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第99話 後悔の朝

丸茂先輩こと、健二の心境からのスタートです。

 いつものように目が覚めた。

 昨日はパリの心霊スポットをネット検索しながら寝落ちした。メガネは確か…あ、あった。

 来年の夏は星と馬場と一緒にルーブル美術館に行く。僕の人生、女の子絡みの楽しい事なんてあんまりなかったような気がするから、そのことを考えるだけでウキウキしてしまって、つい色々と調べてしまう。


 でも、今朝はちょっと違う…ああ、来てしまった。

 あれが。


 嫌ならやめればいいだろうと思うかもしれないけど、好奇心が勝ってしまう。この先を見たい、知りたい、食べたいのだ。その欲求に勝てない。


 遠い昔は、地球の海の底には何があるんだろうとか、空に浮かぶ星に行くことができる日がやってくるのだろうかとか、自分が生まれた頃とは比べ物にならないくらい、フカフカになっていくパンや菓子、複雑な味付けになっていくソースたち、調理方法もどんどん開発されていく中、この先、どんな味わいの食べ物が出てくるのだろうとか、交通手段、通信手段の発達、建築技術の発達や変移、エンターテイメントや娯楽(風俗を含めて)がどうなっていくんだろう?

 そんなことを考えると、また生まれ変わって、この目で、この舌で確かめたいと思ってしまう。


 ということで手続きに行くことにした。初回はちょっと面倒臭いけど、昔ほどじゃない。

 まだ、ちょっとぼんやりしているけど、直ぐに慣れる。これで何十回目の生まれ変わりだろう…前は何回目だとか気にしてたけど、最近は、記録をみてああそういえばそうだったなって思うくらい。


 手続きが終わり、帰ってヒオスに連絡を取ろうなんて思いながら、歩いていると、とある人に声をかけられた。

 この人、暇なのかな?って思うくらい、捕まると長い。

 僕の事、ちょうどいい茶飲み友達くらいに思ってるのかと思うこともあるけど、まあ、断るのも何なので付き合うことにした。





 やっぱり長かった…

 それに、人の個人情報漏らし過ぎだろうと思ったけど、いろいろ情報が得られて有意義だったし、正直、驚きの連続だった。


 最近は地球にお買い物に行くのが楽しいと言って、マー〇ス&ス〇ンサーと書かれた箱からビスケットを出してくれた。コーヒーはこれ便利だねとか言いながら、ドリップバックのコーヒーにお湯を注いでくれた。コーヒーが飲み終わると、紅茶もあるよと言って、T〇Gの紅茶を入れてくれた。

 どこかおすすめのコーヒー、紅茶のお店を知らない?と尋ねられたので、日本の東京の銀座ってところに行けば、バ〇ャコーヒーとマ〇アージュ・フ〇ールが近くにあって、美味しいコーヒーと紅茶が買えますよと返事をしておいた。





