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違和感①

 

 その日は午後から大雨が降った。


「天気予報は一日中晴れだったのになぁ……」


 はぁ、とため息混じりに窓の外を見上げる。窓の外を覗いたり、授業中少し眠ったりできるのは一番後ろの席の特権だ。

 

 そして目線を教室内の同じ列、一番廊下側の空席を見つめる。


(今日も来てないのか)

 

 俺——白石 宵が最近仲良くなった、烏丸 陣。彼は見た目や言葉遣いは怖いが、とても優しい人だと感じている。

 そんな彼は、学校の授業に出たり出なかったりだ。陣に聞くと、とっくに学校の必要単位は落としてるらしく、卒業する気もないので自由にしていると話していた。

 それじゃあなんで学校に辞めないんだ?っていう疑問もあったが、そこについて指摘すると陣が眉間にシワをよせて嫌がるのでそれ以上は聞かないことにしたのだ。


 そして、宵は最近気づいた。陣は雨の日は学校に来ない、と。

 でも今日は朝から降っていたわけではないし、突然の雨だったし……もしかして、あの場所にならいるかな。

 なんて思っていると、あっという間に先生の話も終わり、下校時間。一緒に帰ろうと誘ってくれた友達に謝りながら、いつもの校舎裏のベンチへと足早に移動する。


 いるかもしれない、という淡い期待を抱いて。


***

「——っあ!」


 思わず声が出た。

 いつものベンチに腰をかけている陣を見つけたからだ。


 俺の声に振り向いた陣は、少し驚いたようだ。まさかこんな雨の中、わざわざ旧校舎の裏にまで来ると思っていなかったのだろう。


 俺はしてやったりと得意気な顔をしながら陣に近づき、傘を閉じて隣へと座る。


 「ははっ、なんだよその間抜け面」


 「うるせぇ」


 「なんだよ、可愛くないなー。せっかくここまで雨の中来てやったのに。てか、このベンチ、雨避けもあって最高だな」


 なんて憎まれ口を叩き合う。そんな関係にまで陣となれたことが嬉しい。


 「それにしても、授業には出なかったくせにここにはいるんだから」


 「……なんとなく、な」


 それ以降、陣は喋らなかった。俺は少し空気を悪くしたかと思い、勢いよくベンチを立った。そして傘を開きながら、


 「そ、そろそろ帰らない?? 暗くなってきたし……へっ!?」


 後ろ向きに一歩踏み出したとき、ぬかるみに足を滑らせた。


 (あ、転ぶ)


瞬時に目を閉じた。手から傘は離れてしまったが、不思議と倒れなかった。

 

陣が、俺の体をしっかりと支えてくれていたのだ。


 「お前、やっぱ阿呆だろ」


 「うっせ。阿呆って言ったやつが阿呆なんだぞ」


 耳を真っ赤にしながら言い返す。


 「……でも、ありがと。助かった」


 「……ん」

 

 落ちた傘を拾い、二人でベンチの方へと移動する。


 「あ! てかごめん、俺のせいで濡れちゃったよね! 今拭くもの持って——ん? あれ、陣、お前なんで濡れてないんだ?」


 「……ほら、やる」


と言い、陣はタオルを渡してきた。俺は、あぁ先に拭いたのかと納得し、そのタオルを受け取って体を拭いた。


 (ん? それにしても陣は、こんな大雨なのに水滴ひとつついてない。どうやって乾かしたんだ……?)


 と疑問に思ったが、たいしたことではないのと、滑ったところを助けてもらった気恥ずかしさが勝って、それ以上口にすることはなかった。



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