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第95話 残暑のクリスマスパーティー

ゴールデンウィーク ハズ カム

5月2,3,4,5,6日の5日間は毎日更新!

是非、お立ち寄りくださいませ〜!

「エージェント大河たいが、報告ありがとう。状況は理解したわ。」


 これが素なのかどうかわかんないけど、最近の来海くるみちゃんのキャラ設定は不明だ。


「ジョシュア君カッコいいからね、モテるんだろうな~。あ、今日の鶏は小ぶりだから二時間くらいで焼けると思うよ。夕飯食べて行ってよ。」


 キッチンで鶏の丸焼きをオーブンに入れながら本間さんが微笑んでいる。鶏?いやそれターキーってやつじゃないかい?この残暑厳しい時期にオーブン料理とは、かなりの強者。


「あの子、詰めが甘い時があるから、まだ油断は出来ないわね。あかり、引き続き、彼等の動向を調査して報告して。」

 引き続き?それはお約束できないな。


「来海ちゃんもスパイごっこしてるの?」

 大河がに戻って尋ねた。


「そうよ。学校で流行ってるの。」


「へぇ…それで、来海ちゃんの立ち位置は誰なの?」

 大河も来海ちゃんの様子に戸惑っているのだろう。


「そうね、Nってことにしておこうかしら。」


「へぇ…小学校なのに、随分と渋い古めの映画が流行ってるんだね。」

 大河にしては珍しく、苦笑いしている。



 残暑厳しき折のクリスマスのような晩ごはん。


「今日は、来海と二人のつもりだったから、鶏が小ぶりなんだけど、シチューも作ったから、沢山食べて行ってね。パンも沢山あるし、ご飯が良かったら、冷凍したのがあるから言ってね。」


 すげ~。の一言しか出ない。

 この後、登場予定の巨大ティラミスもこの食事で完食するのかもしれない。

 ターキーのお肉を切り分けてもらって、ギンちゃんも嬉しそうにハムハムしている。


 ターキーの丸焼きの周りをこんがりと美味しそうな焼き色を付けた、ジャガイモ、ニンジンが取り囲んでいる。そして、このグレイビーソースが美味しい。正直、グレイビーソースって味が薄くて、何のためのソースなの?って思っていたけど、このソースはメッチャ美味しい。


「クリスマスみたいなメニューですね。」


 そう尋ねると、本間さんが


「本当だね、そのつもりはなかったんだけど、こういう簡単な焼いたり煮たりする料理しか作れないから。それと、知ってる?フィリピンではberが語尾に付く月はもうクリスマスシーズンなんだよ。だから九月は立派なクリスマスシーズン!」




「来海ちゃんは、この状況を知ってどうするの?」

 大河が来海ちゃんに尋ねた。


「特に何もしないわよ。」


「じゃあ、どうして知ろうとするの?」


「知らないよりも、知ってる方が良いじゃない。情報はあるに越したことないわよ。」

 来海ちゃんが平然と答える。


 それ、小学生の返答じゃないから、もう、子どもの振りをすることを放棄したのだろうか?


「そうかなあ、僕は知りたくないな。浮気されたとしても、僕が知らなかったら、それはされてないのと同じじゃない。」


「そんな考え方していたら、相手の思う壺じゃない。私は良くないと思うけどな。明はどっち派?」


 急にそんな重めの話を振られましても…浮気されたら?…それ以前にお付き合いしたことないしなあ…でも、一つ言えることがある。


「私は、知りたくない。浮気云々じゃなくて、知らなくていいことは知りたくない。」


「へー、意外。明は何でも知ろうとするのかと思ってたよ。だから、今日もジョシュアさんの浮気の現場を張ってたのかと思ってた。」


「私ってそんな風に思われてるんだ。何でも知ろうとするって。」


 そう言って大河に目をやると。大河が申し訳なさそうに


「ごめん、悪い意味で言ったんじゃないよ。何でも深く考えて、真相を探ろうとするところがあるから、僕はいい意味で言ったつもり。でも、気にしちゃったんだったら、謝るよ。」


