第49話 不器用な恋
いつも大変お世話になっております。
久しぶりの日本…
久しぶりの実家での生活…
美織は駅まで、アミをベビーカーに乗せて歩いていた。
このベビーカーも昨日乗った車に着いていたチャイルドシートも、全て両親が準備しておいてくれたモノだった…
ただ帰省するだけで、
両親の細やかな対応に感心してしまった…
「私は何もわかってなかったな…
両親が、昔からどれだけ支えてくれていたのか…今回よくわかった…」
「懐かしい道だな…昔、寸くんや愛とよく歩いた道…いつかアミとも歩くのかな?」
ベビーカーを覗き込むと、アミは眠っていた、
慣れない環境で、疲れたんだ…
美織は駅に着くと、せっかくアミが寝てて
自由な時間も珍しいからと、スタバに入ってお茶でもしようかと考えた。
久しぶりに昔座って谷本が藤田と再会した席に座った…、午前中は人もまばらで居心地がいい…
そんな時、
「伊東美織さんですか?」っと、声を掛けられた…
美織がゆっくり見上げると、
綺麗な女性が立っていた…
「失礼ですけど…どちら様でしたっけ?」
その女性はニッコリ笑って
「お子さん可愛いですね!谷本先輩のお子さんですよね!」
美織は一瞬、
昔、谷本がスケッチブックに描いていた少女が思い浮かんで…
「あ〜!あの時の…」
「ハイ、思い出してもらえましたか?
江藤 しのぶです。旧姓ですが…」
「思い出した…しのぶちゃん」
「美織さんは今…ミラノに住んでるんですよね?」
「えっ?…」
「あっ!すみません…ただの谷本先輩ファンでして…推しってやつなんで…怖がらないでください。」
「怖がるなんて…」
「いいんです、だいたいわかります…私、昔からスタートダッシュの勢いだけで余計な事言ってしまうんですよね〜、後は失速するんですけど…」
美織はクスッと笑って
「しのぶちゃん、昔…体育館でお話ししましたよね?寸くんが足怪我した時…」
「そうそう、思い出してもらえて嬉しいです。」
「ひょっとして、先輩と待ち合わせですか?」
美織は首を横に振って、
「寸くんはまだ、ミラノにいるの…
来月こちらに来る予定よ。」
「そうなんですね…」
しのぶは少し柔らかい表情になり…
「谷本先輩に似てますね…
お名前なんて言うんですか?」
「アミって言います。」
「へー、可愛い名前…」
しのぶは少し黙って…アミの顔を眺めていた。
「わかってると思いますけど、私高校の時、谷本先輩が好きで何度かアプローチしたんです。だからここで、谷本先輩と偶然会った時…運命かもって思ったんです。」
「谷本先輩が私を見て、私の絵を描いてくれて嬉しくて…勝手に舞い上がって…
先輩に会った日から、時間を見つけてはStarbucksに来て珈琲を飲んでました…」
「その後、美織さんの存在を知って…尻込みしてしまって…」
「実は何度か谷本先輩や、美織さんを見かけたんですけど…声を掛けられず。下を向いて帰りました…それから、ただ時間だけが過ぎていました。」
「今日も素通りするつもりでした…
でも…その子の顔を見たくなってしまって…」
「ありがとう、しのぶちゃん…私は寸くんの事が大好きだったのに、当時の私は中々素直に行動出来なかったから…」
「それは私も、同じです…好きって気持ちに溺れてしまって…
結局自分が可愛くて、傷つきたくないから何も出来なかったな…」
「しのぶちゃんは、今は幸せ?」
「ハイもちろんです…地味なんですけどね…
私には丁度良いです。」
「良かった…声かけてくれてありがとう、
高校時代が少し蘇ったわ…」
「美織さん…いつかミラノに行く事が…」
しのぶは言葉を止めた…
「谷本先輩に応援してると、お伝えください。」
そう言って、席を立ち上がった。
「しのぶちゃん、ミラノに来たら連絡してね。」
しのぶは少し表情が緩んで、
何も言わず、頷いて帰って行った。
美織はどこか、昔の不器用な自分と話していたような感覚が蘇った…
いろいろ自分で壁を作って遠慮して…
後悔しないように、正当化してたな…私…
でも、江藤しのぶもまた、自分の人生を生きながら、ほんの少しの後悔がわだかまりになり、
この店に足を運んでしまうんだろう…
…う〜ん…と、伸びをしたアミが目を覚ました。
「アミ!絵本探しに行くよ!」
次回も読んでいただけると嬉しいです




