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記喪転我意 〜美織Side〜  break my memory  作者: Spumante Rock


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第46話  神の手

いつも読んでいただきありがとうございます。


愛が谷本に話し掛ける

「寸くん…蒼太の絵を見てほしいんだけど…」


「もちろん!見たいよ…どんな絵を描くの?」


蒼太は慌てて

カバンからスケッチブックを取り出して、

谷本に渡した。


「こんな日が来るなんて…夢みたいです。」


「やんだよ…大袈裟だな〜」

笑いながら、スケッチブックを開いた。


谷本は無言で、スケッチブックをめくる…


笑顔は消えて、真剣な表情でスケッチブックをめくる…


「蒼太くん…池田先生に教わった?」


「ハイ!弟子にしてもらいました…」


「凄いな…蒼太くんは齋藤絵画教室の生徒さんなの?」


「いや、教室は年齢的に入門させてもらえなかったので…弟子ってカタチで…」


「え?…どのくらい、習ってるの?」


「もうすぐ、1年になります。」


谷本が驚き

「1年…って…」


「凄いでしょ…」愛が横から口を挟んだ。


「びっくりしたよ…籠原さんの絵を見たときも驚いたけど、それ以上に驚いた…」


「そこに池田先生の絵あるでしょ…抱っこしてるのは、あかりさんの赤ちゃんなんだけど…その絵見た事あるでしょ。」


「あぁ、知ってるよ籠原さんが描いた最後の絵でしょ…、池田先生がその絵を模写させるなんて…蒼太くんに相当期待してるんだね…」


「それね…蒼太はあの絵…見た事無かったの…」


「え〜!嘘…そんな事ある?…」


「だから、池田先生

その絵を見て、号泣してしまって…結構大変だったの…」


「それは…奇跡に近い状況だね…

池田先生には、思い入れがある絵だから…」


蒼太が

「その絵を描いた僕が凄いんじゃ無くて…

籠原さんが、天才なんだと思います…

僕は見たそのままに描いただけなんで…」


谷本は言葉を失った。

「蒼太くん…ありがとうね…

蒼太くんが思っている以上に、池田先生の救いになったと思うよ…、ホント感謝するよ。」


蒼太は嬉しそうに笑っていた。

それから、昔…谷本の絵を模写ばかりしていた事や、ここ1年で人物クロッキーばかり描いてる事を話した。


「だいたい蒼太くんの、絵の謎はわかったよ…」


蒼太が突然

「谷本さん…バレーボールで気になる事があって…素人考えなのは分かってるんですが、聞いてもらってもいいですか?」


「何?なんでも言ってよ…」


「今、対谷本シフトって言われているのは、2枚ブロックでクロスを塞ぎ、ストレートに打たせて拾うか、ラインアウトを狙うか…」


「蒼太くんよく知ってるね…」


「もう何年も、同じ…それでも谷本さんは40%以上の決定力があります。」


「チームも高い決定力に、特に対策をしてないのですが、一つ崩せそうな方法が…」


愛は二人を見て嬉しそうだった…


〜谷本の退団試合当日…


愛と蒼太は、

国立代々木競技場 第二体育館

の、応援席にいた。


谷本退団、セリエAに移籍という公式発表はすでに昨日発表された事もあり、

満員御礼…谷本ファンで埋め尽くされていた…


「愛ちゃん!僕、はじめてだよ…プロの試合見るの…なんかワクワクするね…」

選手入場から、大音量の音量がとても高揚感が上がる演出…まして知り合いが出るとなるとなおさらだ…


蒼太に関しては、昔からの憧れてた寸くんのプレーだから、テンションが上がっても仕方ない…


隣りの席には、

美織と由依も見に来ていた…


蒼太は由依が居ることもあり、慣れない東京で、もうしばらくは正常なテンションは期待出来なさそうだった。


「愛ちゃん…やばい…もう涙が止まらないんですけど…」と、蒼太は崩壊していた…

愛は黙って、応援タオルを蒼太の頭から被せて、試合に集中した。


試合が始まり、1本目のトスが谷本に上がった。

「ん?…寸くんの位置変じゃない?」


愛が言うと、蒼太が、

「あれが、対谷本シフト対策だよ…」


谷本のポジションはレフト

通常はコートの外から助走してスパイクを撃つ…でも、今はセンターの選手の近くから助走に入った…


そのままジャンプと同時に身体を振り向かせ、

クロスに撃ち抜いた。


実況アナウンスが湧き上がる!

〝クロス!谷本がクロスに決めたー!“


これが、どれだけ珍しい事か…


対谷本シフトでは、きっちり2枚のブロックがクロスを塞ぐのだが、


谷本と同じ方向から助走に入る為

ブロックも釣られてネットの端側流れる。


あとは滞空時間の長い谷本が有利に決められると言う事らしい。


「蒼太…あんたが考えたの?」


蒼太は嬉しそうに

「考えるより、めちゃくちゃ難しいんだよ、あのスパイク…言って出来てしまう谷本さんが神がかってるよ…」


この戦略は、谷本シフトを完全に崩した…


ブロックのシフトは一度バランスが崩れると、簡単には修正できない…


クロスを抜かれると、クロスを意識してしまい、ストレートを抜かれてしまう、

また、谷本の助走スピードに釣られてどうしてもブロックが流れてしまった。


谷本は面白いように、スパイクを決めた…


スパイク決定率は驚異の80%を超えた…


第二セットは、

谷本を温存…移籍を見越した、

新体制の確認と、谷本攻略を防ぐ為、

日本最後の試合で、数字で結果を残す為のチームの対応だった…


実際に谷本はこの試合、まったくブロックに捕まらず、協力なスパイクを決め続けた。


「蒼太!でかした。あんたは凄いよ…」

愛が褒めると、蒼太はすでに涙腺が崩壊していて、頷くことしか出来なかった。


今日の試合は、谷本にとって最高の退団試合になったのは言うまでもなかった…


試合後のインタビュー

谷本は、多くのファンに見送られて、

Vリーグの舞台を去る事になった…


「今まで、応援していたきありがとうございました。オリンピック選考から外れた時…多くの方々に、多大なるご支援をいただき…とても励みになりました。

今度は私から皆さんに、お返しできるよう、世界で戦ってきます。」


「数年後に、またチャンスをいただけるなら、みなさんと一緒に戦えるチャンスをいただける事を目指して、努力してまいります。」


客席から、沢山の励ましが飛び交う中…


谷本は手を振って、チームから渡された花束を掲げて、声援に答えながら、控え室に下がっていった…


会場の声援は、止む事なく…しばらく続いていた。

次回も読んでいただけると嬉しいです。

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