第36話 思い出の詩
いつも読んでいただきありがとうございます。
「凄い人ね…私、こーゆーフェスってはじめてだから、圧倒されるわ〜」
谷本と美織が会場前の物販ブースに向かっていた。
「私…由依の応援タオル買いたいの…
Tシャツも欲しいし…あとキーホルダーも、」
「僕もはじめてくるんだけど、
ちゃんと参加アーティスト別の販売テントになっててわかりやすいね…」
「あった!由依ちゃんのブース…」
「やっぱり、人気あるね…めちゃくちゃ並んでる…並ぶ?」
「当たり前よ。これ目的で来たんだから…」
「なんか…昔フリーマーケットの会場で歌ってたの見に行ったけど、
あの時も由依ちゃんのファンの人結構いたよね…」
「寸くん松葉杖で、最前列で見れたよね。」
「そうだったね…」
どのくらい待っただろう、
タオルとTシャツは買えたけど、
キーホルダーは売り切れで買えなかった。
「寸くんと同じTシャツと、タオルで、
はじめてペアルックだね。」
谷本は少し恥ずかしそうに、笑って
「由依ちゃんのファンが、多いから…
みんなお揃いだね…」
それから、会場に入って、
いろんなアーティストのファンを見ながら
会場内を歩いた。
会場内はお祭りのように活気があり、
ファンの多くは、お目当てのアーティストの話題を各々で楽しんでいた…
一瞬…美織の動きが止まった。
「どうしたの?…美織…」
「やだ…どうしよう…」
美織の表情が固くなった…
美織の視線の先に、
喜田公司が歩いてくる…
喜田もこちらに気が着いて、
谷本に声を掛けてきた。
「谷本、久しぶりだな…
やっぱりお前ら上手く行ったんだな…良かったよ。」
谷本は美織の様子を見ると、
意外に普通だった。
隣りの美織が、
「喜田くんも上手く行った見たいね…」
と、笑って見せた。
喜田の後ろに隠れるように立っていた、
森田千恵
昔の尖った雰囲気は無く、
申し訳なさそうに立っていた。
「谷本…伊東…ホントに悪かったな…」
喜田は頭を下げた。
後ろの森田も、頭を下げた。
「やめてよ、喜田くん、森田さん
私は許すなんて言えないけど…2人が今
いい人だってわかるから、今日は楽しんで!」
「え?…」
喜田と森田が、少しビックリした表情で美織を見た。
美織はタオルを持って、
「由依ちゃん好きなんでしょ!
応援しましょ!」と、微笑んだ…
喜田が
「あぁ、俺達…由依の大ファンでさ…」
美織が嬉しそうに
「森田さんは、高校の時、
私と由依に絡んできたけどね。」と、笑って見せた。
森田の顔が、急に真っ赤になって…
「えっ…嘘!あれ、由依さんだったの?…」
美織は笑顔で頷いた。
「これからも由依の事を宜しくね…」
喜田は森田を見て
「絡むってなんだよ…」と、
森田に聞いていた。
森田は、嬉しいような恥ずかしいような…
表情で、
「美織ちゃん…ごめんなさい…
私、馬鹿だった…」
谷本は美織の手を取って、
「行こうか?」
そう言って、喜田と森田と別れた。
その後は、ライブを楽しんだ。
なんだか、美織は心から楽しめた。
あんなに嫌いだって人に会ってみたら、
まるで別人のようになってて、
同じタオルを持って、由依を応援してる…
「ねえ、寸くん…
人って変われるんだね…。」
「え?なんか美織嬉しそうだね…」
「私…少し強くなったかも…」
「そうだね…強くなったと思うよ…。」
谷本は美織に微笑んだ?
由依の演奏中、2人は一緒に歌ったり、
手を叩いて盛り上がった。
そして、やっぱり最後は泣いた。
演奏が終わり、
買ったタオルは、汗と涙で濡れていた…
しばらくすると、
美織の携帯に、LINEが入って来た。
【美織!見た?私の演奏?
今から楽屋に来てよ、A5ゲートに来れる?
マネージャーに迎えに行ってもらうから、】
[了解!寸くんと行きます]
また次回も読んでいただけると嬉しいです。




