第92話 明日はデート
ゴールデンウィーク ハズ カム
5月2,3,4,5,6日の5日間は毎日更新!
是非、お立ち寄りくださいませ〜!
[返事ありがとう!急だけど明日のランチはどう?もしも、都合が合わなければ候補日を教えて欲しいな。ちなみに、食べたいものある?]
電車の中でスマホを両手に再び震えた。
明日?明日のランチ?ランチ…かあ、まあ、きっと、気を使って昼間の時間帯を指定して来たんだろう。気遣いが出来る人なのかも。
明日は部活もないし、何てタイミングが良いんだろう。タイミングが合う人とは結局合うのよ! バイトは後で断っておこう。
食べたいもの?正直言って、なんでもいいんだけど…夜だったら、バーとか飲み屋みたいなところでって流れになるんだろうけど、ランチだと具体的にメニュー出したほうが良いのかな?…無難なお洒落カフェとかを提案して置こう。もうこれは、直ぐに返事しても良いってことだよね?逆に直ぐに返事しないと駄目な奴だよね?
[明日のランチOKだよ。大町駅前のカフェとかどう?ランチも美味しいらしいよ。]
これで良いだろう。サクッと返して、その後に続くラリーが大事だから。
そして、明日、着て行く服を決めなくちゃ!パンツでカジュアルにってのも好印象かもなあ…ジョシュアさんって何歳なんだろう?仕事は、自営業とか言ってたけど…何してるんだろう?全く情報がない…
丸茂ッちならば何か知ってるかも?
[ねえ、ジョシュアさんって何やってるか知ってる?]
[仕事?だったら、セキュリティーのシステム開発とメンテナンスの会社を友だちと一緒にやってるって言ってた]
[経営者?何て会社?]
[会社名は知らない。あと、昔、あの人多分バイオリニストだったよ]
はあ?バイオリニスト?んな経歴ある?調べてみるか…
本当だ…突如現れて、数年で活動を休止した謎多きバイオリニスト…
マジか…
謎多き…うわ、ツボだわ。
デビューが十六歳で、え~と、じゃあ今は二十代後半って所か。しかも、なにこの十代の頃の写真…絵画みたいに美しい…多少は加工してあるのかな?
何々?十八の時に倍以上年上の女性と交際していることを公言しているが、その女性が誰かは不明のまま。現在は、音楽活動はしていないようで、自分で会社を立ち上げて事業を行っている。
倍以上年上…?てことは相手は四十歳近く…
情報が錯そうし過ぎて、逆に参考にならない。
手強いことは分かったけど、まあ、向こうがこっちに興味があるのは確かだ。自信もっていこう!
何て思っていたら、返信が来た!
[いいね~、じゃあ、明日十二時にお店でどう?]
[OK 楽しみにしてるね~]
その後、返事がない。
なんか質問を入れておけばよかったなぁ、今から、追加で質問ってのもなぁ…まあ、明日、会って話せばいいんだし、それよりも服、靴、バッグ、アクセサリー、ネイル、下着、香水と
香水は…割と好きってどういう意味?…割とって…
ネイルは、もっと落ち着いた色に塗り直そう。
服は、カフェだしカジュアルで良いだろう。
バックはあ~こっちの夏っぽいのでも良いかな…でも、こっちも良いんだよな。
これでどうだ?いつもとあんまり変わらないかも…
鏡の前に立つ自分を見てそう思ったけど、いつも通りイイ感じってことだから問題ない!!
気が付くと夕方になっていた。
なんとか明日の服とバックと靴が決まり、ネイルも落ち着いたベージュに塗り直した。
そして、後は下着!これこそ抜かりがあってはならない。カラフルなものよりは、黒か白系…う~ん、真ん中取ってネイビーにしておこう。初めて会った時、濃いネイビーのスーツ着ていたから、きっとこれがラッキーカラーだ!
これで、明日の準備は万全!
本当の美人というものは、自分の美しさに己惚れることなく、より高みを目指すものなのよ。360度全方向から見てもパーフェクト!!さあ、どこからでもかかって来なさい!
再び、スマホを見たけど、あの後は返事はなし。
「明日、OKだって~」
ジョシュアさんがスマホを見てそう言った。
「ふ~ん、で、どこいくの?」
来海ちゃんがテレビの前でこちらに背を向けたままそう尋ねて来た。
「大町駅前のカフェだって。ここ、本間さんと行ったことある。夜だったけど美味しかった。」
「お父さん、大町駅周辺の美味しい店に詳しいから。」
来海ちゃんは背中を向けたままそう言って、先ほどジョシュアさんから奪い返したイカの燻製の袋をバリっと開けた。本当に食べ過ぎだよ…三袋目だよね?
