囲の音が消えた。


目の前の男が口を動かして何かを言っているが、公爵の耳には届かなかった。


プライドだけは高いが小心者の伯爵は黒魔術を使えばどうなるかわかっていた。


体と心は蝕まれ、使ったことがバレたら拷問が可愛く思えるほどの殺され方をさせる。


黒魔術を使ったわけでもないのに、伯爵はその言葉を聞いただけで全身に鳥肌が立ち怯えてしまった。


ゆっくりと耳が周囲の音を拾い始めだすと、伯爵の心もそれに比例するように落ち着いて言った。


「それ以外に方法はありません。理由もお話しした方がよろしいですか?……伯爵?顔色が悪いですが、大丈夫ですか?」


ドルーラは顔面蒼白になった伯爵の顔を見て口角が上がりそうになるのを必死に耐えて、眉を下げて心配そうに尋ねた。


「……」


伯爵の耳には届いていないのか反応がない。


もう一度、名前を呼ぶと今度は反応があった。


焦点が定まっていない目がゆっくりと元に戻り、呼吸も安定しだすと、伯爵は怯えから怒りの感情へと少しずつ変化した。


完全に元に戻った時には伯爵はドルーラに対して明確な殺意を向けていた。

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