第93話 今日はデート
ゴールデンウィーク ハズ カム
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是非、お立ち寄りくださいませ〜!
結局断れなかった。
明日はギンちゃんを連れて、あのカフェに行くのか…なんか気が重いな…でも、カフェで銀ちゃんとお茶、まあ、ギンちゃんだけど。それは、かなり嬉しい。
何を着て行こうかな?
ギンちゃんにはあの青いハーネスを付けて上げよう。あのリック型のゲージならば電車に乗って大町駅に行けるし。私はワンピースにしようかな、あの白と緑のストライプのやつ。靴は白のスニーカーで。うーん、楽しみ!
でもなあ、ジョシュアさんに見つかって、何やってるのって先に聞かれるのは癪だなあ。だったらこちらから先に言っておこうかな…ギンちゃんも連れ出さなきゃならないし…
車の中、来海ちゃんは眠っている。
「あの…」
「なに?」
「明日のランチなんですけど、もしかしたら私もギンちゃんと一緒に、その場にいるかもしれません…」
「え?…そんなに僕の事が気になるの?」
「…え?」
どういう意味だ?
「冗談だよ、来海に頼まれた?」
「はい、うるうるの瞳で懇願されました。」
「そうかあ…じゃあ、先にお店に入っててよ。有希ちゃんから明たちが座っている席が見えないような場所に座るから。」
おお、こんな時でもそんな所に気を使ってくれるなんて…っていうか、私がいることが有希さんにばれたら、それもそれでやりにくいだろうしね。
「宜しくお願いします。」
何だかすっきりして、気が楽になった。
さてさて、じゃあ、明日のランチは何を食べようかな。さっきネットで見かけたエッグベネディクトが美味しそうだったな、ガーリックシュリンプも捨てがたい。パンケーキもワッフルも美味しそうだったけど、マラサダも捨てがたい!ギンちゃんはお魚よりもお肉が好きだから、鶏むね肉の野菜スープ仕立てってのがいいかもな~
ああ、何だか明日が楽しみになって来てしまった。
11時半、大町駅前のお洒落カフェに入店、窓際のペット可の席に案内された。
昨日の夜はガーリックシュリンプにしようと心に決めていたが、今こうやって写真付きのメニューを眺めると心が揺らぐ。ラザニア、グリーンカレーも美味しそう。悩むけどガーリックシュリンプとマンゴージュースを注文した。ギンちゃんには猫ちゃんプレートを注文。デザートは食後にまた思う存分迷ってやる。
ギンちゃんは大人しく隣のペット用の椅子に座って辺りをキョロキョロしている。
昨日は来海ちゃんの勢いに押されて断り切れなかったけど、私が二人の話を聞いたところで何ができる訳でもないのだから、のんびりランチを楽しんで帰ることにしよう。ギンちゃんと二人っきりでランチなんて夢のよう!
ギンちゃんは高貴な青色のハーネスを身にまとい、私はとっておきのワンピース、二人でお洒落をして、お洒落なカフェでランチをしている。もうこれをデートと呼ばずして、何をデートと言うのだろうか。
思えば、これが私の人生初のお出掛けデート。
何度か二人っきりのお出掛けデートを試みたけど、いつも邪魔が入って、最終的にはみんなでワイワイ…あれはあれで楽しかったけど。神社でほぼ毎朝デートしてるって言えばしてるけど、あれは、デートと言うか…まあ、お出掛けデートがしたかったのよ。
「ギンちゃん、楽しいね。」
「にゃ~」
ギンちゃんも幸せそうに目を細めてお返事してくれる。
「あれ?明じゃない?またギンちゃんとお出掛け?」
ん?どこから聞こえて来たんだ、この聞き覚えのある声?
辺りを見回したけど、声の主らしき人物は見当たらない。空耳?あんなにはっきり?不思議に思いながら、辺りを見回していると、背後から再び声が聞こえた。
「僕もご一緒していい?」
振り返ると大河…なぜ、お前が、今、ここにいる?
お前、お盆明けに東京帰ったよな?
「こんな所で偶然会えるなんて。デスティニー感じちゃうね。ね~ギンちゃん!」
座っていいと言ってないのに、私の目の前に座っている。しかも、デスティニーってなんだよ?
「…大河…だよね?」
「え?そんなに垢抜けちゃった?僕?」
嬉しそうにそう答えてきやがった。
「そう言う事じゃなくて、何で、今、ここにいるの?」
「ああ、今日、友だちが所属してるオケのコンサートが大町市民ホールであって、それを聴きに来たんだ。明日は予定があるから、実家には帰らずそのまま東京に返っちゃうけど。」
「へ~」
「明は、ランチ?お茶?僕はご飯食べたいな~」
そう言って、メニューを広げている。店員さんが大河の注文を取りに来た。
「ラザニアとアイスカフェラテ、お願いします。」
ああ、またもやデートを邪魔された。
ギンちゃんに目をやると、椅子の上にちょこんと座り寛いだご様子。
…って言うか、私、何かとても大事なことを忘れてないか?
