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第83話 後始末…

 ホットケーキを待ちながら心穏やかにイムナと話をしていると、ヒオスが目を覚ました。声を掛けたが少しぼんやりしているようだ。


「目が覚めたのね、気分はどう?」


「…あんまり、良くない」

 まだ少ししゃがれた声だが、普通に喋ることは出来ている。


「それは、私がいるからかな?」


 イムナがそう尋ねると、ヒオスは何も言わずに布団を頭まで被った。数秒後に起き上がり小声でぼそりと言った。


「…別に、そういう訳じゃありません。」


「それならば、良かった。ヒオスはまだ食事はとらない方が良い、もう少し内臓を休めてから。」


 そんな話をしている間にホットケーキと紅茶が運ばれてきた。バターをたっぷりのせて、メープルシロップもたっぷりシミシミになるほどに掛ける。大き目の一口サイズに切って、口に運ぶ。


「美味しい!」

 ああ~幸せ、さっきまでの出来事が全部吹き飛んでしまう様な気分。


「食事中に申し訳ないけど」

 イムナが話を切り出した。


「二人は一度、地球に戻った方が良い。家族や関係者への説明は対応していると思うから心配はないけど、あかりとギンちゃんが心配している。二人を安心させてあげるためにも一度もどりなさい。」


「はーい!」


 そんなことなら、全然問題ない。ヒオスはまだ体調悪そうだけど、ちょっと戻るくらいならば問題なさそうだし。でも、どうして明とギンちゃんだけ?


「でも、直ぐに戻って来ることになると思う。ヒオスはもう少しここで治療が必要だし、エシャは事情聴取があると思うから。」


 …事情聴取?いったい私が何をしたって言うんだろう?


「ポータルが一つ駄目になった。」

 イムナは微笑んだままそう言った。


「駄目になっちゃったの?」

 あの後、生臭いチョコレートの雨は止んだのだろうか?


「復旧を試みようにも、空からの落下物が止まらないらしく、一旦、閉鎖することになったらしい。」


「一旦、閉鎖…ってことは駄目になった訳ではないってことよね?」


「…多分、数百年は使えないんじゃないかと言っていた。」


「…はあ…」


「二人には別のポータルが用意されたから、そっちを使って地球に戻ることが出来る。出口の場所は後で説明があると思う。」


 イムナは笑顔でそう言うと、急に真剣な表情になった。


「所でエシャ、最近、誰かから何か貰ったりしなかったかい?例えば、宝石や石の様なもの。」


「…宝石?」

 最近じゃないけど、アンモナイトのネックレスをもらったなあ…そのことじゃないよね?…あ…そう言えば…


「例えば、青い石とか?」


「…そう言われると…貰ったような、貰わないような…」


「貰ったんだね?」


 イムナにそう尋ねられて、仕方なく頷いた。横でヒオスが呆れ顔をしている。


「…だって、綺麗だったから。」


「それは、今、どこにある?」


「確か、緑の箱から出して、いつも持っているポシェットに入れた気がする。」


「そのポシェットはどこ?」


「ジョシュアの家の…脱衣所だと思う。」

 花沢さんとあかりとクリニックから帰って来て、汗を拭いてもらって、パジャマに着替えた時に脱衣所に置いて来たような気がする。


「エシャが向こうに帰る前に、その石は私が回収しておこう。所で、それはどんなポシェット?」


「薄い緑色の生地で茶色と白いクマの柄で、丸い形のポシェット。」


「教えてくれてありがとう。」

 そう言うと、イムナはどこかへ去って行った。


 部屋にはヒオスと私だけ。


「また、知らない人からものを貰ったの?」

 彼がそう尋ねて来た。


「だって、綺麗だったから…それに、ジョシュアは貰っちゃいけないって言わなかった。理由も分からずに貰うなって言っただけだった。それに、私、子どもだもん!」

 そうなのだ、私はまだ子どもなのだ!そこまで分別が付く年じゃない!


「記憶が戻る前の話だもんね。仕方ないか。」


「そうよ。責めないでよ。」

 そう言って、大き目に切ったホットケーキを口に入れた。折角美味しいものを食べているのに、説教されたら不味くなるじゃない。全く!


「ホットケーキが食べ終わったら、その時の状況を教えて。」

 そう言うと、彼は再び横になった。


 ホットケーキのお代わりも食べ終わったけど、ヒオスは眠ってしまった様だ。起こすのは可哀想…


 そう言えば、事情聴取があるって言ってたけど、誰に何を聞かれるのかしら?また、神たちに囲まれて査問とか勘弁してもらいたいわ。まあ、圧迫してくるのはナキとラジエだけだから、他の神は私に興味なんかなくて、どうでも良いって思ってそうだけど。甘い物食べたから、しょっぱい物が食べたくなったなあ。そんなことを考えていたら、ヒオスが目を覚ました。


「…食べ終わった?」

 目をこすりながら彼が尋ねて来た。


「ええ、随分前に終っていたわ。」

 相変わらずよく眠るなあ、隙あらば寝るよね。だから頑丈なのかも。


「じゃあ、その時の状況を教えてよ。」

 あくびをしながらヒオスが尋ねてきたが、やっぱりしょっぱい物が食べたい。


「何か、しょっぱい物が食べたい、ポテトフライとか。」


 頼んでいたポテトフライとグレープジュースが届いた。こんなグレープジュースが飲みたいなんて、食の好みが子どもっぽい。やっぱり体は子どもなんだなと思いながら、ポテトを頬張った。


