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記喪転我意 〜美織Side〜  break my memory  作者: Spumante Rock


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31/31

第31話  残像の追憶(前編)

いつも読んでいただきありがとうございます。

池田先生が部屋を出て行って、

戻って来ると、1枚の額に入った絵を持って来た…

B4サイズ程の大きさで、さほど大きくもないものだった。


谷本と美織はその絵を見て、

少し驚いた。

「先生…これは?…籠原さんが描いたんですか?」


先生によく似た女性が、赤ちゃんを抱いた絵、


聖母マリアのような構図だが、色彩がそれよりも美しい…

そして、谷本と美織が感じた違和感は…


池田は微笑んで

「そうよ…驚いたでしょ。」


谷本と美織は顔を見合わせてから、

「僕の絵に似てます…よね…」


「籠原元彌は、紛れもなく天才だった…

私が見て来た、どんな絵画より…感情的で優雅だった…」


「何度も真似してみたけれど…

元彌のようには描けなかった…それがね…」


「私がはじめて教師になって、教えた生徒に…

天才がいたの…まだまだ荒削りで基礎もまだまだ…

私はチャンスだと思った…」


美織が小さな声で、

「それが谷本くんだった…」


池田は頷いた。

「そう…谷本くん、記憶が戻ったなら、

私がどんな教え方をしたか…

覚えてるわよね…」


谷本は呟いた…

「模写ですよね…筆使いやペンタッチ…

細かく見て真似してたのを覚えてます。

何度もその筆使いを、身体に叩き込みましたよね…」


「そう…谷本くんが中学時代に模写していた、

絵画やデッサンは全て籠原元彌が描いた物…」


谷本と美織は少し驚いた。

「僕に籠原を写したんですね…」


池田は頭を下げて…

「谷本くん…ごめんなさい…

私の私情を、谷本くんに押し付けてしまって…」


谷本は少し寂しそうに、

「僕の絵は、僕の作品ではなかったって事ですか?…

籠原さんが僕の中で…」


「それは違うと思う!」

美織が口を開いた。


「私…寸くんの絵を小学校の時から、

ずっと見てきて、昔も今も寸くんの絵

は素敵だと思って見ています。

籠原さんの残像は今…

寸くんの個性になってると思います。」


美織は続けて…

「でも…さっきの籠原さんの絵を見た時…

一瞬、寸くんが描いた絵かと思ったのも事実です…でも、

それも含めて寸くんの絵が好き。」


池田は谷本に、

籠原の絵を渡した…

「この絵を描いた籠原元彌という人間が、

谷本くんに乗り移ってほしい…

そう考えていた…

でも、それは難しかった…」


「確かに良く似ている…」


「でも…私は理解した」


少しの静けさが3人を包んだ…


池田は続けた

「谷本くんが高校2年の最後に描いた、

『静寂』あの絵を美術館で見た時…」


「私は大きな満足と、後悔が同時に押し寄せた。」


「それはどんな…?」谷本が聞くと…


池田は少し寂しそうな顔をして、

「谷本くんの作品を元彌は描けない…

そう感じたの…」


「あの絵を見た時…暖かい光を感じた…

なのに、あの教室の静けさと寂しさ…」


池田は美織を見て

「元彌には無く…谷本くんにあるもの…

それは美織さんの存在が大きいの、

あの教室の絵には、希望がある…」


「元彌は私のことを思って探し…

見つけたけど、内心は諦めてたんだと思う。」


「谷本くんは、あの絵を描いた時、

美織さんがいない寂しさと、また会えるかもしれないと信じる期待が、

暖かさを表現できた」


「元彌には、私の愛が足らなかったの…」


美織は少し恥ずかしそうに

「あの時は、私も思いに答えられなくて…」


池田は谷本の顔を見て、

「描いてる本人は、そうは思ってなかったみたいね…」


谷本は少し慌てて

「確かにあの絵を描いてる時、

美織に見せたい気持ちと、あの5月5日に会えると信じていたからね…」


美織が、

「ごめん…」


池田はクスリと笑って

「2人にもいろいろあるでしょうけど、

要するに、私より美織さんの方が優しいって事…

それが、元彌と谷本くんの差になってるって事」


谷本は優しく声を掛けた

「先生のくれた籠原さんの残像は、

僕にとって…

かけがえの無い宝物だと思ってます。」


池田は震えていた…

「そう言ってもらえて嬉しいわ…

でも、本人の意図しない感情が入った指導だった事は本来なら許される事ではないと思います。だから、谷本君には元彌を超える天才になってほしい…

そう願います。」


谷本は笑って

「池田先生…プレッシャーですよ。」


そう言って、3人は笑っていた。


池田が少し落ちついてきた頃

「さっきの話し…いくつか訂正したい部分があるんだけど…

もう少し付き合ってくれる?…」


二人は

「もちろんです。」

と、言った…

また次回も読んでいただけると嬉しいです。

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