第20話 籠原元彌
いつも読んでいただきありがとうございます。
「その日、谷本くんにお礼を兼ねて、
レストランで食事に誘ったの、」
「もちろん生徒と先生の立場でね、
谷本くんは、籠原元彌について聞いてきた。」
「私からすると、籠原君が…
…元彌が、精神的に不安定になったのは、就活の影響が大きかった、」
「一流の芸大で、元彌は様々なコンクールで賞を受賞してきた天才だった。」
「それが、就活では役に立たない…
毎回、協調性や意欲みたいに、長いモノに巻かれる人材ばかり求められた…」
「その2つが、元彌には微塵もなかった…
人と話すのが苦手で、努力なんて死んでもしたくない性格だ…
なのに勉強も芸術も頭一つ抜けてるの…」
「私からすれば、羨ましい限り…なんだけど、
元彌からすれば、普通が1番難しいみたい…」
「はじめて、元彌から暴力行為を受けたのは、
就活に行き詰まった頃…、
私が一緒に教員試験を受けてみないかと言った時…」
「張り詰めていた糸がプツンと切れた…」
「それが元彌の感情を壊してしまった…」
「なんで…?って思うでしょ…
元々は虫も殺せない、平和主義者で…
優しい性格、いつもニコニコしてて…」
「私がいけなかった…のかな…?
今でもよくわからないの…」
「しばらくは、なんとかしようと話し合うつもりで、
何回か元彌に歩み寄ってみたけれど…」
「結局、暴力を振るわれる事が怖くなってしまって…」
「そんな話しを、谷本くんに話した…まだ、15歳の子供に…」
池田は話を止め…俯いた…
少しの間、部屋に沈黙が続いた…
その沈黙を破るように池田が話を続けた。
「ごめん…違う…
私…その時、谷本くんに頼ってたんだと思う…」
「体裁…ってやつを、気にしてた…」
ひろえがポツリと呟くように言った
「谷本くんを好きだったって事ですか?…」
池田は美織を見て、
「ごめんなさい、好きだったと思う…でも、
恋愛感情ではなかった…」
「その日、谷本くんに
『先生が好きです!』って言われて、嬉しかった…
でも、中学生で自分の教え子と言う体裁がチラついて…」
「何よりも…谷本くんの告白は、
恋愛感情からでは無く…
同情や吊り橋効果みたいなモノで、
ホントに私を好きになったわけじゃ無いって…今なら良くわかる。」
「だって、ホラ…記憶を無くしてから会った時、
好意は生まれなかった…」
と、ニッコリ笑ってみせた。
美織が池田を見て、
「そう時、池田先生は谷本くんの告白に
なんて言ったんですか?」
池田はニコっとまた笑い
「人に奢ってもらっておいて、告白なんかしてるんじゃない!
奢れるようになってから出直しなさい!!…ってね」
池田は美織の顔を見て
「だから今だったらOKするかな。」
と、微笑んだ。
美織は立ち上がって
「先生ありがとうございます。
話し辛い事も全て話していただいて…」
「私も池田先生、大好きです。」
「あら、嬉しいわ…美織さんにそう言ってもらえて…」
ひろえも「私も池田先生大好き!」
そう言って笑った。
「私が一番、池田先生の事…大好きだから…」
と、あかりが呟くと、
池田は
「1日で3人に告白されるのはじめてだから嬉しいわ…」と、
笑っていたが…その瞳からは涙が流れていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
真実を知った時…ホントに嬉しいだろうか…思い出は
良いモノばかりとは限りません、
だから新しい未来を少しでも良いモノにできる様に
生きているんですかね…私はいつも後悔の連続です。




