第30話 村田麻里
いつも読んでいただきありがとうございます。
池田先生と向き合って座っていた谷本と美織。
「谷本くん…本当に記憶が戻ったの?」
谷本は頷いて
「はい…いろいろ記憶が戻ったと思います。」
「それで、元彌と何を話したの?」
「少し話し辛い事も聞きました。
籠原さんは、先生の事が好きだった事は僕でも理解できました…」
「その前に会った時…何故籠原さんが先生を叩いたのか…
あれは、僕への嫉妬なんかじゃなかったです。…」
美織が池田に聞いた。
「先生は籠原さんからDVを受けて、
逃げて来たって言ってましたよね?…」
「谷本くん…私は
元彌から聞いた話しを聞きたいわ…」
「わかりました…話します。」
「僕は籠原さんが死んでいた事実を知ったのがつい最近で…
今から話す事も影響しているかも知れないのを承知で話します。
当時、籠原さんは先生をずっと探していたそうです、
DVシェルターに入っていたことも知っていました…ただ、僕の聞いた話しだと…」
「DVを受けていたのは、お父さんですよね?…
美織には両親は早くに亡くなったと説明していたようですが…実際は違った。」
「DVから逃げる為、籠原さんのアパートで同棲を始めた…
しばらくは何も問題はなかった。」
「だった…問題が発生した…
池田先生が妊娠したんです…籠原さんが
言ってました。嬉しくて仕方なかった…と。」
「でも、妊娠が発覚してすぐに
池田先生は姿を消してしまった…」
「DVシェルターの仕組みを使って、
名前も変えた先生は教員試験を受けてこの街に来た。」
「先生の本当の名前は、村田麻里…」
「籠原さんが、どうやってこの街にたどり着いたか、
わかりますか?…」
「美術館です、先生は毎週末美術館に行く事を把握してました。
だから毎週末地方の美術館から全国の美術館を回っていたそうです…
大学は休学したそうです。」
「先生を見つけるまで、
約3年半の歳月が掛かったと言ってました。」
「先生を見つけて、いきなり手が出てしまったのは、
先生を見つけてから、生活を尾行して生活リズムを把握する中で、
子供の気配がなかったから…」
「先生が妊娠を諦めて、
下ろしたんだと感じたからだったみたいです。」
「そして、籠原さんは
先生のお父さんを殺害した…」
谷本は話すのをやめて…
「ここからは先生の口から話した方がいいと思います…」
そう言って、池田を見た…
「ありがとう…谷本くん、
そうね…私は昔…美織さんに嘘をついてしまった…
谷本くんの記憶が戻る事を想定してなかった…美織さん、ごめんなさい」
「元彌を弱い人間で片付けてしまった…
でも、本当に弱いのは私…」
「谷本くんの言う通りだと思うわ…」
「実はね、谷本くんと一緒に帰った朝…
元彌から手紙を受け取った…
朝、ポストに入っていた手紙に書いてあった…」
「内容はだいたいこんな感じだった」
【 麻里…もう逃げる必要は無い…
君を苦しめた、お父さんはもういません…
君は自由になりました。
はじめて誰かの為に、努力できると思えた…
麻里と幸せになりたかった…
でも、もうそれも出来なくなってしまった。
最後に会えて良かった…
最後に絵を描いたから、届けるよ。 】
「それで、学校から帰る前に通報したの…
その数日前に父が殺害されたと、
警察から連絡が入っていた事もあり、
元彌を捜していたみたいで、
手紙の内容を話したら、すぐに動いてくれた」
「警察から、念の為 1人での行動は控えるように言われて…
谷本くんに甘えてしまったの…」
「結局、元彌が私のマンションに侵入した事を確認し、
警察が部屋の中に入った時には元彌は自殺をは図り、
既に息を引き取った後だったそうよ。… 」
「私と谷本くんが、見たのはそんな状況だった…」
「籠原さん…が、最後に描いた絵はどんな絵だったんですか…」
池田は少し微笑んで…
「見る?…」と言った。
また次回も読んでいただけると嬉しいです。