そうだった、この後、ジョシュアさんが女子大生と一緒にここに現れるのだ。その現場を大河も目撃することになる…まあ、いいか。私とギンちゃんはたまたまここでデートしているだけって言い張れば。
「ねえ、明…あれ、ジョシュアさんだよね?」
大河がキョトン顔で店の入り口の方を見ている。
「え?」
大河の視線の方に顔を向けた。本当は向けたくないけど、見ないのも不自然だ。
「一緒にいる人誰?」
「さあ?知らない。」
大河の視線が二人を追っている、ガン見し過ぎだろう。
大河の視線の先にちらりと目をやると、二人は奥の席に座り有希さんがこちらに背を向けている。随分と背中の開いた服着てるなあ…こないだの焼肉の時も二日連続でキャミソール着てたもんな、焼肉なのに。
「英会話の個人授業かな?」
どっちがどっちだよ?多分、両方英語ペラペラだよ…
「さあ?プライベートなんだから、あんまり詮索しない方がいいんじゃない?」
「そうれはそうだけど…ってか、もしかして明、二人が来ること知ってた?」
「どういう意味?」
「待ち伏せしてた?」
「はあ?」
「もう、素直じゃないな~」
もう何も言い返すまじ。言えば言っただけ墓穴を掘るのだから。
「ジョシュアさん珍しいね、服装が地味。」
「え?」
私の無言返しなど気にも留めず、大河は二人を観察し続けている。
確かに、今日は白のインナーに黒のジャケットを羽織っている。
仁香さんの命日には赤いジャケットを着て行ったし、家ではスポンジ〇ブが描かれた黄色のパーカーを着ていたり、時にはどこのデパートの紙袋ですかって思うようなジャケットを着ていたり、彼が着るとさまになってしまうが、服だけ見ると、おい、どうした?と思うような服装が多い気がする。
「接待かな?」
「何でそう思うの?」
「服装が乗り気じゃないというか…何となく。」
「へ~、いつもよりお洒落してるだけじゃないの?」
「まあ、気を遣う相手ってことだよね。」
そう言いながらラザニアを口に運んでいる。でも、視線は奥の席の二人に釘付けだ。
ギンちゃんは猫ちゃんプレートに夢中だ。私もガーリックシュリンプを口に運んだ。うまし。
「そうだ、明の好きな人ってスパイなんだってね?」
「…夏子から聞いたの?」
口止めはしてなかったけど、普通………言うか…
「うん。でさあ、思ったんだけど。」
「はあ」
「ジョシュアさんもスパイなんじゃないかなって。」
「はあ?」
毎度のことながら彼の想像力には度肝を抜かれる…いや、当たらずとも遠からずかも。神さまのご指示を実行する人らしいからなあ。変に勘が鋭いところあるよなあ…
「だってさあ、急にバイオリニスト辞めたり、今だってこんな辺鄙な所に住んでたり、意味不明なことが多いんだよね。でも、そういう裏の事情があるってことならば逆に納得出来るじゃん。」
そう言ってアイスカフェラテを啜った。
ギンちゃんは猫ちゃんプレートを完食して、私のガーリックシュリンプを狙っている。これは、味が濃すぎるから上げられないなあ。
「へえ、そういう考えもあるのか?」
なんか変に納得してしまった。
「でさあ、明が好きな人がスパイやってるってことは、って思ったんだけど。」
「ジョシュアさんがスパイかどうかは知らないけど、私が好きな人は別の人です。」
そう言ってギンちゃんに目をやった。ギンちゃんは私のガーリックシュリンプを眺めている。ごめんね、これは本当にあげられないの。
「わかったよ、この話はしない。で、あの二人はどういう関係だと思う?」
「え?デートしてるんでしょう?」
「何を話してるんだろう?声が良く聞こえないよ。このBGMうるさい。」
BGMにボサノバが流れている。
「そんなことどうでも良いじゃない、私はデザート頼もうっと。ギンちゃんなにが良いかな~?」
もうこうなったら、思う存分食べてやる。このフルーツと生クリームもりもりのパンケーキを一人で食べてやる。パンケーキならばギンちゃんにちょっとおっそ分けしてもいいかな。
「僕はプリンクレープにしよう。」
何それ?写真を見ると、クレープの上にプリンがドカンと鎮座ましましている。ああ、それも惹かれる…いや、私はフルーツ全部のせパンケーキだ!
デザートが来るのを待っている間も、大河は二人を観察し続けている。
「うお~、さりげない」
「うわ~、色気を感じるよ」
「あんな表情されたら、僕なら速攻で落ちるけどなあ」
「明も見て見なよ、明もあんな顔されたことあるの?羨ましすぎだよ」
「あれ、ダメなやつだよ、反則の領域だよ」
ずっと、大河が二人の様子を独り言のように実況している。気になってしょうがないけど、何だか見るのが怖い…何て言うんだろう?身内のデートを見ているような気恥しさがあって、正直見たくない。
「あれは、本気で落としにかかってるね。いいな~いいな~僕もあんな表情で落とされたい~」
兎に角、すんげ~ことは分かった。正直言って見たくないけど、気になって目を向けてしまった。
何なんだろうこの感じ…晴斗君のお母さんに向けた表情なんてもんじゃない…背筋がゾッとする。
あれは本当に敵に回してはいけない漢だ、今回も本気でそう思った。
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