「食べながらでいいから、教えて。」


 ああ、そうだった、ここでも事情聴取がされるんだったけ。実は神よりもこっちの方が細かい事を聞かれて面倒臭いんだよね。


「確かね…」

 その時の状況を思い出しながら話をした。




 函館に行った時、皆でジンギスカンを食べて、その後、お父さんと来海だけソフトクリームを食べたんだった、お父さんは別の味も食べたいと言って、ソフトクリームを選んでいた。

 その間だったと思う、女の人に声を掛けられたのは。茶髪の背が高いきれいなお姉さん、とその時は思った。今思うと、そこまで美人でもなかった気がする。まあ、きれいって言えばきれいだったと思うけど。年齢は明くらいかな、露出が多くて派手めだったから少し大人っぽく見えたけど、多分二十歳くらい。その子が私に声を掛けて来た。


「君、一人?アイス美味しい?」


 そう尋ねられて、お父さんの方を指さして


「お父さんと一緒。うん、美味しい。」

 と答えた。お父さんは、こちらに背を向けてアイスを選んでいた。


「良いね、お父さんと一緒なんだ。あ、そうだ、これ。」

 そう言って、その子は緑色の木箱を差し出した。


「なあに?」


「君、可愛いからこれあげるよ。きっと似合うと思うんだ。」

 そう言って、木箱を少しだけ開けて中を見せてくれた。綺麗な水色の石が付いたネックレスが見えた。


「いいの?」


「うん、勿論!だって、君、可愛いから。きっと似合うと思うよ。」


 そう言って、その子はニッコリと微笑んだ。きれいなお姉さんに可愛いと言われて、舞い上がった。その時は…今思えば、何て単純だったんだろうと思うけど、子どもだから仕方がない。


「でも…」

 アンモナイトのネックレスの時のことを思い出して、躊躇した。


「大丈夫、これおもちゃだから。」


「おもちゃ?」


「うん、私が子どもの時に使ってたやつ。おもちゃで安物だけど、思い出があるから、貰ってもらえると嬉しいな。」


 おもちゃで安物ならば貰っても問題ないか。それに、くれる理由もはっきりしている。それは私が可愛いから。


「ありがとう!」

 そう言って、緑の木箱を受け取った。


「そのネックレスはおもちゃだけど、お守りにもなるの。だから普段はこの箱に入れておいて、何かお願い事があるときに箱から出すのよ。」


「お守り?」


「そう、願いを叶えてくれるの。でも、いつもはこの箱に入れておく。その方が願いが叶いやすくなるの。」


 ちょっと、何を言ってるか分からなかったが、とりあえず箱に入れて置けってことは分かった。


「わかった。ありがとう。」


「じゃあね~!」

 そう言うと、その子は、手に持っていたサングラスを掛けて、その場を去って行った。


 その後、お父さんがアイスを二つ持って戻って来た。

「迷って二つ買っちゃった。」


 片手にはラベンダーソフト、もう片方にはメロンソフト、どちらも美味しそう。

「一口食べてみる?」


 そう聞かれて、貰った木箱をポシェットに入れて、一口づつ食べた。うーん、どっちも美味しいけど、来海が食べたジャージーソフトが一番美味しいと思った。そして、その後、ずっと箱の事は忘れていた。


 そして、ジョシュアの家で明に手伝ってもらいながら、夏休みの宿題をやっていた時に、ふと、その木箱の事を思い出した。願い事を叶えてくれるって言ってたよな…宿題が早く終わりますようにってお願いしよう。そう考えて、ポシェットに入っている木箱を出して、箱から水色の石が付いたネックレスを出した。その時、花沢さんがお昼ご飯が出来たと声を掛けて来たので、ネックレスを木箱に戻さず、ポシェットに入れてお昼ご飯を食べに行った。



「函館でそんなことがあったんだ?二十歳くらいの茶髪の背の高い女性、見たら分る?」


「見れば分る。」


「何か特徴とか覚えてない?」


「その子の特徴?」

 そう言われても、短い時間だったし、私はもらった木箱の方に気を取られてたし。でも、香水の匂いがした。でも、私、余り香水詳しくないから、それが何の香水かなんて分からない。


「何か香水の匂いがした…外国の洗剤みたいな…」


「他には?」

 ここは掘り下げても無駄だって思ったのだろう。


「うーんと、服装とか、喋り方とかに帰国子女感があった。躊躇ない生足にショートパンツ、そしてキャミソール、さりげないサングラス使い。自分に相当の自信がある女か帰国子女しかしないスタイル。」

 偏見バリバリだけど、そう思ってしまったのだから仕方がない。


「香水と服装かぁ…普段からそう感じの子なのか、もしくは、その時だけ装っていたのかは分からないけど、多分、その子は、来海の近くにまた現れると思う。ネックレスを渡した後、来海がどうなったか気になっていると思うから。」


「確かに、仕掛けて来たってことは、結果を確認するわね。」

 じゃあ、こちらから探しに行かなくても、向こうから現れた時にとっ捕まえて、吐かせればいいってことだ。


「もし、その子が近づいて来ても、来海は気づかない振りをして、僕にこっそり教えて。」


「何か考えでもあるの?」


「問い詰めても、来海にそのネックレスを渡した理由なんてしゃべらないと思う。白を切りとおされるかはぐらかされるだけと思うから…まあ、あの手この手だよね。」


「あの手、この手…」

 あの手、この手の、手始めはきっと…苦笑いしか出てこない…

 





今回のお話はいかがでしたでしょうか?

感想などいただけると励みになります。

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