そして、ちょっと不穏な空気が流れる。
三人無言のまま、各々やるべきことをやった。来海ちゃんはテレビを観て、私は依頼をされている陶磁器の人形を探し、ジョシュアさんは仕事をし…
時間がたち、時計を見たジョシュアさんが口火を切った。
「夕飯どうしようか?」
来海ちゃんは、後ろから見てもはっきりとうたた寝しているのが分る程、舟を漕いでいたが、その言葉を聞いて目が覚めたらしく。
「鰻、鰻が食べたい。」
とはっきり述べた。
「え…鰻?…じゃあ、食べに行く?お店どこにあるのかな?」
「お父さんに聞いた。」
そう言って、来海ちゃんは自分の子ども携帯の画面をジョシュアさんに見せた。
「へ~、じゃあ、食べに行こうか。三人で。」
と言う事で、約束の一つ目が突然果たされることになった。
本間さん一押しの鰻屋さんでうな重を食べた。
「身がフワフワで、皮が香ばしくて、臭みもなくて本当に美味しい鰻ですね。」
うな重を食べる事になった経緯など、すっかり忘れて味を堪能してしまった。目の前に座る来海ちゃんも、さっきまでの不機嫌が嘘のようだ。
「美味しい!鰻、美味しい!」
ほっぺたに茶色い米粒を付けて大満足している。
「あんまり鰻っていいイメージなかったんだけど、これ美味しいね。たれが美味しい。」
…たれって…まあ、このたれが美味しくてご飯が進むんだけどね。
何はともあれ来海ちゃんの機嫌が直って良かった、良かった。これでジョシュアさんも一安心だろう。
ジョシュアさんが席を立ち、来海ちゃんと二人でサービスで貰ったたバニラアイスを食べていると、来海ちゃんがおもむろに話し出した。
「ねえ、お願いがあるんだけど。」
「なあに?」
「明日、二人の様子を見に行ってくれない?」
え?二人って…
「有希さんは私の顔知ってるから、それは難しいんじゃないかな。」
苦笑いしながらも、やんわり、でも確実に断らねば。
「こういうことをお願いできるの、明しかいないの。」
いや~そんなうるうるの瞳で見つめられましても、無理なものは無理だよ。
「そう言われても、私が一人でカフェに居たら尾行してるのバレバレでしょう。それに、ご飯食べて話をするだけなんだから、心配しすぎだよ。」
来海ちゃんってば、焼きもち焼きだなあ。
「それは、わかんないわよ。」
「え?」
「どんな事情があるのか知らないけど、口を割らせるんだもん、のめり込ませなくちゃならない時だってあるでしょう。」
「え?…のめり込ませる…?」
「それに、あの子、目的のためならば手段選ばない時があるから…でも、今回は、健二の好きな人だから酷いことはしないと思うけど。」
「…酷いこと…」
想像つかない、ジョシュアさんが誰かに酷い事をするなんて…でも、神様の指示を実行するってことは…いやいや、ここは考えちゃいけない。私の本能が勘がそう言ってる。
「それに…あの子…」
そう言って、来海ちゃんはずっと握りしめていたアイスのスプーンをテーブルに置いた。
「あの子?」
エシャさんとしては先に生まれているから、ジョシュアさんの事をあの子って呼ぶのか、なんか複雑だな…
「私のことになると、見境がなくなっちゃうの。今回も、私のことが発端だから…無茶するんじゃないかと思うと心配で、心配で。」
そう言って、謎に目を伏せた。
「…はあ?」
あれ?こっち側からも惚気を聞かされてる?
「あ~、ってことは、まあ、その、あれよあれ…何があっても仕方がないってことを来海ちゃんも理解してる訳で…だったら、もう見ない、知らない方が良いんじゃない?」
「違うでしょう、私は心配で、心配でって言ったのよ?人の話をちゃんと聞いてた?」
なんか感じ悪いな、この人。来海ちゃんだけど。
「そんなに心配だったら来海ちゃんが行けばいいんじゃないの?お父さんと一緒に行って来れば?」
「そんなの駄目よ!私が現場に行ったら大変なことになるじゃない!」
「え?なんで?」
「だって、だって、私…」
「だって?」
「だって、私、子どもなんだもん!」
は?子どもが大人のデートを覗き見しちゃいけないって法律はなかったと思うけど。
「どんなに早くても十六歳くらいだった、記憶が戻ったの。」
「はあ」
「今回、初めて七歳で記憶が戻って、私、気づいちゃったの!」
「なにを?」
「頭ではわかっていても、本当に自制心が働かないってことに。今までだったら、ちゃんと頭でも心でも割り切れていたことが、割り切れないの!頭ではわかっていても、嫌なものは嫌だし、やりたいことはやりたいし、体が口が先に動いちゃうの。だから、もし私が現場に行ったら何か仕出かして、彼の計画をぶち壊しにしちゃう…ダメよそんなの!」
「はあ」
なんかもう何も言えねえ…
「だから、明、お願い。」
「でも、私、何も出来ないよ。」
「何もしなくていいの、ただ真実を、何があったかを教えて。あの子、私に心配させまいとして隠し事するから。」
はあ、また惚気ですか…
「でもなあ…」
一人で、カフェでコソコソ聞きたくもない二人の会話を盗み聞きしたり、尾行したりなんて、恥ずかしすぎるよ。しかもバレバレの状態ででしょう。
「あ!あのカフェ、ペット可だったと思う。調べてみてよ。」
突然、来海ちゃんが話題を変えた。
「え?ペット可?」
そう言われて調べてみると、
小型犬や猫であれば、テラス、または窓際の席で一緒に食事が出来ます。ペット用メニューも準備してお待ちしております。そんな説明書きの横に、猫ちゃんと一緒に窓際の席で食事をする女性の写真が…
「わ~、いいな、こんな所で銀ちゃんとお茶したい~」
「でしょう!ギンちゃんとデートして来ればいいじゃない!」
ギンちゃんと銀ちゃんとランチデート!
悪くない!
「ほらほら、明はギンちゃんとランチデートしてるだけ、たまたま同じカフェでデートしてただけって事だったら、問題ないんじゃない!」
「え…でも、私は、明日じゃなくてもいいし。やっぱり、来海ちゃんが行けばいいんじゃないの?」
「駄目よ、明日は桃子ちゃんとお父さんと約束があるんだもん。私、子どもだから、それがすごい楽しみなんだもん。それに…」
「それに?」
「私、子どもだから、絶対にマスタークオッカのぬいぐるみが欲しいんだもん!」
ああ、本当になんも言えねえ…
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