「健二から誘ってもらえるなんて嬉しいよ。」

 大町駅前でジョシュア君と待ち合わせをした。輝くような満面の笑みで彼が近づいてきた。

 この笑顔に有希ちゃんもイチコロだったんだろうなあ…本当に、羨ましいよ。


 駅近くの、タパスが美味しいスペインバルに入った。


「でさあ…」

 何から切り出そうかと考えた。


「なに?」

 そう言いながら、生ハムをつまみながらジョシュア君がこちらを向いた。


「何から切り出そうかなって…」


「もしかして?思い出した?」


 そう聞かれて、素直に頷いた。


「今回は、どんな気分?」


「目覚めたときはちょっと後悔の気持ちもあったけど、まあ、いつも通りだよ。」


「いつも通りならば何より。」

 そう言って微笑みかけてくる。ああ、微笑みが眩しい。


「お前は?今回どんな感じだったの?」


「僕は、記憶が戻る前に既にエシャと出会ってたから、記憶が戻った時は、普通にうれしかったよ。」


 羨ましい限りである。


「そっか…それで、話を聞いたんだけど、大変だったんだね。」


「え?」


「エシャが暴走しかけたんだて?有希ちゃんが渡した石のせいで。」


「え?誰から聞いたの?」


「あの人だよ、他にこんなに他人の情報漏らしまくって、おとがめがない人なんていないだろう。」


「…あの人…、ああ、あの人ね…」

 ジョシュア君の表情が一瞬曇った。


「それと、馬場の事は驚きだったよ。あの人に会ったんだってね。」


「あの人、最近、時々家に来るんだよ。その話も聞いた?」


「ああ、ユーリーがこっちにいるんだってね。その話も聞いた。」


 あの人(人と言っていいのか悩むけど)、こと、イムナは六番目の神でありながら、五番目の神ソナイが消滅した後、エデンを離れて、GW本部の医療部の長的な位置づけで働いている。天下り的なものかと思ったけど、誰よりもバリバリ働いている。

 時々、呼び止められて世間話をすることがあり、その時、どうしてエデンを離れたのか尋ねたことがあった。その時の彼の答えは『奇数は良くない。多数決で物事が決まってしまうからね。神の数は偶数にしておくのがいい。』だった。


「あの人、益々自由を謳歌してるよね、人生の後半戦にでも入ったのかな?」

 ジョシュア君がそう言ってワインを飲み干した。その姿、絵になる…


「羨ましいね。でさあ…有希ちゃんの事なんだけど。」


「ああ、もう別れたよ。」


「知ってる。」

 ジョシュア君と有希ちゃんが別れた話は有希ちゃんから聞いている。そして、有希ちゃんがジョシュア君を諦めきれないことも聞いている。あの声が、体が、全てがと…聞きたくもない話を何回も聞かされている。この先もまだ聞かされるのだろう…


「有希ちゃんも家に来て夕飯食べて帰ることあるよ。その時は、エシャもあかりもいるけど。」


 その話も有希ちゃんから聞いている。ジョシュア君の家に押しかけていくと、帰れと言われるけど、夕飯はご馳走してくれるし、お手伝いさんたちが作ってくれるご飯がマジうまいと…


「大丈夫なの?エシャ、有希ちゃんの事、どつき回したりしない?それと馬場はどんな顔してそのメンバーで夕飯食べてるの?」


「…どつき回すって…エシャはまだ七歳のカヨワイ女の子だよ、ひどいなあ。明は二人の喧嘩を横目に黙々とご飯食べてる。」


「カヨワイ…? 見た目は子どもでも中身はエシャだろう。」


「エシャのことなんだと思ってるの?本当に失礼だよ。」


「その話は置いておいて…」


「言い出したのはそっちだろう。」


「だから、一旦、置いておいて。有希ちゃんの事だけど、彼女の名前はジャスミン、最近の名前って昔と比べて華やかな感じだよね。名前も可愛いいよなあ。」


「その話も、一旦置いておかない?」


「そお?それで、ジャスミンちゃんは、今回二回目の転生で、まだ新人。多分、エデン内部に入ったこともないだろうし、神に直接会ったこともないと思う。」

 そう言って、エビのアヒージョの油をパンにシミシミさせて、口に入れた。エビの香ばしさとニンニクの旨味…うまし!


「すごい情報網だね…それも、あの人が教えてくれたの?」


「いや、これは、実行者管理部のパートのマギさんから聞いた話。あの人、まだパートで働いてたんだね。何歳だろう?」


「マギさんは確か…百二十歳くらいじゃなかったかな?マギさんでも、その情報漏洩っぷりは、処分レベルでしょう?」

 ジョシュア君がちょっと驚いている。情報管理厳しいからそう思うよね。


「まあ、マギさんもその辺はちゃんとわきまえてるみたいで、漏らしても大丈夫な人は選んでると思うよ。」


「マギさんからジャスミンちゃんに、僕の話も伝わってたりしてないよね?」


「ああ、そこは大丈夫。ジャスミンちゃんはヒオスの事は、工作管理部のシアって人だと思ってるはずだから大丈夫よって、マギさんが言ってた。」


「…ならば良かった、でもその話をマギさんが知ってるってことは…」


「まあ、管理部内の多くの人がその話を知ってるだろうね。」

 ジョシュア君がちょっとだけ冷や汗をかいているように見えた。





今回のお話はいかがでしたでしょうか?

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