第38話 大好きな人
いつも読んでいただきありがとうございます。
「結局のところ…谷本くんは、記憶が戻ったって事なの?」
「うん、戻ったんだと思うよ…
小学校の時の話しをしても、
わかるみたいだから…」
由依と美織は、
部屋のベッドの上で話していた…
「今日はホントにありがとうね、
由依が誘ってくれていろいろ吹っ切れた!
私は今、幸せなんだって思うよ…」
「それは大雑把すぎるけど…
高校の時の美織より、凄く強くなった感じするよ…
ちょっと驚いた…」
「由依に言われると、とっても嬉しい!」
「今日、久しぶりに谷本くんとも、
話してみたけれど…変わらないね、」
「そうなの?…」
「成長してないって事じゃないからね、
変わらず、美織の事が好きなんだな〜って感じが昔と同じ。」
「なんでそう思ったの…?」
「そりぁわかるよ…美織が楽しそうにしてるのを、
嬉しそうに見てたから…」
「高校の時…私は素直になれなかった…
いろいろ気にして、好きな人すら…
手放してしまって、後悔して…」
「それがね…」
「…私が事故で意識がなかった時…
なんだか、寸くんの事ばかり考えてた…
そしたら、目を覚ましたら実物が目の前にいたの。」
「嬉しかった…」
「なんか美織らしいよ…
不器用だけど、一生懸命で…」
由依が少し言葉を止めた…。
「どうしたの?…由依…」
「なんかいいアイデアが浮かんじゃったかも…」
由依が嬉しそうに笑った。
「何?なに…」
美織がワクワクして聞くと、
「美織さ〜、私の曲の作詞して見ない?」
〜 愛が通う芸大
大きなスケッチブックを持って、
講義に向かう愛の姿があった。
大学生活にも慣れて、
少しマンネリ化を感じ始めた頃…
いつもの教室に入ると、
1人の男子生徒の手帳が目に入った。
手帳に1枚の絵葉書…
それは数年前に見た、
谷本の描いた『静寂』の絵葉書だった…
愛はその男子生徒に迷いなく、
声を掛けていた。
「その絵!私も好き!」
愛が、そう言うと、
そう男子生徒は、一瞬ビックリして、
愛の顔を見た。
「この絵は、僕が絵を描きはじめたキッカケなんだ…」
そう言って、絵葉書を愛に差し出した。
「懐かしい…」そう言って、
すぐに絵葉書を返すと、
「私、伊東 愛って言います。」
「あっ、僕は福原 蒼太」
愛は
「蒼太くん…あとで一緒にランチしない?
その絵について、少し話しが聞きたいから」
「えっ…別にいいけど…僕は弁当なんだ」
「いいよ、じゃあテラスで食べようか?
講義が終わったら、一緒に行こう!」
それから、講義が1時間ほどあり、
二人はテラスに向かった。
「伊東さんは、いつもお弁当なの?…」
「そうだね、だいたいお弁当だね、」
テラス席に座って、弁当を広げた。
「蒼太くんはお弁当自分で作るの?」
「いや…お母さんがね…作ってくれるんだ、
そう言うと、マザコンとか思うよね?…」
「全然…そう言われると方が、
そう感じちゃうから言わない方がいいよ。」
「そうか…ごめん」
「いやいや、謝るところじゃないから、
大丈夫だよ。」
「私なんか、お姉ちゃんが作ってくれるの…
シスコンじゃないけどね…」
って、微笑んだ。
「で、さっきの絵葉書なんだけど…
中学1年のゴールデンウィークに
美術館で見た絵でしょ?」
「そう、谷本 寸さんって人が描いた絵なんだ…
僕は小学校でバレーボールをやってて、
最後の大会で足の靭帯を切ってしまって…
バレーボールを辞めたんだ…でも春高バレー見たら、
谷本さんがカッコよくて…」
「また、バレーボールやりたくなってしまって…」
愛はいろいろビックリしたが、
言いたい事を我慢した。
「で?…」
「春高見てすぐに、走ってみたんだ…
意外に走れてしまって、
バレーボールもできるんじゃないかと、
少しずつトレーニングを始めたんだ…でね、
月刊バレーボールって雑誌を読んでたら…
谷本さんのインタビュー記事が掲載されてて…」
愛は福原の話しに夢中になった。
「それで?…」
福原は楽しそうに話しを続けた。
「谷本さんのインタビューに、
絵を描くのが好きって描いてあって、
美術館に良く行くって書いてあったから…
中学になってからよく週末に美術館に行ってたんだ…」
愛は少し笑みを浮かべて
「で…会えたの?」
福原は首を横に振って
「会えては無いんだけど…
見つけたんだ…この絵を…
作者の名前が谷本 寸って書いてあって…
もう…なんだか口から心臓が出そうなくらい、
ドキドキしてしまって…」
愛は、込み上げる笑いを抑えて…
うんうんと、頷いた。
「一応、美術館の展示ガイドの人に聞いたら、
作者は戸陽高校の学生さんだって聞いて、
もう間違い無いって、売店でこの絵葉書を買ったんだよ…」
「この絵は凄いんだよ…暗いのに明るいんだ…
めちゃくちゃ、何回も見に行ったよ…」
「バレーボールで憧れたはずなのに…
絵に圧倒されてしまって…」
「それから、絵を習って描くようになったんだ…」
愛は出来るだけ、平静を装い…
「バレーボールは今もやってるの?」
「今はやってないよ、絵を描く事に全振りした。」
と、にっこり笑う福原を見て愛は、
一瞬…谷本が重なって見えた…
次回も読んでいただけると嬉しいです。