 そう言われて、大河に申し訳ない気分になった。

 でも、『知り過ぎる』ってことは、きっといいことじゃない。もし、本当に自分が何でも知ろうとしてるのであれば、それは自分でも注意しなくてはいけないことなのかも。


「過去に辛いことでもあったの?知り過ぎて、辛い思いをしたことがあるの?」

 来海ちゃんが、ちょっと申し訳なさそうな表情で尋ねて来た。


 そう聞かれて考えた…どんなに考えても、記憶に残るほどの辛い経験はしたことがないなあ。


「ないよ。」

 私がそう答えると。


「へえ、そうなんだ。」

 来海ちゃんがキョトンとした顔で答えた。


「明、変わってるもんね。これもいい意味ね。」


 キッチンで残り物を片付けていた本間さんが、声を掛けて来た。

「難しい話をしてるんだね。僕は今だにその辺のバランスがうまく取れてないなあ。きっと、人間でいる以上、永遠に悩み続けるんだろうね。」


 本間さんの言う通りだ。人間である以上、知りたいと思う気持ちと、知ってしまった後の後悔、何度繰り返しても、反省しても、また繰り返すんだろうな。銀ちゃんたちには、そういう事はないんだろうな…きっと。




 結局、今回のお出掛けデートもみんなでワイワイしてしまった。来海ちゃんの家でも美味しいご飯を食べて、カードゲームをして、気が付くと結構遅い時間。大河も今日は実家に帰って、明日の朝、東京に戻ることになった。


 帰り道、大河とギンちゃんと並んで歩いていると、横にグレーのSUVがゆっくりと止まった。


「三人おそろいで、今、お帰り?」

 窓を開けて、ジョシュアさんが声を掛けて来た。


「来海ちゃんのお家で夕飯をご馳走になってました。ジョシュアさんも、今、お帰りですか?」


 助手席には誰もいない。


「うん、彼女を家まで送って来たところ。」


「ジョシュアさん、あの人と付き合うんですか?」

 大河が尋ねた。


「まだ分からないよ。今日、初めて二人で食事しただけだし。」


「ジョシュアさんは、明のことどう思ってるんですか?」

 思い詰めたような表情で大河が尋ねた。


「え?」「え?」

 ジョシュアさんと私、同時に声を上げてしまった。


「明のこと?は好きだよ。でも、これとそれとは…」

 そう言って、ジョシュアさんがちょっと考えて、

「ああ、明は僕の事なんて眼中にないから、ねえ、明。」

 笑いながらそう答えた。


「大河、何度も言ってるけど、ジョシュアさんと私は何でもないんだよ。私が好きな人は別の人だから…」

 そう言って、塀の上のギンちゃんに目をやった。


「え、本当にそうなの?」


 大河が目を丸くして驚いている。驚きたいのはこっちだよ、ずっとそう言ってたでしょう。


「そう、そう、明はその人に夢中だから。」


「え、僕は絶対に二人が付き合っていると思ってたのになあ。じゃあ、ジョシュアさんは、本当に来海ちゃんと結婚するんですか?」


「うん、来海が大人になってもそのつもりでいたらの話だけど。」


「へえ、じゃあ、今はフリーなんですか?」


「来海との約束があるから、完全フリーじゃないけど、まあ、期限付きのフリーってことかな?」


「へぇ…」

 まだ、大河は目を丸くしている。





「明が好きな人って誰なの?」

 次の日、神社の境内で銀ちゃんに尋ねられた。


「銀ちゃんに決まってるじゃない。」

 自分の心臓の音が耳の中で鳴っているくらいバクバクしてる。でも、はっきりと答えることができた。


 言い終わって、そのまま銀ちゃんのヘーゼルの瞳を見つめた。見つめながら、これは夢かもしれない、でも夢でもいいや、すご~く幸せだなって思った。


 きっとこのまま…


 銀ちゃんは私を吸い込むようなその瞳でずっと私を見つめている。


 ああ、きっとこのまま…


 こんな瞬間が二人に訪れるなんて、夢でもいいから、誰も邪魔しないで、お願いだから。

 そう思った瞬間。


「僕も明が好きだよ。」

 そう言って、銀ちゃんがニッコリ微笑んだ。


「銀ちゃん、私も銀ちゃんが好き、大好き。」

 ほほ笑む銀ちゃんの顔を見つめて、そう答えた。


「僕も明が大好き。」

 そう言って、銀ちゃんは微笑み続けている。


 いや、そうじゃなくて…ほら、この流れは、私も良くは分からないけど、あれよあれ…


 手を繋いで、お互い見つめ合い、大好きと言い合っている。

 これは立派な両想い。まあ、銀ちゃんと私にしては、この夏休みの間に随分進展あったな。と思うことにした。





今回のお話はいかがでしたでしょうか?

感想などいただけると励みになります。

毎週水曜、日曜の14:30更新中

宜しくお願いします。

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