第100話 馬場って何者?
記念すべき100話目ですが、特に何が起こる訳でもありません。
いつも通りの、こちらのお話を楽しんでいただけると嬉しいです!!!!!
「それで、どうして有希ちゃんが来海に石を渡したのか、その辺りについて、あの人、何か言ってなかった?」
ジョシュア君が真剣な表情で尋ねてきた。
「明確には言ってなかったけど、変な話だとは言ってたね。」
「そうだよね、やっぱり、変だよね。」
そう言って、ジョシュア君が少し考え込むような表情をした。
「子どもに石を渡せなんて…そんなこと指示されたことないもんな。でも、自分以外で受けたものがいないとも限らないけど。」
他の実行者がどんな指示を出されてるかなんて知らない。自分から人に話してはいけないし、聞き出すのもご法度。
「有希ちゃんは何って言ってたの?何か聞いたんだろう?」
「エデンの入口まで行って神使から指示を受けたとは言った。」
「エデンの入口?…メリンナ島のことだよね?それ以外は使われてないし、僕たちは立ち入れないはず。」
「普通ならば使わないけど、逆に誰も管理してないから、誰かが使おうと思ったら、結構簡単に使えるんじゃないの?」
「そうかもね…でも、有希ちゃんに具体的にどこで、誰に指示を受けたかなんて聞けないもんなあ。」
「…もし、聞いたら?」
「え?まだ聞く気?」
「他に確かめる方法がない場合は聞いてみようかなって。」
「止めてよ、もし有希ちゃんが答えたことが誰かに知れたら、有希ちゃんまで処罰されるかもしれない。有希ちゃん新人だから即刻辞めさせられる可能性だってあるし、そんなの可哀想だよ。」
「だから、他に方法がない場合って言ってるんだよ。」
ヒオスはエシャ絡みの事になると少し非道になる節がある。有希ちゃんを、ジャスミンちゃんを巻き込んで欲しくない。
「駄目だよ。もし、お前が有希ちゃんに酷いことするようなことがあれば、僕は、お前の敵に回る。」
「やっぱり、有希ちゃんのこと好きなの?」
面と向かって聞かれると恥ずかしい。
「…うん。」
でも、素直に答えた。だって、彼女は可愛いし、本当はいい子だ。
「親友の好きな人に酷いことはできないからね…どうしたもんかね。」
そう言うとジョシュア君は、頬杖を付いて考え込んだ。
「馬場って何者?」
話題を変えて、とても気になっていたことを尋ねた。
ほかの人には見えないユーリーが、馬場には見えている。
「わからない。どうして明にはユーリーが見えるのか、本当に謎だよ。はじめのうちは僕たちの仲間かなとも思ったけど、そうじゃないらしい。」
「それも、あの人が言ってたの?」
「いや、それはヌアが言っていた。」
「へぇ…ヌアも馬場の事を知ってるんだ…」
馬場ってすごいな、エデンで一目置かれた存在なのか…本当に何者だ?
「そうなんだよ。でさあ、彼女から見たら、ユーリーは神社にいる白いジャージを着たただの美青年だからね…あの見た目と、穏やかさだもん、まあ、好きになるのも分からなくもないけど…よりによって神使とは…」
「え?馬場ってユーリーが好きなの?…彼はどこかの神社にいるの?」
「うん、明はユーリーに夢中だよ。彼はうちの近所の八幡宮にいる、って言うか、そこでしか自分の姿に戻れないんだよ。あとは猫のギンちゃんの体を借りて生活してる。こないだ家に来た時にいたでしょう?立ち耳の可愛い白猫ちゃんが。」
「ああ…いた。ちょっと太めで目力強めの白い猫…あれがユーリー?…何だか感慨深いなあ。可愛いけど、なぜにあの猫?」
「ギンちゃんも穏やかだから、ユーリーと一緒にいてもストレスにならないんじゃないかな?だから、あの猫にしたのかも…よく、わかんないけど。」
自分の意見言った後に、よくわかんないけどって…ヒオスの口癖だ。ああ和む。
「明から聞いたんだけど、ユーリーが不思議なことを言ってたんだって。エデンでは死ぬことはないけど、突然いなくなることがあるって…」
「え?神使っていなくなることあるの?気づかなかったなあ…まあ、特定の誰かと懇意になることもなかったから、気づかなかったけど。」
「ユーリーは時々会うこともあったし、名前も知ってたけど、ほとんどの神使は名前も知らないし、顔も見分け付かないし、いなくなっても気づかないよなあ。」
そう言って、ジョシュア君がメニューを眺めて、笑顔で一言。
「そろそろ、パエリア頼まない?」
いいねえ、ご飯ものも食べたいと思ってたところ。僕たちは見た目も性格も違うけど、なんだか気が合うんだよなあ…
ジョシュア君ことヒオスは、言い方は悪いけど地方出身の成り上がり系。見た目と努力と人懐っこさを武器に実行者になったタイプ。相当努力もしてきただろうけど、上から引き上げてもらえるタイプ。能力も経験もあり、なんでも卒なくこなせるバランス型。
僕、丸茂 健二ことノヴァは、典型的なお坊ちゃま系。親の七光りとコネを武器に実行者になった。あの当時、実行者になるっていうのは物凄く誉なことだった。経験は長いけど、能力が高いわけでもなく、ただちょっと人よりも情報収集能力に長けているというか、勝手に情報が入ってくる体質らしく、それが重宝がられている。でも、一人で指示を受けるというよりは、誰かと組むことが多い。
そして、来海ちゃんことエシャは…わがままお姫様の皮を被った猛獣。以前、黒い狂犬と陰口をたたいているのがばれたときは、烈火のごとくメッチャ怒られて土下座までさせられた…犬に失礼よとかいう理由で…。それからは猛獣と呼んでいる。こっちはそこまで怒らなかった。
そして昔は本当にド猛獣だった、誰それ構わず何のためらいもなく心身共に滅多刺し、滅多切りにして…今では随分と落ち着いたけど、本当に昔は苦手だった。彼女は力が凄いから、当時は日常業務はさせられないけど、ここぞというときの最終兵器的な位置づけだったんだと思う。
そして、ヒオスの凄いところはその猛獣を手なずけた、猛獣使いであると言う点である。
猛獣単独の業務遂行はその後の被害がバカにならない。そこで、猛獣使いであるヒオスと組ませることで被害を最小限に抑え、彼女が伸び伸びと任務を全うできるようにした。最近は、そんな最終兵器が登場するような場面もそうそうないし、彼女もその辺はちゃんと弁えているみたいで、有能で経験豊富なバランス型と言ってもいいかもしれない。これもヒオスの教育の賜物か?それとも、もともとその素質があったのか?
まあ、そんなことはどうでもいいや。
そして、山本 有希ちゃんことジャスミンちゃんは、転生二回目の新人さんで、あの性格だから、きっとプライドと向上心が高いデキル系だと思う…面倒ごとに巻き込まれなければいいのだが…
そして、馬場 明…地球の普通の大学生。天然だけど、どこか鋭いところがあって、神使が見える。まったくもって、謎の存在。ただ一つ確かなことは、かなりの面食いだってこと。ユーリーなんて顔面偏差値二万越えの男に出会ってしまったことは、ある意味不運だ。見た目だけで言ったら、地球上の生き物であれを超える生き物なんて存在しない。
そんなことを考えていたら、パエリアが届いた。
「もう一本ワイン頼まない?今度は白でいい?」
ジョシュア君がそう尋ねてきた。
「ちょうど僕も、白が飲みたかったところ。」
そう言って、グラスの赤ワインを飲みほした。
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