侵食
年が明け、1月。3学期が始まった。
寒さは一段と厳しさを増し、それと比例するように俺の身体を日に日に蝕んだ。
ベッドから起き上がることすら辛い日が増え、学校を休みがちになっていた。それでも生きていれるのは、医者はこの空気の美味しい、良い環境のおかけだと言う。
「白石ー! 入るぞー!」
放課後、ドタバタとした足音とともに、竹田と田中が俺の家にプリントを届けに来てくれた。
「お前、真っ青だな……。マジで大丈夫かよ」
田中が心配そうに眉を下げ、ベッドの脇に椅子を寄せて座る。
竹田も手袋を外しながら、静かに俺の顔を見つめていた。
「二人とも、いつもごめんね。プリント、ありがとう」
「謝るなよ! 友達だろ? それよりさ、3学期なんてあっという間なんだから、早く治して学校来いよ。卒業式、絶対みんなで一緒に出たいしな!」
田中の真っ直ぐな言葉が、胸に突き刺さる。
3月の卒業式。みんなが笑顔で未来へ踏み出すその日に、俺はいられない。
(……ごめんね、ふたりとも)
「うん……ありがとう」
俺は必死で喉の奥の痛みを押し殺し、布団を握りしめながら、静かに微笑むことしかできなかった。
***
一方、誰もいない冬の旧校舎裏。
枯れ葉が舞う冷たいベンチで、陣は学ランのポケットに突っ込んだ手をギュッと握りしめ、一人で空を見上げていた。
「……あいつ、今日も休みかよ」
冬休みがあけてから、宵が放課後のベンチにやってくる回数は劇的に減っていた。
たまに来ても、その肌は雪のように白く、少し歩くだけで肩を上下させて息を荒くしている。
(昔から身体が弱ぇとは言ってた……。でも、なんかおかしい)
胸の奥を突き刺すような、嫌な予感と焦燥感。
やっと自分が学校の外に出られるようになったはずなのに、一番会いたい相手がどんどん遠くへ行ってしまいそうな恐怖が、陣の心を静かに侵食していた。
陣はバッグにぶら下がる黒猫のキーホルダーを愛おしそうに撫でた。
「宵……早く来いよ。待ってんだからさ……」
木枯らしが吹き抜ける中庭に、陣の呟きと白い息が虚しく響いていた。




